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(回答先: そういうことは、ネットなんだから自分で探せばよいのでは? 一応引用出しておきます 三菱総合研究所 投稿者 hou 日時 2008 年 12 月 14 日 23:24:09)
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/ContentViewServlet?METAID=00509911&TYPE=HTML_FILE&POS=1&LANG=null
新聞記事文庫 欧州(22-076)
満州日日新聞 1936.9.27(昭和11)
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国内の不況進行し物価や生活費騰貴
フランス経済の難局
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ブルーム内閣成立後一時小康状態にあったフラン貨は最近またまた動揺の兆を示している。フランス政治財政の前途に対する懸念からフランに対する売り物が注がれているためで、フランスよりアメリカ向けに金現送が断続している八月七日以来の累計は四千万弗に達しフランス政府は事実上金本位を停止するに至った
ブルーム内閣の任務は先ず国内財政経済の危機を打開するにあった。新議会は六月五日開会、八月十三日に夏期休会に入ったが、この間成立した法案は財政法案五、政治社会法案二〇、経済法案十六軍事法案六、行政法案六、その他八、合計六十一に上る。その内ブルーム内閣が財政経済立直しのために採用した改革案として重要視さるべきものを揚げると次の通りである
一、 新労働、社会立法
二、フランス銀行の大蔵省証券割引再開、同証券発行銀行限度を二百億フランに拡張、フランス銀行の組織改革
三、軍需工業国有化
四、商工業、輸出業、船舶業に対する各種の補助救済
五、大規模の救済公共土木事業、三年間に二百億フランを現金及び中長期債の形式で支出して、乾拓、農村電化、公共建築などを行う
六、穀物統制局の設置、これにより穀物価格の公定、生産者に対する最低価格の保証、穀物売買の実質的な独占が実現される
ブルーム内閣の財政経済政策の実効について云々するのは勿論早計に失する。しかし今日までの所財政経済の危機打開については未だ見るべき成果はあがっていない政府は金融危機に対処する緊急策として取り敢ず国外逃避資金防止令を定め、またべビー・ボンドを発行して退蔵資金の動員と国庫の資金補充を計った。しかしこれらの緊急策は何れも香しい成績を示してをらぬ。
のみならず新らしい財政経済政策の実施には多くの困難が予想される。新労働法の成立に伴う生産費の増加は商工業の苦境に拍車をかける。政府はこれが救済のため商工業の補助或は輸出貿易の振興に努めているが、これは逆に生活費の騰貴となって新労働法の効果を殺ぐ傾きを持つ。また各種の補助政策、公共事業の実施、国家統制力の強化につれ財政上の負担は益々加わるものと見ねばならぬ。更にスペイン内乱を繞る欧洲政局の紛糾は人民戦線の内閣を重大な難局に立たし、これは一方軍備充実の形で財政の困窮を倍加するのである。
人民戦線の勝利と共に、労働者は政府が自分らの生活条件改善に努めることを期待し、政府はまたこの要求に応へて新らしい労働関係の確立に努力せねばならぬ立場にあったのである。
六月七日に調印された所謂“マティニョン協定"は賃銀労働者に対し次の如き利益を確保した
一、平均一割五分の賃銀増額
二、労働組合主義の絶対的承認
三、集団的契約制の全般的確立
四、工場代表の任命
続いて有給休暇、一週四十時間労働、義務教育の十四歳まで延長などが立法化され、また全国失業保険法案が提出された。
新労働法によって労働不安は確に著しく緩和された。しかし国内経済の不況進行に伴い失業者は実質的には増加しつつある。また財政経済政策の実施は各種の物価騰貴抑制策の採用にも拘らず物価及び生活費の騰貴を招いている。政府は大規模の土木事業を目論見ているが、これが労働者に充分な利益を保証せぬようなことになれば、冬季の接近と共に再び労働不安が醸成されぬとは断言出来ない
商工業の補助救済
新労働法の制定に伴う賃銀及び社会政策的費用の一般的増加、労働時間の短縮などは何れも生産費の増加を招く。一部専門家はその増加率は二割程度にも達するという。不況に沈淪している商工業にとって生産費の増加は頗る大きな打撃を与える。殊に中小商工業者において甚だしい。
そこで政府は中小商工業を中心にこれが救済に乗出し、商工業者に対する資金融通、中小商工業者に対する債務支払猶予などの実施を見た。商工業者に対する資金の融通は政府の保証によりフランス銀行を通じて行われる。その限度は三十八億フランと定められたが補助は新労働法の実施に基く負担増加額を超えてはならぬこととなっている。資金融通の方法は地方融資委員会が先ず金額を定め、フランス銀行は委員会に対し所要の資金融通を許可する。商工業者は期限三ヶ月、利率三分五厘(輸出商社に対してはもっと低利)の融通手形に署名し、こを庶民銀行で割引して貯え、庶民銀行は更にフランス銀行に就いて再割引を受けるのである。
しかし甚だしい苦境に喘いでいる中小商工業者にとっては低利資金の融通だけでは充分でない。政府は緊急の救済策として家賃その他営業関係の債務支払を十二月一日まで猶余することとした。それまでに中小商工業者の債務整理につき何とか恒久的な政策の実現を計ると言うわけである。
生産費の増加はたださえ不振の輸出産業に重圧を加へつつある。珠に国内産物の価格指数の騰貴が一層著しくこれは輸出産業を不利な立場に置くこととなる。政府としては輸出業補助に努めねばならない。ブルーム内閣は先ず輸出保証制度の拡大や凍結輸出債権の流動化などを成立せしめた。
従来の輸出保証制度によると政府の保証限度は年額十億フランとなっていたが、これだけでは到底充分は保証を行う訳にゆかないので、保証限度を倍額の二十億フランに増加した。また輸出保証制の適用範囲も著しく拡大された。
財政の負担加重
新労働法の制定、中小商工業及び輸出業者に対する補助などはブルーム内闊の財政経済政策の一部に過ぎない。「生活費を騰貴させずに国民の購買力を増し、経済界の活況回復を計る」という財政経済政策を矛盾なく遂行するためには、今後経済界に対する補助、統制の手を益々拡げねばならない。これらの広汎なる政策が遂行されるに伴れ困窮せるフランスの財政がその窮乏の度を増すのは頗る明瞭なことである。試みに今後予定されている国庫の負担増加を窺って見ても次の如き巨額に達する。
[図表あり 省略]
政府は財政の危機をどんなにして切り抜けるだろうか。蔵相ヴァンサン・オーリオル氏は「財政経済の危機打開は国民間に退蔵されている資金を動員し、これを最も有効に利用するだけで充分出来ることだ」との見解を洩らしているが、財政経済の危機は左様に簡単に解決出来ぬ。既に退蔵資金の動員そのものが容易に行はれない。政府はフランス銀行改組の結果に期待しているが、資金の動員には政治、財政、経済に対する国民の確信回復が是非とも必要だ。夏期休会中の議会は十月には再開する予定で、それまでにはブルーム内閣はもっとハッキリした積極的な立場を明示しなければならぬ破目にある。