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http://www.ohmynews.co.jp/news/20080303/21659
冤罪だけの新雑誌『冤罪File』登場
体制批判イデオロギーとは一線画す
軸丸 靖子(2008-03-07 15:00)
冤罪事件専門という、ちょっと変わった季刊雑誌『冤罪File』が2月、創刊された。A5サイズ128ページの本格仕様。表紙には、「東電OL殺人事件全検証」「私の痴漢冤罪裁判闘争記」など、刺激的な見出しが並ぶ。裁判員制度の導入を前に、冤罪について考える社会的意義は確かにある。しかし、それにしても硬派でニッチな目のつけどころだ。発行元キューブリック(東京・新宿)に反響を聞いた。
『冤罪File』創刊号(撮影:軸丸靖子)20ページ超の特集で事件の詳細を追う
おそらく史上初であろう冤罪専門雑誌。その創刊号の中身を見てると……。
巻頭は、映画『それでもボクはやってない』の周防正行監督へのインタビュー。14ページにわたって、映画や司法制度、裁判員制度についての話を詳細に載せている。続けて、今後シリーズ化する「痴漢冤罪」特集。実際の事件を2件取り上げ、概要と、被害者本人へのインタビュー内容を紹介している。
連載は、冤罪を扱ったテレビや新聞の記者らが寄稿する「報道現場から見た冤罪」と、裁判長の人となりを紹介する「裁判官の品格」の2本。
さらに今回は、「福岡引野口放火殺人事件」と「東電OL殺人事件」についても特集を組み、事件と捜査、公判の過程を調査・検証している。いずれも20ページを超える詳述ぶり。だが資料と取材の結果から淡々と事実関係を示す内容で、主義主張の類は見受けられない。
表紙は白地に赤と黒の文字のみでデザイン。中は縦書き14文字4段、カラーなし。“文字びっちり”ではあるが、読みやすいシンプルな構成だ。
イデオロギーより個々の事件を考えたい
『冤罪File』編集人は長井ひろし氏。「冤罪の雑誌」を考案し、キューブリックにもちかけた人物だ。
長井氏が書いた創刊宣言ともいうべき編集後記には、冤罪事件で語られがちな司法体制の不備やイデオロギーの主張からは一線を画す、という編集姿勢が明記されている。
しかし、私たちはひとつの冤罪事件を大きな問題に転換し、ひいては冒頭で述べたような「国家権力の暴力」であるかの如きイデオロギーには反対する立場をとり、あくまでも個々の事件をリベラルにとらえ解決していくことが望ましいと考えています。
むしろそのイデオロギーこそが、素朴に「裁判のあり方がおかしい」と感じている人々の関心を失わせるだけで無く、個々の事件を検証していく上でも非常な障害になるとの見解を持っているのです。(一部抜粋)
反響殺到、「広く読まれる雑誌にしていきたい」
社会的需要と内容の充実の両方を満たしているとはいえ、活字不況の世の中である。発売日前は取次に難色を示されたという。大返品を覚悟しつつ迎えた2月1日の発売日。
「会社から携帯に連絡があって、書店からの電話が鳴りやまないからすぐに帰ってきてくれ、というんですよ。追加注文です。長年出版の仕事をしていますけれど、ほぼ経験したことがない。不思議な感じでした」
と高崎氏。
発行元キューブリックの編集部内(撮影:軸丸靖子)
ライターの1人は、東京・霞が関の書店から「こういう雑誌を出すなら早く言ってくれ。うちだけで100部は抑えたのに」と苦情を言われたほどだったという。まったく予想しなかった反響だった。当初発行分は数日で完売し、重版を決めた。
数日経つと、「自分も冤罪で苦しんだ」「苦しんでいる」という手紙が届き始めた。現在獄中にある囚人からも届いた。発売から1カ月経ついまも、日に数通ずつ、本人や家族から手紙が届く。その多くに、「こういう雑誌を待っていた」という感謝と激励が込められているという。
自ら模擬裁判や公判に足を運び、取材や調査に取り組んでいるという高崎氏は、司法や事件関係者だけでなく、一般に広く読まれる雑誌に成長していきたい、としてこう話す。
「現実に冤罪があるということを、1人でも多くの人に知ってもらいたい。興味を持ってもらいたいと思います」
◇
『冤罪File』は2月、5月、8月、11月の季刊発行予定。創刊号は380円、2号目以降は450円(いずれも税込み)。
■関連情報
http://www.enzaifile.com/index.html
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