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為替市場は既に戦争モード
相場見通しは全く定まらず
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米国で同国史上最悪のテロ事件が発生したことで、世界経済が揺れている。その象徴といえそうなのが為替相場だ。毎日、乱高下を繰り返し、方向性が全くない。このような状況にあって、在タイの為替関係者はどのような相場見通しを持っているのか。銀行の為替ディーラー、日系商社の財務担当者に話を聞いた。
テロが発生した翌日から米ドルが全通貨に対して売られた。米国は政治・経済とも世界最強国で、ドルが国際機軸通貨になっている。このため『有事のドル買い』と言われるが、今回は逆に米ドルが売られた。邦銀A行の為替ディーラーは「米国が有事の当事国になったことで一般論が通用しなかった。だがこれは湾岸戦争の時も同様だった」(邦銀A行)と話す。
このように為替市場では、これまでの常識では全く先行きが読めない状況にある。為替ディーラー、国際財務担当者の見方も人によって百八十度異なる。
今後、米軍がイスラム過激派タリバンの空爆を開始したり、第二のテロがあったりすると為替相場はどう動くか。邦銀A行と同様に、「その直後はショックでドルが売られるだろう」(邦銀B行)、「最初はドル安に動く。作戦が明らかでなく、戦果も上がらず米国への不安が出てくる」(E社)と言う意見がある一方で、「ドル相場はピンと跳ね上がり、数日か十日間はその相場が続くだろう」(C商社)、「ドル高に動く」(D商社)という見方もある。
為替市場で資金運用している商社では、有事の際にドルがどう動くか確信が持てないため「為替のバランスは持たず、売り買いをスクエアーにしておくようにしている。今は為替売買で収益を上げる時ではない」(C商社)、「運用上はスクエアーにしている。見通しを張らない」(E商社)というのが実情のようだ。
今月末の相場だけに注目すればドルの事情だけではなく、円の事情も考慮しなければならなくなる。バンコク銀行の為替ディーラーは「九月末は日本の企業にとって年度上半期決算日に当たる。このため海外から資産を引き上げる企業も出てくるだろう。そうなると円買い需要が発生し、円高圧力となる。このためバーツも円につられて上昇するだろう。一ドル=四四・五バーツくらいまで行くのではないか。その後は四四バーツ前後まで戻すだろう」と直近の相場を予測する。
一方、長期的な見通しとしてドル高・バーツ安と見ているのは邦銀B行のディーラーだ。 「タイも日本も米国も景気が悪いが、この中で自力で景気を回復する力があるのは米国だけだ。日銀も市場介入をしてドル相場を支えるだろう。このようなことから長期的に見れば米ドルが強い。ところがバーツについては弱くなる要素ばかりだ。このところ減少傾向にあった輸出は今回の事件でさらに落ち込むだろう。世界的な消費冷え込みでタイへの観光客も減少し、観光収入も伸び悩む。さらに中東のタイ人出稼ぎ労働者が帰ってくるため、海外からの送金が減少する」
D商社でも「長期的にはドル高だと思う。事態が広がれば有事のドル高に戻ってくる。米国市場から急激に資金を引き揚げたので、今は資金の行き場所がない状態だ。テロ後は米ドルが売られたが、次はそうはならないだろう。米ドルから引き上げた資金の逃避場所はやはり米ドルしかない。仮に第二のテロが起きたとしても、それによって他国も巻き込まれる。米国が中心になって結束していくしかない」とドルの底堅さを強調する。
来年以降のドル高を予想するのはバンコク銀行だ。「米国経済はテロやその報復の影響で今年の第4四半期に最悪となる。だが、マンハッタンの再開発などの特需が生まれるだろう。来年の第2四半期にその影響で国内総生産(GDP)が良くなるはずだ。タイ経済もその頃、回復を始めるのではないか」
米国が実施しようとしている空爆は、これまでの作戦とは相当に様相が異なりそうだ。この点で市場が米国への不安を高め、当面はドル安に動くと見ているのはE商社だ。
「アフガニスタンでは十一月には雪が降るので米国は十月初旬までに空爆すると思う。米国は空爆を湾岸戦争のようには大々的に行わないだろう。いつ、どこで始まったか分からないような展開になるのではないか。軍隊の投入もせいぜい一、二万人規模だ。時間と共に作戦行動が部分的に明らかになり、少しずつ全貌が見えてくる。テロ事件のようなショッキングなものではないだろう。最初は戦果も大して上がらない。このようなことからドルは年内は円、ユーロに対して安めに推移するだろう。バーツ相場は円、ユーロほどは強くはならないが、一ドル=四四バーツ台で推移するのではないか」
「来年になれば戦争に関する情報が増えて、作戦の全容が見えてくる。混沌から脱することで明るくなる。これで市場にも安心感が出てくる。米国消費も回復してくるだろう。ただ、来年は米国の金融機関の業績が悪化する。これまで融資してきたIT産業の低迷と、テロの影響で航空会社の経営が芳しくないためだ。ここでプラス、マイナスがゼロになる。米国経済は低迷しているので、トントンとなれば底入れといえる」(E商社)
ドル相場の先行きに関して最も悲観的なのはC商社だ。
「ドル相場の基調は全通貨に対して弱い。米国経済がこの半年で回復するのは難しい。このためバーツは円とユーロにつられて高めに推移するだろう。戦争特需があるかもしれないが、それが米国経済に及ぼす影響は限定的だ。米国経済は一般消費の占める割合が大きい。これが回復しないと経済も回復しない」
テロへの報復がどのような展開になるか。新たなテロがありえるのか。世界経済にどのような影響を与えるのか。為替市場はすでに戦争モードに入っている。
(水谷 昇 記者)
http://www.bangkokshuho.com/archive/2001/shuho/articles/977-3068/keizai1.htm