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(回答先: <望まれる取り調べの全面可視化>「踏み字」判決 強引な取り調べを断罪(中国新聞) 投稿者 gataro 日時 2008 年 3 月 19 日 13:03:47)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/column/syasetu/20080319/20080319_002.shtml
社説
「捜査の常軌」を築き直せ 「踏み字」判決
狭い意味での暴力は、殴る、けるといった物理的なものを指すが、広い意味では、相手を辱め、いじめる「陵虐」など心理的なものもある。2003年春の鹿児島県議選をめぐる公選法違反冤罪(えんざい)事件の捜査過程で起きた「踏み字」事件は、後者に属する暴力だ。
この事件で在宅起訴され、特別公務員暴行陵虐罪に問われた鹿児島県警の元警部補に対し、福岡地裁が懲役10月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。
特別公務員暴行陵虐の罪は刑法の195条に規定されている。裁判官や検察官、警察官らが被告や容疑者らに暴行、陵辱、加虐などの行為をしたときは、7年以下の懲役、または禁固が科される。
判決によると、被告は、任意で事情聴取している男性の両足首をつかみ、孫や実父の名前と「早く正直なじいちゃんになってください」などと書いた紙3枚を、少なくとも1回踏ませた。
そう事実認定した上で判決は、踏み字について「違法で常軌を逸したもの」とし、被害者は家族に対して抱いている尊敬や情愛を傷つけられ、被害者の人格そのものも傷つけられた、と述べた。
踏み字を強いられた男性が鹿児島県に慰謝料などを求めた国家賠償請求訴訟では、鹿児島地裁が昨年1月、「常軌を逸し、公権力をかさに着て原告を侮辱した」と認定した。被告の県側が控訴を断念し、判決が確定している。
踏み字は、民事訴訟だけでなく刑事訴訟でも「常軌を逸した」ものだと重ねて断罪されたわけである。
被告側は、公判で「処罰を受けるほどの違法性はない」などと無罪を主張してきた。人の心の痛みに対する想像力に欠けた主張ではなかったか。
執行猶予付きの判決だったことには、被告が既に警察を依願退職しているなどの理由があったろう。それでも、被害者が受けた精神的な苦痛からすれば、市民感覚として釈然としない思いも残る。
日本は1999年に国際条約「拷問及び他の残虐な、非人道的な又(また)は品位を傷つける取り扱い又は刑罰に関する条約」(拷問等禁止条約)に加入している。踏み字を、この国際条約に照らせば、「非人道的」で「品位を傷つける」行為に当たるだろう。
警察官には犯罪を取り締まるために、個人の権利に制約を加え得る捜査権が与えられている。強い公権力である。しかし、国家賠償請求訴訟の判決も指摘しているように、「公権力をかさに着て」自白偏重の捜査を行った場合、捜査官自身に刑事罰が科せられることもあるのだと「踏み字」事件は教えている。戒めとしなくてはならない。
捜査当局は現代にふさわしい「捜査の常軌」を待ったなしで築き直すよう迫られている。同時に、録音・録画による取り調べ可視化の本格的な実施に向けて、さらに歩を進めていく必要がある。
=2008/03/19付 西日本新聞朝刊=
2008年03月19日00時16分