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原田武夫  「誰が本当に世界を動かしているのか?」という疑問
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投稿者 新世紀人 日時 2008 年 2 月 23 日 15:12:06: uj2zhYZWUUp16
 

http://blog.goo.ne.jp/shiome/c/ff522164af049621d6ab6ec1a6ed3ddf

中田安彦「世界を動かす人脈」(講談社現代新書)を読んで(書評)

BREAKING NEWSコラム / 2008-02-20 17:26:23


「誰が本当に世界を動かしているのか?」という疑問


一言で言えば大変な力作である。
この本には「世界の政治・経済・金融に大きな影響を与えている、まさに世界を動かしている人々の最近の動向」(中田安彦「世界を動かす人脈」より引用。以下、中田・前掲書と記す)がぎっしりと詰まっている。人物索引を入れると総計277ページ。本来は米欧の有名人脈を追うことに終始する予定であったようだが、「07年夏の「サブプライム問題」の発生以後、SWFの出現などの新展開で、新しく中国など新興国と欧米財界人のネットワークを再調査し、それを加筆することを求められた」(中田・前掲書)のだという。米欧の人的ネットワーク、あるいはアジアにおける人的ネットワークをそれぞれ個別に論ずる研究は多い。その両方について最新動向を詳細に記した本書はそれだけで一読に値する労作だというべきだろう。

本書では「世界の政治・経済・金融に大きな影響を与えている、まさに世界を動かしている人々」(中田・前掲書)を「グローバル・エリート」(中田・前掲書)と言い換えている。それではこの「グローバル・エリート」はどのようにあぶり出されるのだろうか。そのための基準をめぐる試論として中田安彦氏はまず次の2つを検討する。

第一に「富と権力」(中田・前掲書)である。とりわけ富をめぐり「個人資産について知るのに最適なのは、アメリカの雑誌「フォーブズ」が毎年春に発表する「世界の億万長者」」(中田・前掲書)だ。しかし、中田安彦氏によればそこで掲げられているリストが「そのまま、世界を動かすという意味での「グローバル・エリート」リストと一致するかというと、決してそうではない」(中田・前掲書)なのだという。非常に「厄介」(中田・前掲書)な問題だ。
なぜそうなのかというと、この手のリストをつくるために行われた「調査は、あくまで資産規模を目安に行ったもので、リストの中には、相続財産だけで億万長者になった人々もいるから」(中田・前掲書)である。つまり「資産規模が即座に世界を動かすパワーに直結するわけではない」(中田・前掲書)のであって、こうしたリストは中田安彦氏のいう「グローバル・エリート」とイコールではないということになるのだという(中田・前掲書参照)。

第二に「ネットワーク力(人脈力)」(中田・前掲書)がある。「世界を動かす能力を持っている人というのは、同時に世界のキーパーソンと豊富な人脈を誇り、電話一本で他のキーパーソンと連絡を取ることができる人物」(中田・前掲書)なのであって、「世界を動かすには、カネを持っているだけでは十分ではなく、同時に強力な人脈を持っていなければならない」のである(中田・前掲書)。
この点について、中田安彦氏はさらに掘り下げて次のように記している:

「「世界を動かす」というときに必要な条件とは次のようなものだ。つまり、現在のグローバル資本主義経済の時代にあっては、多国籍資本の企業活動をリードすることができ、時には政治家や国家指導者とも連絡を取り合うことができ、意思決定を完全に牛耳ることはなくても影響を与えることができる人物、ということである。」(中田・前掲書)

もっともここまで読むと誰もが「それではいったい、どのようにしてネットワーク力(人脈力)を身につけることができるのか?僕・私たちにも可能なのだろうか?」と疑問に思うことであろう。この点について中田安彦氏は次のような答えを示している。
ネットワーク力を身につける第一の場、それは「クラブ」である。「クラブのメンバーは先祖代々、ファミリーとして受け継がれるものもあれば、ビジネス界の新しい成功者が仲間に引き入れられる場合もある」(中田・前掲書)。もっともここでいう「クラブ」とは日本でいうものとは大きく異なる。「超大金持ち、有力政治家、財界人、文化人たちがあつまって、政策やビジネスの話題を交わし合う、密室の会員制」のクラブが「クラブ」なのである(中田・前掲書)。
具体的には次のようなものがこの「クラブ」に該当する(以下は中田・前掲書による):
(1)フリーメーソンなどの会員制の交流組織
(2)「同窓会」(アルマナイ)
(3)大学間で形成された優秀学生でつくる「ファイ・ベータ・カッパ・ソサエティ」
(4)「多国籍企業の取締役会ネットワーク」
(5)「経営諮問委員会」「国際諮問委員会」

このように列挙した上で、中田安彦氏はいう。―――「要するに「クラブ」「同窓会」「取締役会ネットワーク」「国際諮問委員会」のような人脈ネットワークが織りなす網の目が、それに所属しているものと所属していないものの「情報格差」を生み出している。この種のネットワークで共有される情報こそ、本当の“インテリジェンス”(価値ある情報)と呼ばれるものなのである。これが権力の源泉となっている」(中田・前掲書)。きわめて同感だ。


ロスチャイルド、そしてロックフェラーたち・・・

さて、ここからが佳境である。
この本では続く8章にわたり、「グローバル・エリート」(中田・前掲書)のお歴々による血脈、策動、そしてその展開が語られていく。そこで中田安彦氏は「グローバル化によって「ワン・ワールド」になりつつあるこの地球が、実は限られた有力者たちの「スモール・ワールド・ネットワーク」によって動かされているということを解き明かす」(中田・前掲書)ことを目的としているのだという。したがって、本書は「いわば「世界最高の人脈術」を極めた人たちのカタログ」(中田・前掲書)なのである。

「それでは、具体的にいったいどんなグローバル・エリートたちが列挙されているのか?」―――詳しくはぜひ、この労作をご一読いただきたいのであるが、私が特に興味深いと思ったグローバル・エリートについてほんのいくつかだけピックアップしてみたい(注:以下は中田・前掲書における記述を参考にまとめたものである):

●エティエンヌ・ダヴィニオン子爵
 ビルダーバーグ名誉議長をつとめるベルギー人。かつては欧州委員会副議長までつとめたことのある政治家兼ビジネスマンである。
 10以上の欧州企業の取締役会に呼ばれており、トヨタの国際諮問委員会や富士通の重役もつとめたことがある。2005年まで「日欧ビジネスダイアローグ」の議長であった。
 欧州意外では、アメリカ・カリフォルニア州にある「ギリアド・サイエンシズ」社のボード・メンバーである。ちなみに同社はインフルエンザで一躍有名になった治療薬「タミフル」を最初に開発した企業であり、抗HIV薬も製造している。この会社のボードには、かつてラムズフェルド元米国防長官などがいた。

●デヴィッド・ロックフェラー
 現在、ロックフェラー家の当主をつとめる人物。チェイス・マンハッタン銀行で頭取でもあった。
欧州と日本を英米主導のグローバル経済に統合していくという国際主義的野心を持ち、その一環として三極委員会(TC)が設立された。デヴィッド・ロックフェラーは元来、ビルダーバーグに日本を参加させるつもりであったが、ヨーロッパ側から猛反発を受けたのだという。そこでデヴィッド・ロックフェラーと共にビルダーバーグに出席していたズビグニュー・ブレジンスキーが新しい国際組織をつくることに着手し、この三極委員会が設立されたのだという。

そのほか、有名なロスチャイルド家、あるいはアジアやアラブの名家についても詳細な説明がある。巻末に人名索引があるのも嬉しい。読み物としてだけではなく、ちょっとした研究の際に辞書としても用いることができるだろう(その意味で新書ではあるが、今後とも定期的に改定・増補していってもらいたいものである)。


建設的議論のためのいくつかの「疑問」

この本の最後において、中田安彦氏は次のように記している:

「アメリカの世界覇権が揺らぎ、ロシア、中国、中東が経済的に勃興して力をつけていくことが「新しい世界大戦」の芽を生じさせないとも限らない。かの革命家レーニンは、「資本主義が高度に発展した段階」のことを帝国主義と呼んだ。見方を変えれば、SWFやPEファンドが資金を世界規模で動かし、鉱山会社や製造業を買収している現在の世界状況は、19世紀後半から20世紀初頭にかけての世界と似ている面も多い。・・・(中略)・・・・おそらく、グローバル経済の行方は2020年くらいまでには方向が見えてくるだろう。混乱の21世紀半ばを迎えるのか、グローバルな「世界単一市場」の進展を迎えるのか、いずれにせよ、その鍵を握っているのが本書で紹介した、キーパーソンたちであることは言うまでもない。」(中田・前掲書)


これまた至極納得のいく結語である。
しかし、あえてここでは最後に建設的議論のための「疑問」を提示しておくこととしたい。

第一に、「世界を動かす人脈」(中田・前掲書の「タイトル」)はこの本に書かれている「グローバル・エリート」(中田・前掲書)に限られるのかという点である。


中田安彦氏自身、「もとより、すべてのネットワーク、人物を網羅できたわけではないが、激動する現代の世界で活躍している財界人のネットワークについては充分に盛り込んだと自負している」(中田・前掲書)と記している。こうした留保を経てもここでさらに問題となるのは、そもそもここで炙り出されている人脈をどのように炙り出したのか、その方法論であろう。

この点について中田安彦氏は「本書は、約3年程度にわたり、英FT紙などの情報を中心に、独自の海外調査を加えて構成した」(中田・前掲書)と記している。つまり、公開報道(公開情報)と非公開情報とを織り交ぜていく中で出来上がった力作、それが本書ということになるのであろう。著者である中田安彦氏の努力の軌跡は、巻末に記された参考文献一覧からもうかがわれる。

だが、それでもなお「疑問」が残るのである。―――ここでいう「グローバル・エリート」(中田・前掲書)は確かに富だけでスクリーニングされた者たちではない。しかし、金融資本主義をコントロールする立場にある者としては想定されており、そのことは「世界の(中略)経済・金融に大きな影響を与えている」(中田・前掲書)という冒頭の表現にも示されているのである。

金融資本主義における鉄則は「目立たない」ことである。目立つことは自己顕示欲を満たすためにはよいが、たとえば巨額な買収案件を一定のモラルを無視してまで強行する際などにおいて、反対者から時には命を狙われるほどのリスクを抱えることをも同時に意味する。したがってこうした巨額の買収案件の場合、えてして次のようなスキームが構築されることになる:

◎閥族集団
 ↓
◎閥族集団に専従する資産運用会社
 ↓
◎複数の投資ファンド(たとえば米国)
 ↓
◎米系最大手投資銀行
 ↓
◎米系大手ファンド日本支社
 ↓
◎日本の大手証券会社
 ↓
◎「フェイス」の良い邦人系買収ファンド
 ↓
《買収ターゲットとなる日本企業》
(出典:原田武夫「仕掛け、壊し、奪い去るアメリカの論理」(ブックマン社)を筆者自身が微修正)

この本を出版してから早いもので1年以上が経過したのではっきりと申し上げるが、このスキームは実際にとある日本の有名企業を買収するために組まれたものである。仮に日本で大騒ぎになったとしても、決して海の向こうまでは日本のメディアが取材しないだろうし、仮にしたとしても分かりやすく「あぁ、あの米系最大手投資銀行ね」と納得するところまでであろうという歩留まり感が前提となっている。そのことは、かつてニッポン放送株をライブドアが買い占めた際、結局はこのスキームでいう第3のレベル(米系大手投資銀行日本支社)にまでしか日本の大手メディアは突き止められなかったということに基づいていた。

誤解無きよう申し上げておきたいのだが、私はなにも中田安彦氏の労作が徒労であったなどといいたいのではない。そうではなく、(おそらくは中田安彦氏自身も気づいていることであろうが)この本にいう「グローバル・エリート」を突き止めるという作業は本質的なところで、現代哲学でいう「無限退行」にも似た、際限の無いものなのではないかということを言いたいにすぎない。よしんば「これこそが世界の中核なのだ!」と確信したところで、結局はそれすら何かによって支えられているのかもしれないのである。そのことを生業にする者は別として、私を含めこの本の読者の多くの者が必ずや次のような感想を抱くに違いないのである:

「よく調べられた事実は分かった。どうやらその先のストーリーがありそうなことも分かった。しかし、僕らはそれでいったいどうやって生きていったら良いのだい?」

・・・「進むべき道はない。しかし、進まなければならない」(アンドレイ・タルコフスキー)。中田安彦氏は「私たち日本人はいったい、この先、どのように進むべきなのか」という当然の問いについて、いったいどのような答えをお持ちなのだろうか。

(アンドレイ・タルコフスキー「ソラリス」より)

第二にこの本における作業の前提として中田安彦氏が「合理的選択論」のモデルを用いている点も大変気になるところである:

「初めにお断りしておきたいが、本書では、近代経済学の想定する「合理的人間」(利益の極大化を図る人間)という前提を採用し、個人の行動を解説する際に、いわゆる「合理的選択論」のモデルを採用している。これは、様々な出来事はすべてアクター(人物)の合理的な判断(この場合、金銭利益の極大化をめざした判断)の結果であるという前提に立つ考えである。」(中田・前掲書)

何を隠そう、私も基本的には同様のアプローチを採る者である。その意味で本書において中田安彦氏が鮮明にしているアプローチは一面において大いに納得するものではある。

先ほどもご紹介したとおり、中田安彦氏は「本書は・・・(中略)・・・独自の海外調査を加えて構成」したのだという。そうであれば中田安彦氏自身、金融資本主義の覇者といわれる面々が意外にも「非合理的なるもの」にすがっているとの情報も常に触れているであろう。そうであればこうした方法論を鮮明にすること自体、研究者としての誠実さの表明ではあっても、読者にとっては最大の「アイロニー」でしかなくなることを指摘しておきたい。

なぜ「非合理的なるもの」がここで登場するのか?―――その理由は金融資本主義にある。なぜならば、金融資本主義とは一方において確かに「金銭利益の極大化」(中田・前掲書)に基づく現象ではある。しかし他方ではマーケットという自由意思をもった多数当事者が参画する場において、そうであるからこそ絶えず揺らいでいる「不確実性」もまた金融資本主義が持つもう一つの本質なのである。

おそらく「投資など、まったくの博打で関心はない」とおっしゃられるかもしれないが、悲しいかな、別名「博打」こそがマーケット、金融資本主義、ひいては人間の人生における本質なのである。中田安彦氏のように著作における執筆の大前提として、方法論としての「合理的選択論」を鮮明にされる場合には良いが、そうですらないのだとすればそれは「不確実性」というリアリティーを無視した議論に過ぎないとの謗りを免れないのではなかろうか。そしてそれはついにはある種のイデオロギーへと到達することであろう。

私が知る限りにおいて、「グローバル・エリート」(中田・前掲書)こそ、この二面性を徹底して知りぬいた人々である。そしてまた、彼らが徹底してだまされ続け、ある意味「搾取」され続ける日本人をそれでもなお捨てきれないのには、どうやらこの「不確実性」、もっといえば「非合理的なるもの」について日本人が自ら気づかないままに長けていることによるのだということもしばしば耳にする。

「よく調べられた事実は分かった。どうやらその先のストーリーがありそうなことも分かった。しかし、僕らはそれでいったいどうやって生きていったら良いのだい?」

――――この質問に対する答えを、ぜひとも一度、俊英・中田安彦氏から直接お聞きしてみたいものである。
「不確実性」が満ち溢れたこの世の中で何を言われようとも「情報リテラシーをもった「新しい中間層」の輪が広がってほしい」と願い、一騎当千の気概で突っ走るprivate intelligence agency「IISIA」のCEO(代表取締役)としての立場にあるからこそ、そう思う次第である。


2008年2月20日
東京・国立市にて

原田武夫記す

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