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http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh200803190161.html
「踏み字」判決 強引な取り調べを断罪 '08/3/19
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「踏み字」は常軌を逸し、被害者の父や孫に対する尊敬や情愛を踏みにじった―。二〇〇三年の鹿児島県議選に絡む冤罪(えんざい)事件で、踏み字を迫って特別公務員暴行陵虐罪に問われた鹿児島県警の元警部補(45)に、福岡地裁はきのう有罪を言い渡した。
警察の捜査全体に対する信頼を大きく損なったとも指摘、刑事責任は重いと断罪している。
判決は適正を欠いた捜査過程だけでなく、人権侵害をも厳しく指摘した。被害者はホテル経営の男性(62)。孫や実父の名前と「早く正直なじいちゃんになってください」などと書かれた紙を踏まされた。屈辱感を与えて供述を引き出そうとする姿勢は、近代的な警察の捜査とは思われない。
「踏み字は一回だけで、陵辱、加虐行為には該当しない」と被告は無罪を主張した。しかし判決は「少なくとも一回」と述べ、十回程度強要されたという被害者の主張にも一定の理解を示した。問題なのは回数ではなく、行為そのものに潜む本質的な人権侵害だと判断したのだろう。
公選法違反の罪で起訴された事件は昨年、十二人の被告全員の無罪が確定している。票の取りまとめを依頼した会合自体、あったかどうか疑わしいとする判決だった。自白偏重のずさんなアリバイ捜査で、事件を客観的に裏付ける証拠のない冤罪事件だった。
浮かび上がったのは強引な捜査だ。長時間に及ぶ密室での取り調べや踏み字。許されない手法に基づいてとられた調書。今回裁かれたのは被告一人だが、そうした捜査手法を容認してきた組織こそ、指弾されなければならない。
女性暴行の罪で服役した男性が後になって冤罪と分かり、昨年の再審で無罪が確定した事件も富山県であった。
鹿児島の事件と合わせて警察庁は異例の内部調査を行い、それを基に「取り調べ適正化指針」をまとめた。尊厳を害する取り調べを禁止、該当行為があったときは懲戒対象にもなるとしている。人権に配慮した取り調べは当たり前のことである。
来春には裁判員制度がスタートする。取り調べの過程を録音、録画する可視化も避けて通れない課題だろう。しかし、一部だけの可視化では都合のいい運用をされるという不信感も根強い。警察・検察には冤罪につながった捜査の在り方を厳しく問い直し、信頼される組織づくりを求めたい。