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権原アプローチによる飢饉発生メカニズムの分析 ―― 【慶應義塾大学井庭崇研究室 2006 年度秋学期】
http://www.asyura2.com/08/hasan56/msg/316.html
投稿者 hou 日時 2008 年 4 月 26 日 08:00:19: HWYlsG4gs5FRk
 

(回答先: ファンドビジネスは、人々の不安を利用してカネを儲けます。・・でよろしいでしょうか?>ご専門のみなさま 投稿者 tk 日時 2008 年 4 月 26 日 00:10:49)

http://209.85.175.104/search?q=cache:429DVJtJYeEJ:ilab.sfc.keio.ac.jp/2006/autumn/conference/proceedings/ilab2-2006f-develop.pdf+%E3%82%A2%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%80%80%E3%83%A1%E3%82%AB%E3%83%8B%E3%82%BA%E3%83%A0&hl=en&ct=clnk&cd=2

慶應義塾大学井庭崇研究室 2006 年度秋学期 

研究論文

権原アプローチによる飢饉発生メカニズムの分析

山田 治奈慶應義塾大学 総合政策学部2年
北山 雄樹慶應義塾大学 環境情報学部2年


本研究の目的は、アマルティア・センの理論を基に、貧困のメカニズムを分析するためのシミュレーションモデルを Plat Box 上で作成し、そのモデルのさらなる拡張可能性を探ることにある。発展途上国における貧困問題に関しては、GDP 等を基準とした従来の分析だけではなく、新たな視点からの分析が求められている。


本稿では、権原アプローチの食糧確保の側面に着目して、交換権原モデルを Plat Box 上で作成し、分析することで、貧困発生のメカニズムを説明するモデル構築への可能性を探る。1はじめに本研究では、貧困が発生するメカニズムを明らかにすることを目指し、アマルティア・センの理論的枠組みを基にしながら理解を進めてきた。本稿では、その第一歩として、飢饉の発生メカニズムに焦点を絞り、センによって分析が進められた交換権原モデル1をPlatBox上で作成し、シミュレーションを行うことで飢饉発生のメカニズムを理解することを目的とした。そして、貧困発生メカニズムの理解に繋がるモデル構築のための基盤となるモデルを作成することを目指した。2研究背景・意義現代社会において、「豊か」もしくは「貧しい」といった認識の判断の基準となるものはGDPの成長や所得の上昇、工業化の進歩度合いである。しかし近年、このような従来の判断基準は、問題の本質を捉えるためには不十分であるという指摘がなされてきた。これに対して、貧困や飢饉・不平等といった問題に、従来の基準とは異なった「潜在能力」や「権原権原」といった概念を用いて、新1このモデルは、センの著書『Poverty and Famines』中のAppendixB(p.175-184)に紹介されていたものである。なお、和訳版である『貧困と飢饉』では該当部分を含む補論は省略されている。しい基準を導入することで独自のアプローチを展開したのが、アマルティア・センであり、彼の理論は経済学の新しい分野として注目を集めている。したがって、このような視点から貧困の問題に取り組むことは、その社会的意義も大きいと考えられる。また、センはこの理論を適用するにあたり、従来の経済学の分析では考慮されていない、個人それぞれが「したいことがどれだけできるか」という点に注目することに対し、個々人のそのような情報を集めることの困難さゆえに、現状としては観察が可能な範囲内での分析に留まらざるを得ない状況であるということを述べている。しかし、我々は、マルチエージェントシミュレーションにおいては、その観察不可能性を克服することができると考える。それは、マルチエージェントモデルの、各エージェントの内部観察が可能であるという特性を利用するもので、シミュレーションによって個人それぞれの生き方の内在的な性質を直接観察することで、現象を理解することができるのではないかと考えた。11
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3アマルティア・センのアプローチ3.1経済学の新しい視点ここでは、まずセンのアプローチを理解するにあたって重要である「機能」と「潜在能力」という2つの基本概念について触れておく。「機能」とは、個人が成し得るものまたは成り得るもの、つまり、何かをしたりある状態になることを指す。これには、栄養状態が良好なことや回避できる病気にかからないことなど基本的なことから、自尊心を保っていられることや社会生活に参加できることなど、非常に複雑で洗練されたものまで幅広く含まれており、実に多種多様である。「潜在能力」とは、資源や財、機会を使って自分のしたいことができる能力のことである。センはこれらの概念を用いることで、これまでの経済学において議論されてきた、所得の効用のみに焦点を当てた分析や、個人の幸福度という主観的な概念に着目した分析など、両極端であったそれぞれのアプローチとは異なる、独自の個人間比較の分析手法を展開した。この分析手法においてセンが注目したのは、個人が実際に何ができるか」という点を指標として個人の境遇(生活水準など)を比較する方法である。「何ができるか」は、ある個人が利用可能とされる財やサービスの集合とその利用パターンで決定することができる。ここで述べている利用パターンとは、ある一つの財でも、利用方法によって達成する機能が異なることを示している。例えば、一つの財として「米」を採り上げてみると、利用パターンとして「食べる」と「会食する」というものが考えられる。食べた場合、「栄養摂取」という機能を達成することができ、会食した場合は、「人と語り合う」という機能を達成するということである。センの分析は、単に財力や効用、所有している財の特性の個人間比較ではなく、ある個人が、選択可能な選択肢の範囲中でしたいことがどれだけ実現できるか、という自由の観点に注目した、経済の新しい捉え方であると言える。3.2権原アプローチ「機能」、「潜在能力」に並んで重要なのが、「権原」の概念である。「権原」とは、財産所有権や社会保障を受ける権利など、社会的に認められた権利や機会の中で自由に所有や交換することができる財貨の、相互の関連付けのことである。人々の経済活動において日々行われる交換活動で、正当な根拠に基づいた財の所有形態の変化を、交換される権原の連鎖として捉え、そして複数の権原の集まりが権原関係のネットワークを形成しているのである。権原アプローチでは、社会的制約の中で、どのようにして生活に必要なものを得るかという点に焦点を当てている。つまり、権原のあり方で何が所有され、交換されるかが決まってくる。その例として労働者が挙げると、労働者は、自分の労働力でどれだけの財を得ることができるか、つまり、労働という権原を財へと変換することで、必要なものを得る手段としているのである。このように、ある財やサービスに対する所有権を、他の財・サービスの所有権とどれだけ交換することができるかが、個人の生活水準に影響してくる。そして、この考え方が飢餓のプロセスに繋がっていくのである。飢餓とは、生活に最低限度の食糧を十分に得られていない人々の状態を指している。権原アプローチを用いると、これは、飢餓に陥ってしまった人々の権原の範囲内で交換できる財の中に生活に十分な量の食糧が含まれていない場合に発生すると説明できる。センの権原アプローチは、飢餓や飢饉の原因が、偶然的に発生した事故や天災によって引き起こされたものではなく、権関係ネットワークにおいての、複数の正当な根拠に基づいた権原の集まりによる影響であるという視点である。

3.3飢饉発生メカニズムの解明センは1970年代後半から権原アプローチによる飢饉分析を進めた。飢饉分析における、センの権原の特徴は、市場経済という制度的枠組みの中で、交換経済の特徴に焦点を当てたこと、そして食糧の総供給量と総需要量の統計というマクロ的視点からは、飢饉の社会的影響の本質に触れることはできないという点を明示したことである。センは1943年インドのベンガル飢饉を分析することによって、飢饉と飢餓の原因は食糧の量と人口の間の機械的バランスの観点からは理解できないことを明らかにしている。実際、現代に発生した大規模な飢饉においては、統計上の、一人当た12
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りの食料の供給量が、他の年度と比較して著しい変動がないにもかかわらず発生していることが明らかになっている。飢饉の根本的な原因には、個人が十分な食糧を確保できる自由(機会)と能力(経済力などの財力)が深く関係しているのである。そのため、機会と経済力に恵まれた境遇に置かれた人が、何の不自由もなく食糧を確保している傍らで、機会または経済力が不十分なために食糧確保が極めて困難な状況に陥る人が同時に存在するという構造を生み出してしまうのである。4交換権原モデル4.1モデルの概要本論文では、センの理論の中でも権原(entitle-ment)に焦点を当て、権原の格差がいかに飢餓に繋がるのかを明らかにする。これはセンが自著『貧困と飢饉(Poverty and Famines)』で取り上げた交換権原モデル(Illustrative Models of ExchangeEntitlement)を基にしたものである。ここでは、最も基本的な潜在能力である食糧の確保を権原として扱い、異なる職業の集団がその生産活動や取引を行う中で、彼らの権原がどのように決定されていくのかを述べている。本論文では、そのモデルをシミュレーションの基本モデルとして再現し、その拡張可能性を探る。4.2概念モデル4.2.1モデルの説明本稿で扱うモデルでは、センの定義した職業(1.土地所有者,2.小作農,3.都市労働者,4.地方労働者,5.地方サービス提供者)のそれぞれに属するエージェントが、職業ごとに生産や取引を行う。ここで、最も重要なポイントとなる食糧の取引に当たっては、市場の役割をするエージェントを作り、そのエージェントを介して食糧やサービス(生活必需品等)と貨幣の交換が行われることとした。(図1)このモデルは、職業の分類や食糧等の取引を大幅に簡易化したものであるが、現実社会を構成する要素の中から最低限の要素を取り出すことで、それぞれの境遇の違いにおける交換権原への影響を比較することに重点を置ている。図1:交換権原モデルの概要4.2.2エージェントこのモデルでは、センの定義した5種類のエージェントと市場エージェントの合計6つのタイプのエージェントを扱う。以下ではそれらのエージェントの特徴について説明する。土地所有者土地所有者は自らの土地で生産された食糧で生計を立てる人々のことである。彼らは自分の土地で生産された食糧のうち、一部を自らの生活分に充て、その他を貨幣との交換分として市場に出す。また食糧の取引によって得た貨幣は、地方サービス提供者からサービスを購入するために使われる。小作農小作農は借りた土地で食糧を生産して生計を立てる人々のことである。彼らも土地所有者と同様に、生産した食糧のうち一部を自らの生活分、その他を貨幣との交換分として市場に出す。但し、彼らの食糧生産高は、土地所有者と比べて低く、市場に出す食糧も、サービス購入のための費用を賄うのがやっとである。都市労働者都市労働者は、いわゆる特権階級の人々のことである。彼らは食糧、サービス共に国家から保障されているため、食糧を自ら購入する必要はなく、市場に出された食糧の一部が、自動的に彼らの取り分となる。地方労働者地方労働者は賃金労働によって生計を立てる人々のことである。彼らは労働と引き替えに一定の賃13
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金2を得、それによって食糧の購入と、サービスの購入を行う。地方サービス提供者地方サービス提供者は生活必需品や、サービスの生産によって生計を立てている人々のことである。彼らは自らの生産物を他のエージェントと直接取引することで貨幣を得、それによって食糧を購入する。市場市場エージェントは、このモデルを作るに当たって、食糧取引やサービス取引を潤滑に行うために用意したものである。食糧取引の過程では、市場に出される食糧のとりまとめと、食糧の配分、食糧価格の決定、貨幣の交換を行う。サービス取引の過程では、市場に出される生活必需品のとりまとめと、その配分・価格の決定、貨幣との交換を行なう。4.2.3市場のふるまい既に述べたように、モノと貨幣の取引は全て市場を介して行なわれ、価格や取引量の決定は市場が全ての職種のエージェントの情報を把握し、取りまとめている。ここでは、市場のふるまいを説明していく。食糧取引食糧取引とは、市場に出された食糧を、エージェントが所有する貨幣と交換する行動を指す。まず、土地所有者・小作農によって生産された食糧が市場に集められ、それらの総量から食糧価格を決定する。都市労働者には保障分の食糧が渡される。地方労働者・地方サービス提供者は、自らが得た収入から食糧に費やす額を決定し、その分だけ食糧と貨幣を交換する。サービス取引サービス取引とは、市場に出された生活必需品を、エージェントが所有する貨幣と交換する行動を指す。地方サービス提供者によって生産されたサービスが市場に集められ、それらの総量からサービス価格を決定する。土地所有者・小作農・地方労働者・地方サービス提供者は、自らが得た収入か2センのモデルの中では、本来、地方労働者にあたるエージェントの賃金は、土地所有者から支払われている構造になっているが、今回作成したモデルでは、土地所有者と地方労働者の賃金は切り離されている。ら生活必需品に費やす額を決定し、その分だけ生活必需品と貨幣を交換する。権原の算出権原の算出では、市場が全ての取引を終えた後に、それぞれの職業別エージェントの権原がどれくらいの値に達したかを計算する。図2は、上記の市場のふるまいを時系列に表したものである。4.3モデルの設計4.3.1パラメータモデルの構造の詳細に移る前に、パラメータの説明をしておく。本モデルにおいて用いられるパラメータは以下の通りである。ni, (i = 1, ..., 5):1〜5の職業グループのエージェントの人数p:食糧価格v:サービス価格qi, (i = 1, 2):土地所有者および小作農の食糧生産高mi, (i = 1, 2):土地所有者および小作農の食糧出荷割合w4:地方労働者の賃金ci, (i = 4, 5):地方労働者および地方サービス提供者の食費割合(食糧に費やす貨幣の割)hi, (i = 1, 2, 4, 5):土地所有者、小作農、地方労働者、地方サービス提供者の雑費割合(サービスに費やす貨幣の割合)r:都市労働者に保障された食糧の割合ei, (i = 1, ..., 5):1〜5の職業グループの権原4.3.2計算構造市場による価格・配分割合決定などに用いられる計算式について説明していく。食糧価格(p)は、以下の計算式によって決定される。p = Df/(n1m1q1+ n2m2q2)Dfは市場に出された食糧に対する需要の総量を示し、以下の通りである。Df=5琶=3Dfi14
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図2:コミュニケーションシーケンス図それぞれの職業別エージェントの食糧の需要は、都市労働者:Df3= n3rp,地方労働者:Df4= n4w4c4,地方サービス提供者:Df5= n5wvc5である。土地所有者と小作農は、予め生産した食糧の一部を自分たちで消費する分として確保しているので、Df1= Df2= 0になる。サービス価格は以下の計算式によって決定される。v = Dv/n5Dfは市場に出されたサービスに対する需要の総量を示し、以下の通りである。Dv=5琶=1Dvi職業別エージェントのそれぞれのサービスの需要は、土地所有者、小作農:Dvi= qinimiphi,(i = 1,2),都市労働者:Dv3= 0,地方労働者:Dv4= n4w4h4,地方サービス提供者:Dv5= n5vc5である。権原の算出方法はそれぞれ以下の通りである。e1= q1− (n4w4/n1p) = q1− e4(n4/n1),e2= q2,e3= r,e4= (w1/p)[n4h4(w4/p)],e5= (v/p)= [n1m1q1h1+n2m2q2h2+n4h4(w4/p)]/n5(1−h5).15
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5シミュレーション実験と分析5.1シミュレーションの設定本論文ではアマルティア・センの著書にあるモデルをPlatBox上で再現すると共に、その拡張可能性を探ることが目的である。従って、センのモデルの中でも特に重要だと思われる数式はそのまま使用し、その式で扱う変数はPlatBox上で調整することができるようにWorldのパラメータとして値を設定した。また、それぞれのパラメータについてはセンの著書の中には具体的な数値までは挙げられていなかったので、それら各エージェントの数や食糧生産高などは常識的な割合を任意の値として設定すると共に、シミュレーション結果を見ながら随時バランスのとれた設定になるように調整することとした。5.2シミュレーション結果5.2.1都市労働者の保障食糧(r)の影響センのモデルの一つの特徴として、一定のパラメータを設定した上で、都市労働者に保障された食糧の量の値であるrを変動させることで、各エージェントの権原が変化するということが挙げられる。今回作成したモデルでも、最終的な結果としてrの値を上昇させると、土地所有者と都市労働者の権原は増加し、地方労働者と地方サービス提供者の権原は減少するというセンのモデルと同様の結果を得ることができた。(図3)これは単純に、都市労働者に保障された食糧が増えると市場に出回る食糧が減り、地方労働者と地方サービス提供者が市場から買うことのできる食糧も減るために、彼らの権原は減るからであると考えられる。一方で、土地所有者に関しては、食糧価格が上昇するのに対して、土地所有者が支払う地方労働者の賃金は一定であるため、その割合の変化が権原の上昇に繋がっている。ちなみに、生産高のみによって収入の決まる小作農の権原は変化しない。5.2.2権原と食糧の関係性今回のモデルでは、食糧と貨幣の取引と、生活用品と貨幣の取引という二つの取引を通して各エージェントの権原の観察を行うが、すでに述べた通図3:保障食糧(r)の権原への影響り、最終結果を左右するパラメータの初期設定についてはセンの著書にも書かれていなかったために、結果を見ながら調整を行った。その結果、権原の値は初期設定値によってかなり変動が激しいということと、当初予想していた食糧との連動性は必ずしも成立しないということが分かった。これはおそらく、権原の値が、エージェントの所有する食糧だけではなく、生活用品の量や貨幣の量、食糧の価格といった様々な要素と関連しているためである。6考察本モデルは最初に設定する各パラメータの値が非常に重要な役割を担っている。この値の変化によって、各エージェントの権原はかなり大きく変わってくるが、基本的には、設定された値によって食糧価格が上昇すると、それを買うエージェントである地方労働者と地方サービス提供者の権原が減少すると考えられる。また、この食糧価格に大きな影響を与えるために、結果的に権原にも大きな影響を与える、生産高qiや雑費割合hiなどに対して、当初はかなり重要だと考えていた地方労働者の賃金w4などは、食糧価格には影響が出るものの、全体にはほとんど影響のでないパラメータであることが分かった。このように、それぞれのパラメータが全体にどのような影響を及ぼすのかを観察できたことは、このシュミレーションモ16
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デルの一つの成果である。ただし、今回のモデルでは様々なパラメータの組み合わせによって、権原のバランスや食糧のバランスなどを考えているが、まだまだ検証できていないパラメータの組み合わせも多いので、今後も各パラメータを検証すると共に、モデル全体として妥当性を持つ設定を検討していく必要があると思われる。7モデルの拡張可能性と今後の展望今回のモデルはマルチエージェントモデルであるが、実際にはアマルティア・センの数式モデルを元にしているため、市場という本来のモデルには存在しないエージェントが全てのモノや情報のやり取りを統括する形をとっている。従って、今後のモデルの拡張可能性としては、これらの行動を各エージェントの行動にすると共に、エージェント毎の個体差を取り入れることで、モデルをより現実に近いものにしていくということが考えられる。また今回、権原の値は、基本的には、それぞれのエージェントがどれだけ食糧を手に入れることができるかというものであったが、これも食糧だけでなく生活用品等の値を組み込むことで、アマルティア・センの理論によるところの潜在能力により即したモデルを作っていくことができると思われる。また、その場合には、今回のモデルで検証した各パラメータの影響を考慮してモデルの設定を行うと、より妥当性を持った交換権原モデルになるのではないだろうか。謝辞本稿は、慶応義塾大学総合政策学部専任講師の井庭崇先生による研究プロジェクトにおける研究の一環である。執筆にあたり、授業やモデル作成において指導をしていただいた井庭崇先生に心から感謝の意を表したい。また、研究内容や原稿に対して有効なコメントを頂いた井庭崇研究プロジェクトの履修生に感謝の意を表したい。参考文献[1]鈴村興太郎後藤玲子.”アマルティアセン:経済学と倫理学”,実教出版株式会社, 2001[2] Sen,A.K.”Poverty and Famine:An Essay onEntitlement and Deprivation”, Appendix B,p.179-184, Oxford, 1981[3]アマルティアセン.黒崎卓山崎幸治訳,”貧困と飢饉”,岩波書店, 2000[4]アマルティアセン.池本幸生野上裕生佐藤仁訳,”不平等の再検討:潜在能力と自由”,岩波書店, 1999[5]アマルティアセン.石塚雅彦訳,”自由と経済開発”,日本経済新聞社, 200017

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