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2008年 05月 06日
憲法九条を護持して戦略的安全保障の実現を
アルルの男・ヒロシです。
憲法記念日には、いろいろなイベントがあったと思うが、目を引いたのは「幕張メッセ」で行われたもの。記事を「東京新聞」から引用する。
(貼り付け開始)
『9条で命守られた』 9条世界会議 高遠さん語る 千葉で開幕
2008年5月5日 東京新聞朝刊
世界各地で紛争が絶えない中、戦争放棄をうたった日本国憲法九条の意義を再確認する「9条世界会議」が四日、千葉市の幕張メッセで始まり、海外の参加者も含め約一万五千人(主催者発表)が会場を埋めた。
イラク支援ボランティアの高遠菜穂子さんは、武装勢力に拘束された経験を基に発言。「(自衛隊のイラク派遣で)日本が九条を突破したことで人質にされた。殺されなかったのは、私たちがイラクで丸腰で対話を続けてきたと分かったから。九条(の精神)を実践し、九条で命を守られた」と振り返った。
作家の雨宮処凛さんは「貧困で生存権を脅かされた人が『希望は戦争』と言う状況は、貧困層が戦争に駆り出される米国と近いものがある。軍事費を削って人が生きるために使うべきだ」と話した。
「人類の敵は貧困、病気、無学、人権侵害、テロ、温暖化。戦争ではなくせない。むしろひどくしている」と訴えたのは、米国の平和運動家コーラ・ワイスさん。元日弁連会長の土屋公献さんは「立派な軍隊を持ちつつ九条を世界に広めようとはおこがましいが、矛盾を打破して堂々と呼び掛けるべきだ」。
連合国軍総司令部(GHQ)で憲法草案を執筆した米国のベアテ・シロタ・ゴードンさんは「押し付けというが、自分より良いものは押し付けない。日本の憲法は米国より素晴らしい」と日本語で演説し、拍手を浴びた。
会議は作家井上ひさしさん、国際政治学者の武者小路公秀さん、歌手の加藤登紀子さんら各界の著名人が呼び掛け人となって催した。五日は分科会、六日は総会を開く。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008050502008939.html
(貼り付け終わり)
ここで重要なのは、「憲法九条」というものを擁護する立場には上のようなリベラルの立場からによるものもある一方で、戦後首相の吉田茂の目指した、「経済重視の国家の実現のために、憲法九条を戦略的に利用する」という保守派の立場からのものもある。私は後者の立場から、憲法改正には断固反対している。
なぜか。これからアメリカと中国は、太平洋の覇権争いを行うからだ。その中で、日本は「どっちにも付かない」という態度を明確にしなければならない。どっちからも嫌われない(あるいは、つけ込まれないように)ようにしなければならないのである。
第二次世界大戦の例が示すとおり、慢心した「近代国家・日本」は、アメリカを甘く見て、山本五十六が「早期講和」という甘い誘い(がアメリカからあったかは文献証拠はないが・・・)に乗って、壊滅的な戦争に突入してしまった。門戸開放の名の下に覇権外交を行ってきたアメリカに対して、かつての我が国が「アメリカ何するものぞという感情を抱いた」のは当然だが、負ける闘いをするべきではなかった。あるいは、アメリカを日本はどうしたかったのか、戦争目的が分からない。基本的には、「アジアの地域覇権」と「資源の争い」だっただろうが、それ以上の展望があったとは思えない。
日米同盟の解消は地域安全保障(マルチの面での)の担保をしなければ、単に「アメリカから敵国視される」だけの結果に終わる可能性もある。岡崎久彦氏など日本の保守派は、アメリカから、70年前のように再び「敵視」されるのが怖いから、盲従的にアメリカの意志にしたがう。
アメリカともつかず、中国とも対立をしないというのは難しい国家目標である。しかし、それを実現するのは経済である。もっともいえば技術だろうと思う。
日本には優れた中小企業や環境テクノロジーをもった企業がたくさんある。こういった企業がアメリカの多国籍企業や中国企業の製造する家電や重電、飛行機の製造には欠かせない部品を提供している。
だから、日本はアメリカのボーイングとも組むし、中国の自動車産業や原子力産業ともくむという姿勢を見せるべきである。そのようにして、日本が他国にとって欠かせない技術を、自国企業の手で開発し続けることで、他国は日本とは事を構えることを望まなくなるはずである。
そのためには、Jパワーを狙っているような外資系ファンドの投資は最小限に抑える外資規制法を導入すべきである。技術流出に繋がる可能性があるからだ。
同時に、国家予算の多くを研究補助金として民間企業に渡すべきだと思う。トヨタがプリウスを開発した裏には政府の資金援助があったと、最近、トヨタからフォードに移った外国人取締役が明らかにした。日本政府は否定しているがおそらく事実だろう。
日本の政治家や官僚の中には、そのような国家目標を明確に意識して動いている政治家たちがいるだろう。あの保守派といわれた安倍首相も、中国を最初に訪問している。首相になった政治家は何らかの「申し送り事項」を受け取るのかも知れない。
だから、憲法九条を改正して、自衛隊を「専守防衛」以外の戦争に駆り出すことはやめるべきである。最近は、アメリカも智恵が付いてきて、九条を改正しないで、骨抜きにするような戦略をとるようになってきた。最近も、ジャパン・ハンドラーズのひとりのリチャード・サミュエルズという男が、「海上保安庁の強化」を訴える政策論文を書いているが、これなどは、「日本の沿岸警備は海保に任せて海自はもっと外に出るべきだ」というシグナルではないのか。
憲法九条の改正が実現すれば、アメリカは、日本を中国を封じ込めるための手兵として利用するだろう。それは、日本に「東アジアの安全保障の責任分担を負わせる」という名の下に行われる。アメリカが極東を日本に任せるということで、アメリカは世界の他の地域での戦争を行うという考えかも知れないし、自国の兵力の損失を避けようとする考えかも知れない。
しかし、いずれにしても矢面に立たされるのは日本である。
今のままの安全保障環境が続くと仮定した場合、つまり中国の軍備が続き、アメリカが引くに引けない状況が続けば、アメリカは海軍と海兵隊をグアムなり沖縄なりに配置して中国を牽制しなくては為らない。
しかも、韓国も日本も動かなければ、アメリカはその「責任」を自分で背負うしかなくなる。ババを引くのは日本でも韓国でもなくアメリカである。
ところが、不思議なことに日本の親米保守派は、みずから「ババを引かせてくれ〜」とアメリカに申し出ているのである。まるでマゾヒストである。
日本の親米保守派というのは伝来、中国に対するコンプレックスと優越感に裏書きされた存在であった。古くは明治維新の思想的バックボーンになった水戸学などもそうだろう。中国が気になってしょうがないくせに、中国は嫌いなのである。(山本七平氏の議論からの分析)
しかし、面倒なことは自分ではなく他人にやらせるというのが賢いひとのやり方である。韓国は、ベトナム戦争に派兵させられた。日本はしなくて済んだ。これ以上に「憲法九条の効能」を物語る事例はない。
しかも、憲法九条は、それをアメリカ側が保証してくれたのである。これを利用するという吉田茂の戦略眼はやはり鋭かった。今になって後悔しても遅い、と言い続ければいい。
技術立国と憲法九条(ただし自衛隊の保持)は日本の安全保障の要だと思う。
それを「一国平和主義」というならそれでも構わない。(そう批判されないために、「シーレーンの防衛」に日本がを米中を取り込む形で、自衛隊も象徴的に参加するという選択肢もある)
日米合作の日本国憲法を守ることが日本の安全保障政策の根本にある。ゆえに、「憲法九条を守れ」と主張し続ける護憲主義の人たちの存在を一番歓迎しているのは、実は自民党である。
※ 私の書いたシナリオが有効であることは、アメリカのリバータリアン保守派のテッド・カーペンターの書いた『2013年、米中戦争勃発』(河出書房新社)と、 アメリカの軍人のジェド・バビン、エドワード・ティムパーレーク が書いた、『 SHOWDOWN(対決)―中国が牙をむく日』(扶桑社)という二つの「近未来小説」を比較して読めば分かる。
前者では、アメリカは孤立主義(不介入主義)を守る日本と韓国の協力を得られずに、独力で兵力を投入して中国と戦う。後者のシナリオでは、ヒラリー大統領の率いるアメリカは安保条約の発動を拒み、日本は独力で中国と戦わされる。
日本としては、どうしてもパワー・バランス的に太平洋の覇権争いが避けられないならば、前者のシナリオを望むべきだろう。その方が日本にとって得だからである。日本は「東洋のスイス」になればいいわけである。ただし、スイスと違うのは、「金融立国」ではなく、「技術立国」であるという点。(スイスは決して絶対的平和主義の国ではない)
ゆえに、私の意見は理想主義ではなく、あくまで現実主義からの護憲論である。この現実主義的戦略の中に、左翼の護憲派の世界に向けたアピールが加わる。これが日本の立場を確固としたものにしている。これが日本の平和外交である。
そんなようなことを、ここ数年憲法記念日になると思う。
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