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投稿者 memento mori 日時 2008 年 9 月 27 日 22:18:16: 1mvWlnKGcvCrw
 

(回答先: コメントも 投稿者 memento mori 日時 2008 年 9 月 27 日 22:08:11)

こんたこんた 2008/09/27 11:18 ”教科書レベル”にも達していないのが、現在の保険診療です。

膠原病などの特定疾患関係で電子レセチェックをやられると
ステロイドパルスすら出来なくなります
悲惨な状態になるでしょう

YosyanYosyan 2008/09/27 13:17 医師と言うのは患者を治療するのが格段の第一義としています。しかし最善の治療を行なえば狭苦しい保険診療の枠内からすぐにはみ出します。枠内からはみ出した治療は病院経営を直撃するだけではなく、くり返して行なえば厳しい指導から最悪保険医停止までの処分を食らいます。これは医師の常識です。

そこで第二義として最善の治療を保険診療内に収める努力が必要とされます。ここで優先するのはあくまでも治療であり、決して保険診療枠内の治療に留めると言うものではありません。そのために必要悪として行なわれてきたものの一つが保険病名です。医師の意識としては第一義のための必要悪ですから良心の痛みなど殆んど無いと言ってよいかもしれません。むしろ第一義の最善の治療を阻む狭苦しい保険診療枠を憎悪していると言った方が相応しいと思います。

このイビツな運用は年とともに改善されるというよりむしろ悪化しています。元ライダー様が示してくれたように「参考」であったはずの効能書きが「絶対」に変化してきています。薬剤だけではなく検査や治療手技も同様です。最善の治療よりはるかに狭い保険診療枠で医師に治療を行なわせれば医療費が削減できるとの方針です。そこには患者を治療するという目的は既に消え去り算盤上の削減見積もりだけで医療を見る世界になっています。

国の方針がそうであるなら、四の五の言わずに医師は黙って従うのも一つですが、会議室で算盤を弾いている連中と違って医師は患者に直面しています。目の前に病に苦しむ患者が横たわり、知識と技量としてこれを治癒する術を持っているのです。出来ないのは保険診療の鉄の枠です。

もちろん司法も追い討ちをかけます。司法の場では「保険で認められていないから行なわなかった」は一笑に付されます。保険診療として認められない分は医師なり病院が自己負担して当然行なうべきだの判決を平然と下します。つまり保険診療と司法判断で医師の手も足も縛っておいて、それでも最善を尽くさないのは注意義務責任を果たしていないと断罪します。

医師はバカですから、同じ病気で同じ重症度の患者が二人いて、一方は自由に最善の治療を施して治癒させ、一方は厳しい制約内の治療を施して死に至らしめるという状況は辛すぎるものがあります。そんな状況を作らないために皆保険体制が作られたと無邪気に信じていますし、だから守りたいの思いがタップリ残っています。

もちろんそういう医師のバカで無邪気な思いを笑うのは勝手ですし、医療政策は国策ですから、国民が望む医療体制を選択すれば医師はそれに従って医療を行ないます。医師がせめて言えるのは今国民が手にしている医療がどれだけ素晴らしいものかぐらいです。失うまで気がつかないのは人間のサガですからさほど期待はしていませんが、考えるぐらいはして欲しいと願っています。

近森正昭近森正昭 2008/09/27 14:08 医科点数表の解釈(平成18年4月版)によると、「健康保険法第63条第3項第一号に規定する保険医療機関に係る療養に要する費用の額は、歯科診療以外の診療にあっては別表第一医科診療報酬点数表により、歯科診療にあっては別表第二歯科診療報酬点数表により算定するものとする」と書かれており、具体的な疑義解釈は告示、通知でおこなわれ、診療報酬表に右欄に告示、通知の内容を掲載することが定められています。
つまり、病名があり、適応とされる薬剤を請求することは正しく、保険病名として査定することは健康保険法第63条第3項第一号に違反します。
違法な査定をおこなう基金、国保の方が間違っているのです。
医師の常識は世間の非常識、日本の常識は世界の非常識なのです。
冗談ですがね、事実関係はこういうことです。

TOMTOM 2008/09/27 14:09  何でもマスコミが悪いって言い出す俺がまた来ましたよ。
私、いっつも「〜は不思議だ」って言ってますが、今日もそれです。一般にマスコミ各社は政府の悪口を書きます。具体的には政治家と中央省庁の役人に罵詈を浴びせ、何かというと「○○省の責任が...」と言います。省庁の融通の利かなさを強調し、「市民」がそれで如何に迷惑しているかを切々とレポートします。時には読者の情動を煽り、超法規的措置を促しもするし、世論調査で「国民の政治不信」を裏付ける事も忘れません。そして自分たちは「権力の監視機構」だと主張しています。

 さて、本当に彼らは自らをそうであると信じているのでしょうか。「不正請求」がらみの報道がある度、医者はその大半が単なる事務ミスに過ぎない事や、保険適応が実際の診療と乖離している為である事を指摘してきました。しかしマスコミはその声をことごとく無視し、今日も「医者が儲け主義だから不正」と喧伝し続けています。でも、我々から見て非現実的で根拠に乏しい保険適応制限にしろ、只の政令なのに法律と同等の重みとされる療養担当規則にしろ、普段彼らが唾を吐きかけている政府の作ったもの、審査したものです。マスコミよ、政府は信用できないのではなかったのですか?君たちはいつも役人の不作為を憤り、不首尾を嘲笑っていたのではないのですか? 融通の利かなさを突き快哉を叫んでいませんでしたか?

 なんで「保険病名」について、お得意の「自由」を振りかざして地に着いた取材をしてみようというマスコミがいないのでしょう。普段あれほど蔑み敵視する「政府」に根本的な疑問を呈さないのでしょう。不思議です。

 あ、不思議じゃなかった。だって本当は、お友達だもんね〜。


 追加すると、私も法務業の末席様と同様、何でも保険診療でカバーしうるというのはもう幻想なんだろなと思っています。実はね。

tadano-rytadano-ry 2008/09/27 15:07  先日、海外旅行後の24歳男性の方が粘血便で救急外来を受診され、入院していただいて
精査したら赤痢アメーバでした。

 赤痢アメーバにはメトロニダゾール(フラジール)という特効薬がありますが、
困ったことに保険適応がありません。
 女性の方ならトリコモナス腟炎という逃げ道がありますが(昔男性でも堂々と
病名を書いた豪傑がいらっしゃると聞きましたwww)、この方は男性なので
困ってしまいました。

 そのくせ、こんなこと書いてるんですからね。そりゃ治療と保険は直接関係ないと
言われたらそれまでですけど。

厚生労働省検疫所 海外旅行者のための感染症情報
http://www.forth.go.jp/tourist/kansen/29_amebia.html

アメーバ赤痢

(中略)

4 治療方法
 第1選択薬はメトロニダゾールです。しかしメトロニダゾールの腸管吸収が速いため、
腸管内の虫体を完全に殺滅できないことがあります。そのためしばしばテトラサイクリン
あるいはフラミドを併用します。赤痢症状が強いときは食物の経口摂取制限が必要です。

YosyanYosyan 2008/09/27 16:41 Tadano-ry様

でどうやったの?と聞きたいところですが、それは聞かないでおきます。

ちょっと昔話なんですが、血液腫瘍を研修している時に受け持ち患者の高額医療説明書みたいなものを書かされました。今から考えると何故研修医が書かされていたのか不思議なんですが書いていました。それで査定を食らったらそれの申立書まで書いていましたから、どう考えても不思議な研修でした。

何回か書いているとコツを覚えて査定は食らわなくなるのですが、ある時の査定は完全に目を剥いてしまいした。たしか肝芽腫だったと思うのですが化学療法剤が「適用外」でバッサリです。改めて化学療法剤の適用を調べなおしてみたら悉く適用外なのです。よく考えればそうで小児腫瘍に適応がある化学療法剤なんてそうそうあるはずもありません。

仕方が無いので上司に相談に行くとたまにあるようで、「そういう時には・・・」とのコツを教えてくれ、翌月からも無事治療が進行できました。もちろんメトロニダゾールも保険適用で投与できるはずです。時代が変わっているのであくまでも「たぶん」ですけどね。

それからも何回か完全に適応外の薬剤を治療に用いましたが、その度に「今回はこの手で保険を通そう」の相談が回診やカンファで行われ、「じゃ、その線で書いといてくれ」はありました。さすがにこんな研修は今でもしないでしょうね・・・。

banch1banch1 2008/09/27 18:37 皆様ご存じかと思いますが、支払基金の査定には地域差がありますよね。
どうやらそれは査定する側の医師に負う部分がかなり重いようです。

かつての私の上司が現在ある地域のトップでやっておりますが、
かなり膨大な処理を求められる処理のようで、職員(非医者)は当然ながら現場が理解できておらず、
ときに、実際の処置道具や薬剤の現物を持って行って、
これでこういう風に使うのだからこういう請求を無下に却下するわけにはいかないなどと
講義めいたこともせねばならないようです。
基本的に、適応外即斬りは容認しないというスタンスで奮闘されております。

その上司曰く、保険適応外の治療がなされている場合、
専門分野のことはレセを見ればどんな状態でどんな治療をしたかある程度わかり、妥当性を判断できるが、
専門外のことになると、文献検索して、とにかくエビデンスがあるかどうかを確認する以外にその治療が妥当かどうか判断する術がない。

エビデンスはこういう風にも使われるようで、もしどうにも通らない場合はエビがあるなら、それを注釈にいれると通るかもしれません。

cobonzucobonzu 2008/09/27 18:39 フラジール内服錠の適応を見ると
効能又は効果
1. トリコモナス症(腟トリコモナスによる感染症)
2. 胃潰瘍・十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリ感染症
とありまして(2. に関しては AMPC+CAM+PPI での失敗例という縛りつき)、1. の括弧書きを必須とすると、男性のトリコモナス感染は治療法がないってことなんでしょうかね。

「トリコモナス症」という記載なら、男でも不合理ではない(ただし、カッコの中かどうか返戻されるとアウトですか)。

numachinomajonumachinomajo 2008/09/27 19:49 以前にいた病院では毎月会議をして、どこの科がたくさん切られてるとか、書き方をもっとああしろこうしろとか、これは頑張れるはずだから再請求してみようとか検討してましたね〜。
もう救急は凄まじい切られかたでした。
添付文書に書かれてる量の何倍もの薬をいっぺんに使うのですから。
開胸心マに文句がついてたのは驚きでした。(さすがにいきなり切られたんじゃなくてほんとに必要だったか?って聞かれただけのようでしたが。
いや、やらなくていい症例なら誰もそこまでやらないってって思っちゃいました。

numachinomajonumachinomajo 2008/09/27 19:58 あと混合診療ですが、歯科口腔外科領域で今まで保険で認められてた薬が保険適用外になってたので驚いた経験が。
これまで未承認のお薬を使いたいから混合診療になるので全部自費とか言うのはもちろん判ってましたが、今まで使ってて有効性がある薬だけど今年から保険適用からはずされたのでこれを使う場合には自費で〜す......って変だな〜などと。
なぜ有効で臨床サイドでは使いたい、しかも使われてた薬をはずす?
混合診療が解禁になったら、今まで承認されてた薬をどんどん保険からはずして行くと医療費削減??

寂しい一言寂しい一言 2008/09/27 20:39 >医師以外の方が思い浮かべているのではかなり違います

支払基金・国保に泣かされてるのは医師だけじゃないです…
薬局薬剤師や医療事務さんも大変なんですよ。
トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20080927
2008-09-26 八鹿病院の戦術CommentsAdd Starby-stander

9/25付中日新聞より、

医療をまもる 総合診療  専門超え急病に対応

 「総合診療科」のドアを開けると、広い待合室。看護師が長いすの横に腰を落として、初診の患者に症状を詳しく聞いている。受け付けカウンターの中では、問診した内容を電子カルテへ入力する看護師たち。数少ない医師の事務作業を減らすために、看護師の守備範囲は広い。

 兵庫県養父(やぶ)市の公立八鹿(ようか)病院が、新病院建設に際して一昨年からスタートさせた総合診療科。長年のチーム医療の取り組みを基に、医師不足の中で効率よく医療を進めていくノウハウが、随所に見られる。

 同病院は診療所などからの紹介患者を予約制で診療しているが、総合診療科は急病患者などの受け皿。研修医を含めた内科医十一人全員で、専門の枠を超えて患者を診る。消化器が専門の医師が脳出血の患者を診ることもあるし、医師の人手が足りない外科系の初診も手がける。受診の順番は「急を要する人が先」。救急も同科の担当だ。

 片山覚副院長(53)は「大きな病院なら、循環器、消化器、呼吸器などのそれぞれに初診担当を置けるが、田舎にはそんな数はいない。当直もばらばらにやっていては大変。だからまとめてやろうよ、という発想です」と説明する。

 養父市は高齢化率30%を超える過疎の町。地域の中核病院である八鹿病院も、四百二十床、十九診療科を持ちながら、医師数は長年五十人前後で推移し、慢性的に不足状態だった。現在は四十人に落ち込んでいる。

 「もともと医師は大学を出て病院に行けば、なんでも扱うのが当たり前だったのに、専門分化が進んでそれがやりにくくなった。全体の80−90%は総合診療医で対応できます。専門医につなぐかどうかを適切に判断することも大切な能力」と片山副院長。

 「専門外だから」と尻込みすることなく、救急搬送はすべて受ける。病棟も、専門科別に分けず、当番医が看護師や薬剤師、リハビリのスタッフと一緒に回診して、入院患者の情報を共有する。内科医の木谷茜さん(28)は「他の病院で研修医だったころは指導医がついていて、自分の判断をしては駄目って雰囲気だったけれど、ここでは専門外で苦手とか言ってられない。本当に勉強になります」と話す。

 同病院は訪問看護の取り組みでも知られ、年間約二万件以上と「おそらく全国でもトップクラス」(水間忠広報係長)。総合診療科と連携する地域医療科のソーシャルワーカーや事務職員が中心となって、常に満床に近い状態のベッドをやりくりし、患者のリハビリや早期退院、在宅医療への流れを統括する。新病院建設に際しては、総合診療科内に感染症専用の待合室を別に設け、インフルエンザ流行期などの患者間での感染を防ぐ試みも取り入れた(概略図参照)。

 とはいえ、医療崩壊の現状は深刻。二十年以上も黒字経営を続けてきた同病院も、予想以上の勤務医離れや新病院建設費用の負担もあって、昨年は約五億円の赤字を計上した。地域医療の魅力をPRし、若い医師の関心を呼びたいという。

 四十年以上にわたって勤務し、職員の精神的支柱になっている谷尚名誉院長(80)は「医師が専門分化するから第一線の病院と患者さんのトラブルも多くなる。大学でも、専門医だけでなく総合診療医の養成にもっと力を入れてほしい」と話す。同病院の取り組みが刺激となり、養父市など兵庫県北部の但馬(たじま)地域では、八つの公立病院すべてに総合診療科を設置する計画が進んでいる。 (安藤明夫)

総合診療科礼賛と言うより総合医礼賛記事と受け取った方が良さそうな内容です。でもって絶賛されているシステムを検証してみます。

同病院は診療所などからの紹介患者を予約制で診療しているが

とりあえず専門科への紹介状を持つ患者への総合診療科の出番はないと考えて良さそうです。総合診療科のテリトリーは

総合診療科は急病患者などの受け皿

これだけでは漠然としすぎているのですが、公立八鹿の診察案内を見てみます。


診療科 月 火 水 木 金
総合診療科 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
総合内科 △ △ △ △ △
循環器内科
呼吸器内科
消化器内科
脳神経内科 ○ ○ ○ ○ ○
胃腸科 ○ ○ ○ ○ ○
小児科 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
外科 ○ ○ ○ ○ ○
緩和ケア科 ○ ○ ○ ○ ○
整形外科 ※ ※ ※ ※ ※
脳神経外科 - ※ ※ ※ -
皮膚科 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
泌尿器科 ○ ○ ○ ○ ○
産婦人科 ○ ○ ○ ○ ○
眼科 ○ ○ ○ ○ ○
耳鼻咽喉科 ○ ○ ○ ○ ○
ペインクリニック - ○ - - ○
放射線科 ○ ○ ○ ○ ○
精神神経科 - - - ※ -
歯科 ○ ○ ○ ○ ○

◎…予約なしで受診可能です

△…総合診療科で受診可能です 

○…予約優先です

※…各科にお問い合わせください


・予約なしで受診された場合、希望される診療科で診療できない場合もあります。

・「◎」で表示の場合でも、予約状況等により診療できない場合もあります。


あくまでも診療案内から見る限りですが総合診療科のテリトリーは、

1. 専門科への紹介状がある者は診ない
2. 小児科と皮膚科、とくに小児科の患者は診ない
3. 1.と2.を除いたすべての急病の初診患者

小児科・皮膚科は黄色で強調しておきましたが、総合診療科と同様に予約なしで受診できるため「迷って」総合診療科を受診する人以外は無いだろうと考えます。とくに小児科と総合診療科の受診を迷う患者は少ないと思われますから皆無に近いかと考えられます。それと診療案内を見ればお分かりの通り、ほとんどの診療科が予約優先で診療を行っています。ですから対象となるのは予約できない急病による初診患者が主なテリトリーと考えて良さそうです。

初診後の再診は総合診療科で診察する事もあるでしょうし、各専門科に割り振られると考えます。とくにある水準以上の疾患であれば、衰えたとは言えこれだけの専門科があるのですから、速やかに割り振っていくのが主な業務であると考えても良いかもしれません。専門科があるのにわざわざ総合診療科で診療を続ける必然性はないというところです。そうなると業務としては当然の事ですが、

消化器が専門の医師が脳出血の患者を診ることもあるし、医師の人手が足りない外科系の初診も手がける。

何かすごい事をしているように書いてありますが、普通のお仕事です。どう普通かと言えば時間外の救急診療では当たり前の事として全国で連日連夜行なわれています。そこでは「消化器が専門の医師が脳出血の患者を診る」レベルではなく「精神科が専門の医師が脳出血の患者を診る」レベルも珍しいとは言えません。そんな事は公立八鹿よりまだ充実している公立豊岡でも行なわれていますし、他でも数え切れないくらい救急病院で行なわれています。

救急外来より恵まれているのは日勤中なので迷えばいつでも専門科の応援が可能な事です。こういうお仕事は外科系も見るという点を除けば大病院でも一般内科というシステムで運用しているかと思います。ただ公立八鹿では外科系医師の不足が著しいらしく、一般内科だけではなく外科系の初診の一部を診るようなので一般内科ではなく総合診療科の看板にしていると考えます。

総合診療科に属する医師は

研修医を含めた内科医十一人全員

内科の医師が全員所属しているのであれば、これも当たり前ですが、

救急も同科の担当

ちなみに公立八鹿の各診療科・各部のご案内には総合診療科は存在しないので、総合診療科が救急の担当と言うより、総合診療科の医師が内科医だから当直があたり救急業務に自然に従事すると考えた方が良いと思います。

片山覚副院長(53)は「大きな病院なら、循環器、消化器、呼吸器などのそれぞれに初診担当を置けるが、田舎にはそんな数はいない。当直もばらばらにやっていては大変。だからまとめてやろうよ、という発想です」と説明する。

これもなかなか意味深な発言です。どうもなんですが従来は当直も「循環器、消化器、呼吸器」てな感じで置いていた時期があるようです。しかし医師数が減って維持できなくなったので内科当直という事で一本化したものと考えます。実際はどんな当直体制か知る由もありませんが、研修医を入れて11人しかいませんから、3人も当直を置けば負担はかなりのものになります。

批判的に書いているように受け取る方もおられるかもしれませんが、この取組み自体は全面否定はしていません。戦力減のカバーを戦術で補おうの方針だからです。戦力の低下はどの程度かといえば、

医師数は長年五十人前後で推移し、慢性的に不足状態だった。現在は四十人に落ち込んでいる。

これも補足しておけば2004年4月で49人、2006年4月で45人ですから、2006年から2年でさらにまた5人減っている事になります。わずか4年間で9人も減ってますから非常に厳しい状態で、病院の戦術方針として現有戦力のレベルアップを考えているのだと思っています。レベルアップとは個々の医師の専門分野以外の技量のレベルアップと考えています。

個々の医師にはそれぞれ専門分野がありますが、専門分野だけでは実際の診療は出来ません。専門領域の周辺の他の専門分野と重なり合う部分の知識技量が不可欠なものです。これを病院内での専門の垣根を出来るだけ取り払う事により、他の専門分野の専門家との交流を容易にし、その事により周辺知識の厚みを増し、お互いにカバーできる領域を増やそうの考えと私は受け取っています。

これを行なうには強いリーダーシップが必要ですし、そうする事によりお互いがラクできるメリットが必要です。もちろんですがこの戦術に協力せざるを得ない環境が不可欠です。書くだけならたやすそうですが、利害の異なる専門家をまとめあげるには多大な努力を費やしていると考えられます。

ただしなんですが全面否定はしていませんが、全面肯定もしていません。「実は」と強調するほどの事ではありませんが、メジャー科の医師である分野の専門家レベルであれば、周辺知識のレベルアップはさしての難事ではありません。もちろん求めるレベルによりますが、実戦的に有用なレベル程度なら、環境さえ整備されれば習得は容易です。もちろん他の分野の専門レベルと同等の能力まで求めると目の眩むような話ですが、有用な補助戦力程度なら短期間で養成できます。

一つの専門分野の一人前の医師と言うのはそれぐらいの基礎知識と経験はもっているという事です。医療において専門家になるというのは、専門領域のポールを登りつめる事ではありません。専門家の高みがあるだけではなく富士山のように広い裾野を同時にもっているという事です。広大な裾野があるからこそ、裾野を少し持ち上げれば容易に補助戦力程度にすぐに達するという事です。

しかし研修医は別です。研修医の出発点は極論すればゼロです。そこから一人前への長い階段を登っていくのですが、こういう状態で「総合医」と称して養成すればどうなるかです。どれだけ研修しても各専門分野の裾野レベルで終始し、その程度の医師しか育ちません。下手すると私が内科を診るより全体として低いレベルになる可能性も十分あります。こういうシステムはまずある領域の専門分野に達したものが裾野のレベルアップに使うのには有効ですが、研修医にはかえって害のあるシステムになると考えます。

最後に笑ったのは〆の部分です。

同病院の取り組みが刺激となり、養父市など兵庫県北部の但馬(たじま)地域では、八つの公立病院すべてに総合診療科を設置する計画が進んでいる。

但馬には9つの公立病院がありますが、どういう状態になっているかといえば、


病院名 2004.4 2006.4
豊岡 76 81
日高 14 9
出石 6 4
梁瀬 6 5
和田山 10 6
八鹿 49 45
村岡 4 4
香住 10 4
浜坂 10 5
合計 185 163

このうち公立八鹿が現在40人になっているのは上記しましたが、日高は7名に減っています。さらに但馬の医療確保対策協議会の計画が推進されていれば、出石、梁瀬、村岡の3病院は常勤医が3名になっているかもしれません。この程度の人数の病院ならば嫌でも総合診療科にならざるを得ないと考えるのは私だけでしょうか。公立八鹿や公立豊岡クラスなら診療科の垣根が出来るほどの医師数がいますが、その他の公立7病院では力瘤を入れて総合診療科の看板を上げることの意味合いが良く分かりません。

記事にもある片山覚副院長は大変な熱意を持ってこの総合診療科プロジェクトを推進しておられるようです。これはssd様が提供してくれた資料でもよく分かります。戦術としては非常事態に有用なところは評価しますが、あくまでも戦術の有効性だけです。但馬の医療の緊急の大課題は減少し続ける医師数に歯止めどころか拍車がかかり、これを押し留める戦略が存在しない事です。その減少数は既にデッドラインに達しています。ここで思い出される言葉としては、

戦術のミスは戦略でカバーできるが、戦略のミスは戦術ではカバーできない

言い古された言葉ですが、公立八鹿と言う局地戦ではある程度有効な戦術ですが、残念ながら戦局を転換する戦略にはなりえないと考えられます。まあ、現場が精一杯の戦術を駆使してなんとか支えているうちに戦略が有用に働き出すのが理想ですが、戦術を戦略のように賛美しているようでは見通しは明るくないと感じます。そして戦略は県レベルではどうしようもない状態です。
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SeisanSeisan 2008/09/26 08:17 この病院の「総合診療科」というのはほかの「内科専門外来」の医師と全く別に存在するのか、それとも、総合診療科の内科医師たちがそれぞれ自分の専門の外来をしているのか、たぶん後者だと思うのですが、どうなっているのでしょうね。

ところで、小児科ですが、小児の外傷はどこが見ているのでしょう。一般に小児科の場合「小児内科」であり、わたしも外傷関係は原則スルーしているもので。ちょっと疑問に感じました。

元外科医元外科医 2008/09/26 08:22 加古川では迅速にPCIしなければ云々の判決が出ているので、総合医では結局戦えなくなるのは自明ですね。マターリと見守ります。

暇人28号暇人28号 2008/09/26 08:41 管理人さまもおっしゃっていますが、医師以外の皆さまは、どれだけ総合医に期待をもっているのかよくわかりますね。しかし、現場の医師は総合医に対して否定的な意見が多いのをなんで理解しようとしないのだろう。医療制度の議論の時と一緒で、また「医師が身内をかばい合っている」云々なのでしょうか?

今までの医師は専門分野での診療に精通していたが故に総合医に転身してもうまくこなせていたのです。しかし、いきなり総合医を目指せって言っても、ねえ....何もかも中途半端で終わりそうな予感.....
 

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