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検察・警察表情硬く、無罪確定の片岸さん側は国賠提訴検討(読売新聞)
北九州市八幡西区の殺人・放火事件で、片岸みつ子さん(60)の無罪が確定した。19日、控訴を断念した検察や警察関係者の表情は一様に硬く、苦渋の決断だったことをうかがわせた。片岸さんは記者会見し、涙を浮かべて逮捕から約3年10か月間の苦難を振り返った。
「正式に不控訴を決めました」。福岡地検の吉浦正明次席検事は、こわばった表情で短いコメントを読み上げただけで、詳しい説明は行わなかった。
5日の福岡地裁小倉支部の判決後、地検と地検小倉支部、福岡高検は協議を重ねた。「被害者のことを考えると無罪は受け入れられない」「不当捜査と指摘された以上、控訴しても無理」と意見は二つに分かれた。しかし、裁判員制度導入を控え、取り調べの可視化など捜査のあり方に注目が集まる中、最終的に控訴断念を選択せざるを得なかった。
判例上、違法な手続きで収集された証拠は証拠能力が否定される。今回の判決は、同房の女性を使った県警の捜査について「捜査手法としての相当性を欠く」として違法とまでは認定しなかったが、「将来の適正な手続きの確保」を重視し、証拠能力を認めなかった。
ある検察関係者は「同房女性の証言をもっと慎重に扱うべきだった。控訴しなかったのは今後、このような捜査は許さないという決断だ」と自戒を込めて語った。
控訴断念は、福岡県警にも衝撃を与えた。捜査1課の花田利夫課長は「主張が認められず誠に残念。判決の内容を様々な角度から検証して教訓とすべき点は今後の捜査に生かし、更なる適正捜査に努めていきたい」とコメント。
被害者の古賀俊一さんの遺族の一人は「今は何もコメントすることはありません」と言葉少なだった。
片岸さんは福岡地検の発表後、北九州市八幡西区の弁護士事務所で記者会見。「控訴断念が決まって、ほっとしているが、捜査機関に対し、改めて怒りがこみ上げている。私や家族が失ったものは計り知れず、捜査員や検察官の告訴も考えたい」と述べた。
会見前には自宅で、自殺した夫の賢三さん(当時59歳)の仏前で「無罪が確定したので安心してください」と報告したという。さらに、「有罪部分は不服だが、国を相手に闘うのは心身共に困難。警察には真犯人を一日も早く捜し、兄の無念を晴らしてほしい」と訴えた。
今後は、鹿児島県議選を巡る買収無罪事件(志布志事件)で「踏み字」を強要された川畑幸夫さん(62)らと協力しながら、取り調べの可視化や代用監獄制度廃止に向けた活動を続けていくという。
弁護団は、刑事補償法で定める補償請求とともに、国と県を相手取った国家賠償訴訟の提訴を検討していることも明らかにした。
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/ne_08032002.htm?from=ranking
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