★阿修羅♪ > 国家破産59 > 508.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
株を買う個人、10月買越額は最高に−低下する労働分配に一矢(2)
11月7日(ブルームバーグ):個人投資家が株式投資に対する意欲を急激に強めている。日経平均株価は10月に過去最大の下落率を記録したものの、インターネット証券では口座開設や資料請求が急増。個人による10月の日本株買越額は、月間で過去最高となった。外国人に代わり、株式市場で個人の存在感が増している背景には、安値圏で動く従来通りの習性に加え、日本企業の労働分配率が低下し続ける中、伸びない給与を株主権利の取得で補おうとする個人の対抗意識も垣間見える。
ネット証券各社が6日に発表した10月の口座数では、SBI証券が前月に比べて2万3026口座増加し、楽天証券で1万3054口座増、松井証券は8834 口座増、カブドットコム証券は6412口座増とそれぞれ大きく伸びた。合併による特殊要因を除けば、増加数は2006年6月(2万3430口座)以来の高水準となったSBI証では、「歴史的な下げ相場が何度もあり、その度に請求件数が増えた。中長期で買いチャンスと判断する個人が多かったのではないか」(広報担当の緒方剛史氏)という。
増加数が06年5月以来の高水準となった楽天証券でも、「口座開設や資料請求が通常の2−3倍ペース。株式取引が初めてという個人が半分を占める」(広報担当の中原香緒里氏)。PBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業の増加など、株価の割安感を示す指標が増える中で、各社とも日経平均1万円を割り込むあたりから増加に拍車がかかったという。また楽天証では、日経平均が1日の上昇率として過去最大となった10月14日、投資信託の1日の購入額が1999年8月に投信の取り扱いを開始して以来、最高になった。
しんきんアセットマネジメント投信の山下智巳審議役は、「個人は説明責任がいらない上、リスクコントロールが自己完結でできる」と指摘。日経平均が7000円割れとなるような株価の急落場面で、「株式を買える主体は個人と年金しかない」と話した。
買越額は月間最高
個人が株式を買う動きは、東京証券取引所が発表する投資主体別売買動向(東証・大証・名証の1・2部合計)にも表れている。個人は9月第4週(22 −26日)から10月第5週(27−31日)まで6週連続で買い越し、この間の買越額は合計で1兆586億円に膨らんだ。
特に10月月間の買越額は9928億円に達し、これまで月間で過去最高の買い越しだったバブル経済崩壊後の90年3月(8841億円)を18年7カ月ぶりに上回った。個人は、売買代金に占めるシェアでも7月から9月までは月間ベースで20−21%程度だったが、10月はこれを上回る週が増え、第5週には 24.5%となった。
10月は日経平均が24%という過去最大の下落率を記録し、「『悪夢の10 月(ブラック・オクトーバー)』として、歴史に名を刻んだ」(メリルリンチ日本証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジスト)。世界的な金融危機や景気の悪化懸念から、外国人は10月に現物で1兆696億円、先物では8718億円を売り越した。個人は年金とともに、こうした猛烈な外国人売りを吸収する役目を果たしている。
大和総研の土屋貴裕ストラテジストによれば、「過去の個人の売買動向を見ると、週間や月間といった短期では逆張りスタンスだが、長期では順張りスタンスになる傾向がある」。これから株価が上昇する局面では、一時的に利益確定売りも予想されるが、「株式市場には個人からの資金流入が加速する可能性がある」と、土屋氏は予想している。
楽天証券が最近新しく口座を開設した個人の傾向を調べたところ、トヨタ自動車やソニーといった優良銘柄の買い付けが目立った。同証券の既存顧客は、新興企業の株式を買い付ける傾向が強いことから、最近の口座開設は「資産形成のために長期保有目的で株式を購入しているようだ」と広報担当の中原氏は分析している。
株式投資はリスク分散の手段
1990年代は、国民所得に対する労働者の取り分である労働分配率(雇用者報酬/国民所得)が上昇する半面、企業の株主資本利益率(ROE、税引前段階)は低下した。ただ、こうした動きは01年にピークを付け、その後は逆に労働分配率が低下する中でROEは上昇傾向にある。
バークレイズ・キャピタル証券の森田京平チーフエコノミストは、「90年代は企業が株主を犠牲にして労働者に利益を分配する構図で、個人が株主になる必要性は必ずしも強くなかった」と指摘。しかし、2000年代は逆に従業員を犠牲にし、株主を優遇する動きが強まる結果となっている。給料が増えない中では、従業員として労働を提供するだけでなく、株主として資本も提供する2本足の方が生活は安定しやすく、「日本の個人は戦後初めて、株主でないことのリスクに気づかされつつある」と、森田氏は言う。
90年は労働分配率が66.6%で、同年度のROEは18.1%だった。01年は労働分配率が74.4%、ROEは6.6%となり、06年では労働分配率が70.9%、ROEは11.4%となっている。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 長谷川 敏郎 Toshiro Hasegawa thasegawa6@bloomberg.net
更新日時 : 2008/11/07 15:57 JST
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003001&sid=afKTASslNivQ&refer=commentary