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(回答先: 【ゴイム帝王ロスチャイルドはイラク国家財政を支配した】 米国による占領がもたらしたイラク経済の崩壊 【janjan】 投稿者 愚民党 日時 2008 年 11 月 11 日 20:22:02)
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2008.09.26 アフガニスタンで今冬900万人が飢餓の恐れ
―オバマ氏のアフガン戦略に問題はないか―
伊藤力司 (ジャーナリスト)
旧ソ連軍の侵攻以来30年にわたって戦乱が続いているアフガニスタン。10年来の干魃続きなどで食料自給率が約60%に落ちた上に、世界的な穀物価格の高騰で食糧不足が深刻化している中で、今冬は記録的大寒波が予想されるため大量の餓死者が出る恐れがあるという。昨年から今年にかけての冬も厳しい寒波に見舞われ、1100人以上の死亡が確認されている。この国で長年人道援助を続けている英国のNGO(非政府組織)オクスファム(Oxfam)は、冬までに国連が世界に要請している緊急食料援助が届かなければ、アフガン人口の4分の1に当たる900万人が飢餓に見舞われると警告している。
2001年9月11日の米中枢同時多発テロ事件直後、米軍がアフガニスタンに本格介入してイスラム原理主義集団タリバンを政権の座から追放した。2004年10月には民主的な選挙で選ばれたカルザイ大統領が就任、200億ドルに上る復興援助を約束した国際社会の支援の下で新政権が発足した。しかし軍閥を寄せ集めたカルザイ政権の内実は汚職にまみれ、末端民衆に国土復興の恵みが及ばない状態が続いた。国土の東部から南部に広がる旧来の根拠地に散ったタリバンは、カルザイ政権の人気が落ちたのに乗じて勢力を挽回、2006年から武力反乱を再開した。ブッシュ政権はNATO(北大西洋条約機構)に働きかけて、欧州各国からも派遣された国際治安支援軍(ISAF)がアフガン各地に展開しているが、タリバンの攻勢は07年から08年にかけてますます活発になり、治安は悪化の一途を辿っている。
8月末、アフガニスタン東部の農村に4年前から住み込んで農業支援に当たっていた「ペシャワール会」の伊藤和也さん(31)が、拉致され殺害された事件はこの国の抱える矛盾の厳しさを何よりも物語っている。「ペシャワール会」は、1984年からアフガン人向けの医療支援活動を続けている、福岡出身の中村哲医師(62)の活動を支えるNGO。中村医師は当初、アフガン難民が逃れてきたパキスタン南西部のペシャワールで医療活動を始めたが、現地で人助けしなければとアフガン東部の農村に診療所を設けた。そこで見たのは、食料や水の不足で、多数のアフガンの子どもたちがが命を失う現実だった。ここで「ペシャワール会」の活動は医療だけでなく、きれいな水を確保するための井戸掘りや現地に古くからある地下水の水路カレーズの修復工事、さらには干魃から農民を救うために大型の水路開設工事まで手掛けるようになった。
伊藤和也さんが現地に住み込んで農業指導ををしていたのは、この国の最大の問題である食料不足を解決する手助けをしたいと願ったからだった。それはまさに中村医師の育てた「ペシャワール会」の志に合致するものだった。伊藤さんらの農業支援活動は現地農民に歓迎され、現地の言葉パシュトゥー語で話かける伊藤さんは農民に愛され、信頼されていたという。欧米からのの支援ワーカーはたいてい武装護衛者付きで活動するが、「ペシャワール会」のワーカーは丸腰だった。このように、住民を信頼し住民に信頼されていた丸腰の伊藤さんが今回犠牲になったことは、アフガンの治安全般がいかに悪化しているかを見せつける出来事だった。
これまでに報じられた情報によれば、伊藤さんを拉致したグループはタリバンではなくヒズブ・イスラミ(イスラム党)のメンバーだったという。ヒズブ・イスラミとは、ソ連軍と戦ったムジャヒディン(イスラム戦士団)各派のひとつで、指導者のグルブッディン・ヘクマティアルは、1989年のソ連軍撤退後カブールに成立した連立政府の首相だった人物だ。ヘクマティアルは1998年にタリバンが全土掌握した頃から国外に亡命していたが、タリバン政権崩壊後は帰国してヒズブ・イスラミの活動を再開させていたという。
アフガン情報筋によると、タリバンとヒズブ・イスラミは米国に支えられたカルザイ政権打倒を共通の目標に掲げ、共闘関係にあるという。両者ともアフガニスタンとパキスタンの国境沿いに古くから住むパシュトゥン人部族集団を基盤にしているが、ヒズブ・イスラミはアフガニスタン東部、タリバンは南部を主な活動領域にしているようだ。伊藤さんが拉致されたのは東部ジャララバード付近であり、ヒズブ・イスラミの活動範囲である。
伊藤さんの拉致・殺害事件の犯人として逮捕された二人の男は「アフガンの治安悪化を印象づけて外国人を追い出したかった」と供述している。さらにタリバンは、伊藤さんの遺体発見後「われわれは、すべての外国人がアフガニスタンから出国するまで殺害を続ける」との声明を発表した。今年1月から9月までにアフガン全土で、伊藤さんを含めて外国人支援ワーカー17人が殺害されている。これは、食料支援をはじめ外国からの支援が特に必要なこの時点で、何とも重たい数字である。
アフガニスタン南部の中心都市カンダハルはもともとタリバンの本拠地だったが、カンダハルに対する最近のタリバンの攻撃はすさまじい。今年2月17日、カンダハルで祭のために数百人が集まった広場で自爆テロが行われ、80人が死亡した。政府治安当局によると、タリバンが対立する武装勢力のリーダーの殺害を狙って起こした犯行だという。さらにタリバンは6月13日夜、カンダハルの刑務所を襲い、ロケット弾と自爆攻撃で刑務所警備部隊を制圧し、タリバン兵400人を含む入所者890人を脱走させた。タリバン当局は、このニュースを首都カブールの外国報道陣に伝えてきた。また9月7日には白昼、カンダハルの警察本部に進入した二人の男が相次いで自爆、警察本部の建物が半壊し、警官8人が死亡、30人以上が負傷した。この事件についてもタリバンは犯行を認める声明を発表した。
昨年年7月韓国のキリスト教会関係者23人がタリバンに拉致されて人質になり、うち2人が殺害された事件があった。この頃からカブールに支局を設ける外国報道陣に、電話連絡によるタリバンの広報活動が活発になった。このような形でのタリバン発表によれば、タリバンの根拠地とされる東部、南部だけでなくアフガニスタンのほぼ全域でタリバン武力攻撃が広がっている。米軍とNATO軍は合わせて7万1000人をアフガンに配備して、タリバンなど反政府武装勢力に対しているが、苦戦は免れていない。2001年以来アフガン米軍の死者は500人を超えたが、とりわけ今年は1月から9月までに117人と、これまで7年間の最高を数えている。
ブッシュ大統領は、自分の任期が切れる来年1月までにさらに米軍4500人をアフガニスタンに追加配備すると発表した。来年1月以降、米軍の最高司令官になるのは民主党のバラク・オバマ大統領候補か共和党のジョン・マケイン候補のいずれかである。ご承知のように両候補は多くの政策で対立しているが、アフガニスタンに米軍を増派すべきだという点では一致している。だから11月の米大統領選挙でどちら勝っても、来年以降は米戦闘部隊がアフガニスタンに増派される見通しだ。
オバマ氏は当選すれば、イラク駐留の米戦闘部隊を就任後16カ月以内に(2010年5月までに)撤退させることを公約している。その一方、アフガニスタンには米軍を本格的に増派し、短期間でタリバンやアルカイダなど反米テロ勢力を撃滅するのだと勇ましい。オバマ氏にとってイラク戦争は「正しくない戦争」である。上院議員として当初からイラク戦争に反対したことが彼の誇りであり、民主党大統領候補指名争いで勝った勝因のひとつである。しかし「9・11テロ事件」の主謀者ウサマ・ビンラディンらアルカイダをかくまったタリバンはテロ集団であり、撃滅すべきアメリカの敵である。こうした論理からオバマ氏は、イラクは早期撤兵、その余力でアフガニスタンに増派して一気に勝利を収めるのだと主張する。最近の世論調査では、米軍をアフガンに増派すべきだとのオバマ氏の主張を支持する米国市民は約60%に上っている。
一方のマケイン氏は、イラク戦争は正しい戦争であり、勝利の日まで米軍をイラクから撤退させるべきでないという立場を変えていない。つまりブッシュ戦略を全面的に支持してきたし、大統領に当選すればブッシュ政権がイラクでやり残したことを貫徹するというのだ。今では3割程度の支持率しかないブッシュ・イラク戦略を引き継ごうというのだから、オバマ陣営から「マケイン政権は第3期ブッシュ政権になる」との攻撃を浴びるのも当然だ。しかしベトナム戦争で北爆作戦のパイロットとして捕虜になり、5年余の幽閉・拷問に耐えたという軍歴で「アメリカのヒーロー」となった以上、マケイン氏はイラクも勝利まで戦うと言わざるを得ないのだろう。
あくまで勝利を目指してイラクで戦い続け、さらにアフガンにも増派するというマケイン氏は、ドル万能時代の米国大統領・米軍最高司令官にふさわしく見えるかもしれない。しかしサブプライム危機の表面化以来、米金融市場がとめどもなく崩壊していく現場に居合わせる今のアメリカ市民にとって、マケイン氏は今後米軍事力を盲信するピエロに映るかもしれない。膨張に膨張を重ねた「ブッシュ反テロ戦争」のイラクとアフガニスタンでの軍事費支出は、今日のドル失権を招いた米国の財政破綻を招いた主犯格である。
さてアフガン戦争を「正しい戦争」として米軍増派を公約するオバマ氏に問題はないか。1970年代末期、つまり旧ソ連軍がアフガン侵攻を始めた当時、カーター米大統領の安全保障担当補佐官を務めたブレジンスキー氏は、現在オバマ氏の安全保障アドバイザーのひとりだが、オバマ氏のアフガン増派論には「問題あり」と公言している。ブレジンスキー氏によれば、古典的イスラムの伝統と中世そのままの部族の掟が支配しているアフガン社会、とりわけパシュトゥン社会を基盤とするタリバン=ムジャヒディン(イスラム聖戦士)は恐るべき存在である。
それは10万人以上の旧ソ連軍が10年もの間、最新兵器を駆使して戦っても勝てなかった相手である。それはまた、18世紀から19世紀にかけて中央アジアの覇権を争った大英帝国と帝政ロシアの「グレートウォー」(Great War)の渦中で、英軍、露軍を散々悩まし続けたムジャヒディンの歴史である。彼らは強固なイスラム信仰に加え、地の利に通じたゲリラ兵士であり、また外敵に屈することを最大の恥とする掟のパシュトゥン人集団である。彼らはまた、19世紀末現在のパキスタン領を含むインド帝国に君臨した英国植民地当局が勝手に引いた「デューランド・ライン」という境界線、つまり今日のアフガニスタン・パキスタン国境を無視して、相互に自由に移動するパシュトゥン人である。
今日タリバン(イスラム神学生集団)と呼ばれ、いったん失ったアフガニスタンの権力奪回を目指して米・NATO連合軍を悩ましている軍事集団は、この国の歴史と風土に根ざした戦闘集団である。結婚式に向かうアフガン人の列を誤爆するなど、アフガン民衆の反米感情を募らせている米国の無人偵察機、プレデター(Predeter)などの近代兵器を駆使する米・NATO連合軍に勝機はあるだろうか。ブレジンスキー氏やかつてアフガン人に苦しめられた英国の専門家は、勝機なしと判断している。それでも来年以降、オバマ氏あるいはマケイン氏はアフガニスタンを、反テロ戦争の主戦場として米軍増派を続けるのではあるまいか。
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