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新聞記事文庫 銀行(17-158)
時事新報 1928.6.21(昭和3)
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特融損失の原案承認
二十日の審査委員会
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特別融通損失審査会第一回委員会は二十日午前十時より永田町蔵相官邸に於て開催
三土蔵相、大口、黒田両次官、河田主計、富田理財、保倉銀行各局長、青木、阪谷、粕谷、各貴衆両院議員、土方、深井日銀正副総裁、浜岡、永池日銀理事
の各委員外幹事出席、劈頭三土蔵相より別項の如き挨拶あり続いて議事規則を審議して可決したる後
第一号案 台湾銀行の損失元本(一億八千五百万円)決定の件
に入り保倉銀行局長の説明並に之れに対し各委員より質問ありて十二時半休憩午後一時より引続き会議を続行し
第一号議案 台湾銀行の損失、(一億八千五百万円)決定の件
右議案は既に台湾銀行調査会に於て詳細に審議されたるものであるからとて異議なく承認
第二号議案 台湾商工銀行損失(三百五十万円)決定の件
第三号議案 華南銀行損失(三百万円)決定の件
右両案に就いては阪谷委員を始め各委員より台銀同様救済するの必要ありやとの質問出で之に対して三土蔵相を始め各関係官より台湾統治上その必要あるを答え結局異議なく原案承認
第四号議案 右三行に対する損失補償に要する一切の費用(七十七万円)決定の件
是亦異議なく承認最後に阪谷委員より
右三行の損失額一億九千百五十万円とこれが補償に要する費用七十万円即ち合計一億九千二百二十七万円は全く国民の負担に於いて右三行を救済するものなるを以て銀行当事者は勿論政府に於ては将来斯くの如ぎ不始末を再び繰返えさざる様充分の注意をなすと共に銀行当事者は之が救済によって将来充分の機能を発揮する様努力せねばならぬ
との希望的意見出で満場異議なく之を認めて午後二時半散会した
蔵相挨拶要旨
昨春財界の恐慌に当り政府は非常臨機の措置として支払延期の緊急勅令を発布すると同時に臨時議会を召集し財界安定の方策として日本銀行特別融通及損失補償法案並台湾の金融機関に対する資金融通に関する法律案を提出し同年五月九日より両法律の実施を見ることとなった
日本銀行特別融通及損失補償法の趣旨は之に依り金融機関に対する預金者の不安の念を除き人心を平静ならしめ以て恐慌の波及を防止すると共に銀行の整理を促進し恐慌に対する善後の措置を講ずるに在った、同法施行以来政府は之が運用に付き日本銀行と共に最善を尽し以て銀行の預金支払準備を充実せしむると共に休業銀行にして整理の見込立ちたるものに対しても其の預金払戻に付き充分なる便宜を与え又資金の固定したる銀行にして恐慌に因る打撃も亦著しく将来財界に累を及ぼす虞あるものに付ても特別融通法の援護の下に預金者に危懼の念を抱かしめずして其の整理を遂行せしめたのである
台湾の金融機関に対する資金融通に関する法律の趣旨は台湾に於ける金融機関の機能を維持し又特殊銀行たる台湾銀行の海外支店に於ける債務を完全に支払うことを得しめて我対外信用を維持するに在ったが政府は台湾銀行調査会の決議に依り台湾銀行に対し同法による資金の融通を与えて其の整理を遂行せしめ又台湾に於ける主要銀行たる台湾商工銀行及華南銀行に対しても同法により援助を与え以て台湾に於ける金融機関の機能を維持することとした
両法律に依る特別融資は去る五月八日を以て期間満了を告げたのであるが
同日現在の特別融資額は特別融通法に依る分六八七、九二一、〇〇〇円其の銀行数八十八行台湾融資法に依る分一九一、五〇〇、〇〇〇円其の銀行数三行に達したのである此等の特別融資により日本銀行が損失を蒙り為に其の中央銀行としての地位を危くするが如きこと無からしめむが為め国家は特別融通法に依る分に対しては五億円を限り又台湾融資法に依る分に対しては二億円を限り其の損失を補償すべきことを約し之が損失及其の額は此の特別融通損失審査会に於て之を決定することになっ居る
本会は幸に我財政経済並金融に関する経験深き方々を集め得たことは国家の為め慶賀に堪えぬ次第でありますが其の審査決定は我国一般財界に対して極めて重大且微妙なる関係を有するは固より直接国家の負担に関する次第でありますから慎重御審議あらむことを切に希望ずる次第であります