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『回想記』と異なる内務省説明〜「天皇とマッカーサー会見」の検証/豊下楢彦/朝日(夕刊)‘89.2.6から抜粋
〈天皇がまず「感動」〜占領政策へ協力を約束/会見五日後の米紙が東京電〉
・実は会見から五日後の十月二日付ニューヨーク・タイムズは、十月一日東京発のロイター電として、『マッカーサー回想記』とは全く異なる会談内容を報じていたのである。会話に関する「秘密状態」が「部分的に解除された」という言葉で始まるこの「記事」は、日本の内務省の担当官が明らかにした会談内容を以下のように伝えている。…
天皇はこの機会にあたり個人として、マッカーサーが、「一件の事件もなく」占領を遂行したことに感謝の意を表明した。これに対してマッカーサーは、「円滑な占領は天皇のリーダーシップのおかげである」と答え、占領が「いかなる流血ももたらさなかった」ことについて心からの感謝を述べた。両者は、もし米軍の本土侵攻が行われていたならば、日米双方の多大な人的損失と日本の完全な破壊がもたらされていたであろうという点で、意見が完全に一致した。
「天皇は、だれが戦争に責任を負うべきかについてマッカーサー元帥が何ら言及しなかったことに、とりわけ感動した。天皇は個人的な見解として、最終的な判断は後世の歴史に委ねざるをえないであろうとの考えを表明したが、マッカーサー元帥は何ひとつ意見を述べなかった」
続いて両者は、「連合国によってなされるべき占領の様々な施策」について議論を交わし、天皇は「これまでの占領の進捗について『きわめて満足している』との所信を述べた」。そこでマッカーサー元帥は、天皇が日本の再建に関して望む「どのような提案も歓迎する」と述べ、もしそれらが連合国の政策と一致するならば、可能な限りすみやかに実施されるであろうと約束した。
この内務省の説明の説明に従えば、会談においてまず「感動」したのは天皇であり、その理由はマッカーサーがあえて天皇の戦争責任の問題を問わなかったからであった。しかも天皇は、あたかも問題を避けるかのように、「最終的な判断」は「後世の歴史家」に託すべきであろうとの見解を表明していたのであり、『回想記』の一節とは正反対の発言であった、ということになるのである。