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(回答先: 沖縄密約問題:「逆風満帆」元外務省アメリカ局長 吉野文六 (日暮れて途遠し) 投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 3 月 10 日 15:12:48)
http://www.business-i.jp/news/sato-page/rasputin/200705230002o.nwc
ラスプーチンと呼ばれた男 佐藤優の地球を斬る
「沖縄密約」とマスメディア
外務官僚に欠ける品格と公開
FujiSankei Business i. 2007/5/23
1972年、沖縄返還協定において、アメリカ側が日本側へ「自発的支払を行う」と記された400万ドル(当時のレートで約12億円)が実は日本側が肩代わりしているという事実を毎日新聞の西山太吉記者がつかんだ。この情報を提供したのが外務省のH事務官(女性)だった。事務官と西山氏は逮捕、起訴された。
当初、「国民の知る権利」の観点から西山氏を擁護していたマスメディアと世論が途中から西山氏をバッシングする側に回った。西山氏は一審では無罪になったが、二審で懲役4カ月、執行猶予1年の有罪判決で、最高裁もこの判決を支持した。しかし、2000年になって密約を裏付ける文書がアメリカの公文書館で発見され、06年には当時の外務省アメリカ局長として交渉を直接担当した吉野文六氏が「密約はあった」と証言した。西山氏は現在、謝罪と損害賠償を求めて国を提訴している。
3月27日、東京地方裁判所は西山氏の請求を棄却したが、西山氏は控訴している。西山氏は5月22日に『沖縄密約』(岩波新書)を上梓し、この密約は氷山の一角に過ぎず、沖縄返還の真実が国民にほとんど明らかにされていないことを実証的に解き明かしている。優れたノンフィクション作品の誕生を歓迎する。この機会に筆者が西山事件を巡るメディアの役割についてどう考えているかについて率直に述べたい。
第一審の起訴状で「ひそかに情を通じ」て西山氏が事務官から情報を得たことが明らかになった時点から、状況が急展開したというのが通説だが、筆者はその見方にくみしない。検察官が起訴状で「ひそかに情を通じ」という文言を入れただけならば、「国民の知る権利」という大義名分の方が勝利したと思う。公判が始まった後、H氏が週刊誌やテレビのワイドショーに登場し、西山氏をなじり、また自らのプライバシーに関してもさまざまな発言をして、「国民の知る権利」よりも、週刊誌やワイドショーのスキャンダリズムの方が国民にとってずっと面白くなってしまったのである。
筆者は公権力の側にいたからよくわかるのであるが、国家は自らにとって都合が悪い情報を隠す傾向がある。それを突破するために、記者は脅しや懐柔などさまざまな手法を使わないと「国民の知る権利」に奉仕できない。「ひそかに情を通じ」たことは、それこそ大人の男と女の間の個人的問題で、国家権力が立ち入るべき領域ではないと思う。この当たり前の論理が通らずに、「セックスで情報をとるのはケシカラン」という情緒論が勝利したのは、週刊誌やワイドショーに出演したH氏の発言が抜群に面白かったからだ。西山氏はH氏の面白さに敗れたのだ。
筆者は外交の世界では、国民に対して真実をすべてあきらかにすることができないことがあると考える。当時、沖縄返還を実現するために日本政府が密約を結んだのはやむを得ないことだったと筆者は考える。しかし、外務省が国民に対して結果としてうそをついたことについてはきちんと記録に残し、ある時期がきたら公開し、国民の判断に委ねなくてはならない。それが民主国家としての品格と思う。その最低限の品格が現在の外務省には欠如している。
「二〇〇二年に発覚した米秘密文書で再び“密約”が証明された際、当時の川口外相は『かつて〔二〇〇〇年〕河野外相が吉野元アメリカ局長に密約の有無を確認したところ、吉野氏は、密約は無いと回答したと聞いている』(国会答弁、記者会見)と述べ、吉野氏の河野外相に対する“密約否定”の回答が、政府の否定発言の根拠となっていることを明確にした。/ところが、二〇〇六年二月、吉野が密約の存在を認めるに至った際、朝日新聞の諸永記者が二〇〇〇年当時の吉野の“否定発言”の背景をただしたのに対し、吉野は『あの時は河野外務大臣から、密約否定を頼まれた』、つまり“口止め”されたことを明らかにしたのである」(西山『沖縄密約』200〜201ページ)
筆者は現在、定期的に吉野文六氏と会って、聞き取りを続けている。官僚は、個人的良心としてはうそをつきたくないが、職業的良心としてはうそをつかなくてはならない場合がある。吉野氏の話からその苦悩が伝わってくる。青年外交官時代、吉野氏はナチス・ドイツ第三帝国の崩壊を目撃した。「国民にうそをつく国家は滅びる」という思いが吉野氏にはある。筆者は吉野氏の聞き取りをまとめ、知的に面白い物語の力で、外務官僚が築いた「うその壁」を崩したいと考えている。
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