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(回答先: Re: 中国の国益とチベット人の自由 投稿者 彼岸楼 日時 2008 年 3 月 26 日 07:01:44)
ワヤクチャさん、こんにちは。
チベット問題を考察する上で以下のような観方もあると思いますので、私のコメントを含めてご笑覧願えればと考えます。尚、阿修羅板上で既出でありましたら、重複になりますことをご容赦ください。
http://amesei.exblog.jp/d2008-03-21 2008年 03月 21日 チベット問題はアイヌ問題と同じだろう
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アルルの男・ヒロシです。
騒乱と緊張が続くチベット問題について考えてみたい。
この問題は、私が産経新聞などの少ないメディアで集めた情報に基づけば、明らかに全人代最中、そして、1959年のラサ蜂起の記念日を当て込んだ、中国治安当局の挑発作戦の一貫であったと思う。産経新聞は以下にように報道していた。
(引用開始)
ただ、青海省では2月下旬から僧侶やチベット族と警察の衝突が断続的に続いていたとの情報もあり、チベットでは昨年も数十人、数百人レベルの民衆と当局が衝突した末、武装警察が摘発を繰り返すなど、「騒乱につながる兆候はすでに表れていた」と専門家は指摘する。
ラサを取り巻く緊張感が一気に高まったのは今月14日。抗議活動はデモ隊による車両への放火などの暴動に発展し、デモ隊に警察が発砲して2人が死亡したと伝えられた。これを契機に騒乱は青海や甘粛、四川各省にも波及、デモ隊と警官隊が激しく衝突した。
17日付の中国国営新華社通信では、10日のデモを行ったのはラサの3大寺院のひとつのデプン寺の僧侶らで、政府関係者を殴打したことから、衝突が起きたとしている。しかし、詳しい状況は不明だ。
「産経新聞」(2008年03月18日 チベット騒乱の背景 49周年の日、僧侶動く)
(引用終わり)
極端な事を言うと、中国としては、五輪の最中にチベットで暴動、あるいは北京で反対派の抗議活動などを起こされては困る。
だから、今の段階で、最も過激な分離独立派を一網打尽にするために行動に打って出たのだろう。一種の「あぶり出し」作戦を狙ったのだろう。どのみち中国も全ての不満分子をたたきつぶせるとは思っていないはずである。
産経が報じているように、常にチベットでは僧侶と治安当局の間で緊張関係があったようだ。タイミングとしては、世界の眼が集まる全人代最中にしたのだろう。
中国側は、新華社を通じて、ダライ・ラマを批判したが、一方でイギリスの「タイムズ」が伝えているように、バックステージでは、温家宝首相が、ブラウン英首相に対して、「5月にダライ・ラマと交渉をしてもいい」と伝えている。
これに呼応したのか、ダライ・ラマも胡錦涛との会談に出向くと言っている。重要なのは、胡錦涛との会談が第三国で開催されることだろう。
March 20, 2008
Tibet: China 'ready for talks with Dalai Lama'
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/asia/article3587093.ece
仮にも「中国国内」に出て行けば、中国としても人民解放軍としては逮捕しないわけにはいかない。しかし、ダラム・サラに中国指導部が出て行くほどのことはあり得ないだろう。
温家宝首相は、困り切った表情で、「ダライ集団」に対する批判を行っていたのをCNNで見たが、治安権限に対しては、彼は決定権がないのだろう。チベットを統括している党書記は、胡錦涛の秘蔵っ子であり、胡錦涛自身が、チベット動乱1989年の収拾と鎮圧に当たっていた。しかし、軍隊を動かしているのはもっと別の軍務プロパーの幹部だと思う。
ダライ・ラマの姿勢は至って穏健である。分離独立は主張せず、広範な自治権を要求しているという。難しいのは、ダライ・ラマ自身が、既に長い間の亡命生活を送っているので、その意味で立場はミャンマーのスーチー女史とは違うという点である。仮に、ここで中国側とダライ・ラマの会談が実現すると、少なからず存在するであろう、チベット国内の分離独立運動家にとっては非常に悩ましい事態が生じてしまう。
むろん、大多数は、平穏無事な生活を重視する立場だろうが、実際に今回、漢民族の商店を襲撃したような、チベットの急進派がそれを納得するかと言う問題である。ダライ・ラマ自身は、「チベット人が暴力で問題を解決しようするとならば、私は退位する」と言っている。その意味で、彼は原理原則的な分離独立主義者(シセショニスト、secessionist )ではないのだから。
しかも、東トルキスタンのイスラム原理主義に対する問題もある。これはテロリズムの問題にも関係しているので非常に厄介である。関係ない立場のものを巻き込むのである。毎日新聞の記事でもすでにそれは現れている。
(貼り付け開始)
<中国>新疆自治区当局、テロ未遂は独立派の指示と断定
3月20日20時46分配信 毎日新聞
中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区当局は18日、同自治区ウルムチ発、北京行きの航空機を狙った今月7日のテロ未遂事件について、自治区からの独立を綱領に掲げる組織「東トルキスタン・イスラム運動」の指示で計画されたと明らかにした。地元紙「新疆日報」などが19日、報じた。同事件では、航空機の爆破を狙ったウイグル族の少女ら2人が航空機内で拘束された。【中国総局】
最終更新:3月20日20時46分
(貼り付け終わり)
この厄介な解決策が見いだせない問題は、日本も昔は抱えていた。
それが、北海道のアイヌ問題である。北海道のアイヌ民族を昔の大和朝廷が侵略して、同化させたということは今の常識で語ると明らかである。この問題は、歴史の経過と共に、歴史ロマンの文脈で、冷静に語れる状況が生まれたが、現在進行形のチベット問題は、このような語りを許容しない性格を持つ。
日本のような島国で民族自決を語ろうとすることは非常に難しい。
沖縄ですら日本人は日本から分離独立するということを想定していないからだ。願わくは、ダライ・ラマと温家宝・胡錦涛との会談が実現し、グランド・バーゲン(大いなる妥協)が成立することを。この問題を取り扱い間違うと、中国はソフトパワーの面で厄介な問題を抱え込むことになる。
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今回の騒動が、オリンピック開催中に抗議行動や暴動が起きるのを防ぐために、不満分子を炙り出して予め反対運動の芽を摘んでしまおうと中国当局が画策したものだとするのが真実ならば、第三者のはたらきかけによる外部的な圧力の効果はあまり期待できないかも知れません。分離独立ではなくチベット自治区の広範な自治を望んでいるとされるダライ・ラマ14世の意向を中国側が汲むか否かが問題解決への分岐点になるでしょう。ただし、お国柄によっても人権に関する考え方には違いがあるように、それを当事者同士が互いに明確に意識するのでなければ捩れを修正することは難しいように想われます。
おそらく、中国政府は大方芽を摘んだと見定めた時点で、ダライ・ラマ14世との会談を設定することになるのではないでしょうか。とかくCIAとの関係が引きあいに出されることがあったとしても、交渉の相手として今のところダライ・ラマ14世以外には適任者が見当たらない筈です。何れにしても、問題は先延ばしされるだけで、根本的な解決には至らないのではと予想されます。しかしながら、強権による民族抑圧は如何なる場合であってもゆるされるものではなく、継続して反対しなければならないのは謂うまでもないことだと考えます。
Auf Wiedersehen.