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http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080627k0000e040045000c.html
国の公共工事に生活の場を奪われた漁民の思いは、ようやく司法に届いた。諫早湾干拓事業(諫干)と漁業被害との因果関係を認め、潮受け堤防の開門を命じた27日の佐賀地裁判決。「判決を契機に、すみやかに中長期の開門調査が実施され、適切な施策が行われることを願う」。法廷で裁判長の言葉を聞いた漁業者たちは、一様に感極まった表情をみせた。【姜弘修、遠藤雅彦、柳瀬成一郎】
佐賀地裁で最も大きい1号法廷。午前10時からの判決言い渡しを前に、廷内は満席となった。神山隆一裁判長が主文を言い渡すと「やった」と声が漏れ、約30分間にわたる読み上げが終わると大きな拍手が起きた。
地裁前では、法廷に入りきれない支援者や原告約100人が待ち受けた。午前10時過ぎ、法廷から走り出た支援者が「開門認める」と大書した紙を広げると歓声が上がり、感激のあまり泣き出す女性もいた。
この日、原告の一人として判決を傍聴した佐賀市のノリ養殖業者、川崎賢朗さん(47)は高校卒業後の79年、祖父も父親も営んだノリ養殖を始めた。「国がやることだ。間違いはないだろう」。諫干の工事が始まっても、そう感じる程度だったが、00年に発生した大規模な赤潮でノリが空前の不作となり、諫干の影響を疑うようになった。
疑念が確信に変わったのは01年の元旦だった。潮受け堤防前に、漁民たちが約200隻の漁船を連ねた海上抗議行動に参加した際、堤防前の海面を埋め尽くした赤潮に驚いた。「ここが発生源に違いない」。その年の夏、佐賀県内の漁民約800人で「佐賀有明の会」を結成、会長として有明海の再生運動に取り組むようになった。
潮受け堤防の閉め切り後、不作となったのはノリ養殖だけではない。魚類の漁獲量が減り、養殖のアサリも夏場の赤潮で大量死した。佐賀、福岡両県内のタイラギ漁は99年度以降、休漁と不漁を繰り返している。
国は因果関係を認めぬまま、有明海の再生事業に取り組むようになった。だが日々、有明海を見てきた川崎さんは「今も海況は悪化している」と感じている。かつて「恵みの海」と言われた有明海は00年のような不作にいつ陥るか分からない「不安の海」に変わった。
川崎さんらが求めてきた潮受け堤防の開門調査は、農水省が設置した第三者委員会でも提言されたことがある。04年8月には佐賀地裁が工事の差し止めを認めたが、その後福岡高裁で覆され、国の公害等調整委員会でも訴えは退けられた。
期待がことごとく裏切られ、徐々に手詰まり感が強まる中で、迎えたこの日の判決。川崎さんは「漁民は開門までの3年間も待てない。判決は、有明海再生への第一歩だ」と、表情を引き締めた。
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毎日新聞 2008年6月27日 11時44分(最終更新 6月27日 12時20分)
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