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「経済コラムマガジン08/2/11(514号)
・またもや虚言・妄言・・その2
・正しいのは半分
世界中の経済が変調をきたし、テレビなどメディアにエコノミストなどの経済専門家が登場する機会が増えた。ところがこの経済専門家の発言がおかしいのである。ちょっとではない。異常な、まさに虚言・妄言の類の連続である。
先週号で取上げた「外資が日本から逃げ出している」もその一つである。たしかに日本の株価の下落を演出しているのは外資である。1月も8,000億円くらい売り越ししている。しかし売っているのは外資だけではない。個人も売っている。買っているのは一般国内企業だけと思われる。国内企業は自社株買いや、多少の株の持合を復活させている。
個人が、ライブドア事件以来、ずっと売りを継続していることはあまり話題にならない。しかし4割を越えていた個人の取引高も、直近では2割を切っている。反面、4割台だった外人の東証での取引が6割から7割に増えている。異常な事態である。本当に「外資が日本から逃げ出している」のなら、日経平均はとうに1万円を割っているはずである。
外資の中でも売っているのは主にヘッジファンドである。要するに買手不在の中、ヘッジファンドと個人が売るから株価がどんどん下がるのである。しかしヘッジファンドは株価が底に来れば買い戻してくると、筆者は見ている。特にカラ売りしておけば、買い戻した時点で利益が出る。「外資が日本から逃げ出している」発言は、このヘッジファンドの投資戦略を助けるようなものである。だいたい日本株を売っても、その資金をどこで運用するのか考えてみればこのことが分る(資金繰りの都合や借金の返済を除けば、当面、米国や新興市場で株式運用を行うとは思われない)。
筆者は、メディアに登場するエコノミストの発言が全部「嘘」と言っているのではない。概ね半分くらいが正しく(もちろん筆者の判断で)、残りが「虚言・妄言の類」である。問題は後者の部分である。ところが経済専門家の多くは、テレビなどのメディアを通じてこのような真っ赤な「嘘」を垂れ流している。これではとても日本でまともな経済政策の世論は喚起できない。日本株をカラ売りしているヘッジファンド関係者は、楽しくてしょうがないであろう。
筆者の感じる限り、特に酷いのはテレビ東京系の番組に出ているエコノミスト達である(親会社が日経新聞だからしょうがないが)。中でもWBS(ワールド・ビジネス・サテライト)のコメテータが最低であろう。何か新興宗教の信者の集まりのように見える。ただしテレビ東京系でも比較的正しいと思われるコメントをしている人もいる。岡三証券出身のコメンテータは、なかなか納得できるコメント(これも筆者の判断で)を続けている。
テレビに登場するエコノミストの発言の半分は正しいとして、正しい話は概ね前半に出る。前半が正しいと思われるので「ふむふむ」と聞いていると、最後にとんでもない話が飛出すという具合だ。話の全部が嘘ではないところは詐欺師のトークに似ている。
先月、テレビ朝日系の報道ステーションに登場したエコノミストは、サブプライム問題で適切な解説を行っていた。ところが最後に司会者から「では日本政府が行うべき一番の経済政策は」と聞かれ、何と「ガソリン税の暫定税率の撤廃」と答えていた。このセリフを聞いて筆者もさすがに驚いた。
ガソリンの暫定税率分と言っても、わずか2兆7千億円くらいのものであろう。たった2兆7千億円の減税で日本経済がどうなるものではない。もちろんガソリン税は、特定財源になっており、減税分は歳出のカットに繋がる。つまり減税によるプラスの乗数効果と、歳出削減によるマイナスの乗数効果の見合いである。両者はほぼ相殺し合うから、経済に及ぼす影響はほとんどゼロと考えて良い。
このようなことはこのエコノミストも承知しているはずであり、この発言は番組制作サイドの意向と考えられる。当時、民主党は政局狙いでガソリン税の引下げを主張し、マスコミも騒いでいた。メディアに登場するエコノミストはこんな情けない者ばかりなってしまった。
・「外国から積極的に投資を受入れる」?
今週取上げる虚言・妄言は、日本経済を立直すには「外国から積極的に投資を受入れる」である。これは先週号の「外資の日本からの逃亡説」に通じる。ただし前段で述べたように虚言・妄言といえど、話の半分は正しい。たしかに投資が行われれば、乗数効果によって需要が増え、GDPは増える。つまり投資によって経済成長するいう点では正しい。
しかし問題は投資を行う主体が、何故、「外資」でなければならないのかということである。当然、経済理論上、誰が投資を行っても、乗数値に違いは生じない。つまり日本の資本でも投資の乗数効果は同じである。このようなことはちょっと考えてみれば分ることである。日本のマスコミはこんな幼稚な詐欺話を広めているのである。
たしかに中国のように外資の導入が経済成長のきっかけになった国はある。しかし中国の場合、資本を取込むと同時に先進技術を取得することが目的であった。今日の日本と全く事情が異なる。日本で「外国から積極的に投資を受入れる」と言っている人々は、同時に技術を取入れるなんて言っていない。中には「アラブの政府系ファンドから出資を受け入れよ」と言っている大バカ者さえいる。アジア・ハンドボール協会の回し者だろう。
「外国から積極的に投資を受入れよ」と主張する人々は、外国からの投資額が大きい国ほど経済成長率の高いという幼稚な数表を持出して、この嘘話を広めている。話は原因と結果が逆である。経済成長が高いから、外資がやって来ているのである。
経済成長が高く、資本の予想投資収益率が大きいから、外資がその国に投資するのである。特に資本が乏しく、技術のない発展途上国は、外資にインセンティブを与えて、外資を導入したがる。一方、資本と技術が十分ある日本が、いまさら外資を取入れる必要はない。
日本は、高度経済成長期、今日の新興国と全く違う方法で経済成長を達成した。外資を徹底的に拒否しながら経済が大きく伸びたのである。ちょうど当時、資本の自由化が進行し(米国から迫られた)、外資に日本企業が乗っ取られるのではないかという危惧があった。そこで通産省は、自動車や電機業界の再編を進め、経営体質の強化を図った。
特に自動車会社は、数が多く、競争力が弱いと判断された。まず日産とプリンスが合併した。また当時二輪車しか作っていなかったホンダ(本田技研)が、四輪車製造に進出することに通産省は徹底的に反対した。自動車業界の競争がさらに激しくなり、経営が脆弱化し、自動車業界が外資に対抗できなくなると考えたからである。
また次世代コンピュータの開発のための重複投資を避けるため、電機業界をいくつかのグループに分けた。例えば富士通と日立は組んで次世代コンピュータの開発を行った(たしかMシリーズ)。このように日本は、外資を徹底的に拒否しながらも、高い経済成長を実現したのである。「外国から投資を受入れなければ経済成長しない」とはまさに虚言・妄言である。
これに関して、最近ではとんでもない詐欺話が横行している。羽田空港施設への外資規制の話である。空港施設への外国からの出資を拒否することが、「けしからん」という話になっている。「外国から積極的に投資を受入れろ」と主張する詐欺師軍団から、日本の閉鎖性を示すものとして「ヤリ玉」に上がっている。
彼等、詐欺師達は、空港施設に外国人の出資を受け入れることが「世界標準」と言っている。しかし世界で空港施設への外国人の出資を自由に認めている国は、英国やベルギーなどわずか4カ国だけである。ほとんどの国は、空港施設などの公共インフラには外資規制を設けている。彼等のセリフは真っ赤な嘘である。
2年前、米国の港湾施設へのアラブ資本の進出が問題になった。ニューヨーク、ボルチモワ、マイアミといった米国の主要6港湾の施設を運営していたのは英国のP&O社であった。ところがUAEドバイのDPW社がこの英国P&O社を買収したのである。つまり米国の主要6港湾の運営がアラブ資本の手に落ちるといった事態に直面した。しかしこれに米国議会は猛然と反対した(港湾の運営がアラブ系になれば、アラブ系のテロリストの侵入チェックが甘くなるという理由)。随分もめたが、最終的にUAEドバイのDPW社は、米国の6港湾を切離して英国のP&O社を買収することにした。
このように港湾や空港という公共施設に対する外資規制は当り前に行われていることである。おかしいのは英国なのである。また米国では金融機関などの経済インフラへの外資の規制も暗黙のうちになされている。08/1/21(第511号)「サブプライム問題の本質」http://adpweb.com/eco/eco511.html で触れたように、80年代に住友銀行はゴールドマン・サックスに出資したことがある。しかし当時のFRBがこれにいい顔をしなかったので、出資比率を5%に抑えたのである。今日、米国の大手金融機関は、サププライム問題で資本不足に陥り、世界各国から出資を募っている。今後、米政府やFRBが、どこまで中国やアラブの大手金融機関への出資を認めるかが注目される。
来週は「外国から積極的に投資を受入れる」という声の背景を考えてみる。
近日中と予想されていたムーディーズのモノラインに対する格付変更が、2月の下旬に延期されたという話が出ている。なにか政治的な力が働いているのであろう。そもそもサブプライム問題を大きくしたのがこの格付機関の格付であった。ここでモノライン会社の格下げで再び市場に混乱を招けば、格付機関への風当たりはさらに強まる。しかし格下げを行わなければ、格付機関の存在意義が問われる。格付機関も苦しい立場に置かれている。
G7はたいした対策を打ち出せずに閉幕するようだ。信用不安が起ると必ず「厳しく資産の査定」を行うべきという、常識的ではあるが、無責任な意見が出る。G7では「金融機関が金融商品の損失を認識する」という表現に止められている。
米国の住宅価格は下落を続けているのであり、査定自体が困難である。またもし「厳しく資産の査定」を行ったら、それこそ金融機関の貸し渋りは拡大する。日本のバブル崩壊後も、このいい加減なセリフに振り回され、これが今日の日本経済に大きな後遺症を残した。重要なことは住宅などの資産の価格が適正なレベル以下に下がらないよう施策を打つことである。日本は橋本構造改革政権によって、この重要な機会を逸したのである。」
http://adpweb.com/eco/eco514.html
関連
またもや「改革派」の虚言・妄言・・その1(経済コラムマガジン)
http://www.asyura2.com/08/senkyo46/msg/836.html
投稿者 JAXVN 日時 2008 年 2 月 03 日 15:10:40: fSuEJ1ZfVg3Og
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