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【米経済コラム】あきらめたボーナスを取り戻すために−M・ルイス
11月10日(ブルームバーグ):米ウォール街の人々がもう高額報酬をもらえなくなるとやっとあきらめがつくには、しばらく時間がかかるかもしれない。当面は納税者のお金をなで回しながら、ボーナスは納税者の金ではないなどと強弁して、金融機関は民衆を欺けると信じ込んでいるようにも見える。
米シティグループの広報担当者は最近、ブルームバーグ・ニュースに対し、「司法長官の求めに適切に応じ、2008年のボーナス原資に関する情報を開示しており、問題債権購入計画(TARP)の資金を賞与には流用していないことを確認した」と述べた。しかし、われわれが報じたように、この広報担当者は「詳細を明らかにしなかった」。
広報担当者が詳細を明らかにしようとすれば、次のように言えばいいだろう。「われわれが得た納税者のお金250億ドルが、08年の幹部向け報酬として予定されている260億ドルとは無関係であることを検証している。だがこれは、なかなか難しい問題だ。考えてみれば、お金に色はついておらず、同じお金だからだ」と。悲しいことに一般人は、いかなるごまかしも見透かしている。「あの金ではなく、この金で」とか「現金ではなく、株式で」とか「株式ではなく、オプションで」とか、いろいろ言い訳しても誰もだまされないだろう。
隠し切れない
一般人が賢くなってきたという事実は、国際製鋼所工員組合(USW)のレオ・ジェラルド委員長がポールソン米財務長官にあてた書簡からも読み取れる。「米国そして世界全体に過去75年間で最も深刻な危機をもたらした金融機関に対し、納税者のお金3500億ドルを使って報奨金を与えようとしているかのようだ。過去9カ月間で76万人もの職が失われたというのに」。極めて多くの人が多くのことをよく知っている。ウォール街の人々の報酬は根本的に見直さなければならないのだ。
もし、あなたがウォール街の大金融機関に勤務し、何らしかのボーナスが出ないものかと祈っているような1人だとしたら、考え方を改める必要があると既に気がついたかもしれない。例えば、自分の会社のために利益を上げる方法を考えようとしても無駄だ。米議会がゴールドマン・サックス・グループにボーナス支給を認めなければ、あなたがどんなにゴールドマンに利益をもたらそうと、無意味だからだ。
金融機関は公的資金を受け入れた瞬間から、自身の経営権を失ったのだ。経営権を取り戻すには、我慢とチームワーク、そして次の芸術的な5段階からなる行動計画が必要になる。すなわち、
ステップ1:すべての物的野心の放棄を宣言せよ。
どのみちお金をもらえなくなるのなら、失う物もなくなるだろう。最高経営責任者(CEO)が公の場で「納税者のお金を頂いている限り、ボーナスは支給しないし、政府が追加的に公的資金を提供しようとしても、われわれはお断りする」などと熱弁をふるう場面があるとしたら、すぐそのそばに立ち、盛り上げている姿を、主要なケーブルニュースに撮ってもらうことだ。
ステップ2:何もせず、何も言わない。ただ待て。
最初のうちは、朝食をできるだけ腹に詰め込んでから、ハンストを宣言したような人とみなされるだろう。やがてやせ細っていくと、誰もがあなたは命を危険にさらしていると考えるようになる。ボーナス無支給という状態が長く続けば、ある日、人々はあなたの健康を心配するようになるだろう。
ステップ3:できるだけ会社に利益をもたらすな。
大方のトレーダーにとって、これはそんなに難しいことではないだろう。こんなふうに考えてみてはどうか。かつて問題となったのは、妻を失わずにできるだけ多くの金を稼ぐ方法だったが、新しく問題となるのは、職を失わずにできるだけぶらぶら過ごすことだと。
ステップ4:金への高潔な無関心を他人にも強いろ。
株主は配当を期待するようになる。何と強欲なことか。世界経済が必要としているのは資本を蓄えた銀行であって、配当を支払う銀行ではない。まず自分自身から受け取り配当をなくすことだ。すると、株価は急落するだろう。普通の銀行にとって通常であれば問題になるが、今は普通の銀行もなければ通常の時でもない。米政府が所有権を増している銀行であり、ウォール街のアナリストが株式購入を推奨するような銀行ではない。ただ、同時に何百億ドルもの公的資金が入っているだけに、倒れることもない。
テーブルがセットされるのに長くはかかるまい。3年間という猶予を与えよう。株価は1けた台まで落ち込み、財務省はますます株式の保有比率を増すことだろう。そして、その時こそが最終ステップに入るときだ。
ステップ5:とどめはこれだ。
あなたの会社のCEOが自社のパフォーマンスを監視している財務省のもとを訪れ、半年に一度の報告をするときが来た。CEOは事業規模は小さくなり、もはや利益も上げられない状態になったが、苦難を乗り越えたわれわれは昔の会社を愛するようになったと話す。一方、政府がほとんど利益の出ないベンチャーに投資していても、納税者にとって株価上昇は期待できない。
そこで、あなたの投資の大半を融資に切り替え、それを使ってわれわれに御社を買収させてほしい。融資は時間をかけて返済する。ウォール街のトレーダーや銀行家が自社を保有したように、われわれが自分たちの銀行を保有できるようにしてほしい。この時点で、ようやくあなたは昔の自分に戻ったと感じるに違いない。(マイケル・ルイス)
(マイケル・ルイス氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。コラムの内容は同氏自身の見解です)
更新日時 : 2008/11/10 16:10 JST
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003001&sid=aJRjvpQVjHAk&refer=commentary