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国家主義・右傾化に執着するメディア—露骨さ増す産経・読売の論調@【日本ジャーナリスト会議会員 桂 敬一】
http://www.asyura2.com/08/hihyo8/msg/218.html
投稿者 gataro 日時 2008 年 4 月 29 日 08:46:38: KbIx4LOvH6Ccw
 

http://www.masrescue9.jp/media/katsura/katsura.html から転載。

国家主義・右傾化に執着するメディア
     —しだいに露骨さ増す産経・読売の論調—(1)

日本ジャーナリスト会議会員  桂  敬 一

 映画「靖国」の上映妨害に対しては、、さすがに全メディア挙げて、けしからんとする論陣を張った。表現の自由の根幹に関わる出来事であり、右翼の妨害が上映館に対する攻撃にまで発展するようなことがあれば、とんでもないというわけだ。

自民党国会議員たちの騒ぎ、脅しの電話、街宣車の出動ぐらいでビビルなと、新聞は口を揃えて映画館を激励した。だが、待てよ、と私は思った。どこまで新聞はこれを我がこと、自分の報道・表現の自由にも関わる問題として受け止めているのか、いささか疑わしく感じたのだ。

いい例が産経新聞だ。4月2日の「主張」(他紙の社説と同じ)は、「論議あるからこそ見たい」と題し、「抗議電話くらいで上映を中止するというのは、あまりにも情けないではないか」と映画館側を叱咤する。

しかしその口で、自民党議連「伝統と創造の会」(会長・稲田朋美衆院議員)が「試写会を要求したのは、あくまで助成金の適否を検討するためで、税金の使い道を監視しなければならない国会議員として当然の行為である」「・・・政治的中立性が疑われる・・・不確かな写真を使った記録映画に、国民の税金が使われているとすれば問題である。文化庁には、助成金支出の適否について再検証を求めたい」というのだ。

おかしいではないか。「助成金支出の適否」が問題なら、一般公開された映画を世間の人がみたあとでも、十分にできる。いや議論の環境としては、そのほうがより望ましい。

そうした観点に立てば、事前に上映中止を招いた国会議員や右翼の行動をこそ、まず批判するのが筋だ。また、「支出の適否」も、わざわざ文化庁に検証させることではあるまい。映画をみた世間一般の人の声をこそ、聞くべきであろう。

そもそも、この時点になれば、産経関係者も誰かしら、この映画をみているはずだ。みた結果、どう思ったのか。助成金支出にふさわしくない映画だったのかどうか、紙面ではっきりいったほうがいい。不適だとしたら、なぜなのか、その判断理由もしっかり示してもらいたい。

◆一見もっともに聞こえる読売の「表現の自由」擁護論

 こうした産経の語り口、やり口のインチキさは、簡単に底が割れるが、一見いうことがもっともなので、いいこといっているじゃないか、と受け取れる効果を残しつつ、実は、自分のいいたいこと、及ぼしたい影響力をしっかり浸透、増殖させていくやり方も、最近メディアが採りだしているので、注意を要する。

同じ「靖国」上映中止に関して、読売は、社説(同じく4月2日)で、「『表現の自由』を守らねば」と題して、言論・表現の自由は「どのような政治的メッセージが含まれているにせよ、左右を問わず最大限に尊重されなければならない」と述べる。

しかし、事前試写を求めた「稲田議員も、『私たちの行動が表現の自由に対する制限でないことを明らかにするためにも、上映を中止していただきたくない』としている」と、事実上の上映妨害効果をもたらした稲田議員の行為にも、そこに含まれていた考え方にも、正当性はあるとする議論を立て、加えて「かつて、ジャーナリストの櫻井よしこさんの講演が、『慰安婦』についての発言を問題視する団体の要求で中止になった」と、いわば左からの圧力もけしからんものだった、とぬかりなく示唆するのだ。

しかし、国会議員を大量動員した妨害と右翼の電話・街宣車の脅迫による「靖国」上映中止と、神奈川・三浦商工会議所企画の新春経済講演会(1997年1月)の講師に櫻井氏を招くことが、社団法人神奈川人権センター(日高六郎理事長)の反対によって中止されたこととを同列に置くこの論法は、そもそも妥当なものであろうか。

 後者のケースは、当時、朝鮮人従軍慰安婦の強制連行はなかった、とする主張をさかんに繰り広げていた櫻井氏の言動を、人権センターが人権侵害につながる差別的なものだと批判、公的な場でそのような発言を行う人物を講師に招くことに反対したものだ。

それは商工会議所に申し入れを行っただけで、本人に来るなと電話攻撃で脅しをかけるとか、街宣車で大騒ぎしたとかいうようなものではない。櫻井氏は前年も、横浜市教育委員会主催の講演会で「強制連行はなかった」の発言を行い、人権センターが抗議していた。

人権センターとしては、表現の自由も無制限に許されるものではなく、人権を擁護する責任を伴い、差別などの人権侵害は許されない、とする考え方に立っていたが、それは道理ではないか。

当時においては、櫻井氏の言論・表現の自由は、テレビ・キャスターとして、週刊誌などへの寄稿者として、引っ張りだこの講演者として、人権センターの関係者よりはるかに大きなものを享受、行使していた。

そこで展開されている「強制連行はなかった」論に人権侵害を認め、抗議しようとする人権センター側の言論・表現の自由は、櫻井氏に比べたら実にささやかなものだった。

横浜市教委、三浦商工会議所への抗議・反対の申し入れは、辛うじて手にできる彼らの自由だったのだ。


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