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(回答先: 続報・・ビデオ店放火で死刑判決=16人死亡、無罪主張退ける−大阪地裁。(2009/12/02-20:58) まで 投稿者 0_0 日時 2009 年 12 月 02 日 23:17:56)
難波ビデオ店放火殺人 死刑判決の要旨
2009年12月2日23時53分
大阪・難波の個室ビデオ店火災事件の判決要旨
【主文】
被告を死刑に処する。
【事実認定の説明】
《争点》
●被告は事件当日、「キャッツなんば店」に客として入店しており、公訴事実の時刻直前まで18号室にいたことは認めるが、同室内において放火したことはないと主張する。
《被告が火を放ったのか》
●出火した場所の特定
大阪府警科学捜査研究所職員は焼損状況を検討し、再現実験の結果を踏まえ、出火個所と炎の燃え広がり方について以下のとおり説明した。店内の焼けた跡をもとに炎の流れをたどっていくと、出火元と考えられる場所として、18号室内のキャリーバッグが発見された場所に行き着く。その前提で、炎の流れを想定すると次のようになる。
キャリーバッグが発見された場所から燃え広がり、18号室の東側壁面に炎が大きく立ち上がった。酸素のない奥の方には燃え広がらず、出入り口の方に燃え広がっていった。フラッシュオーバー現象(室内の可燃物が熱分解して引火性のガスが室内に充満した場合や、内装に使われている可燃性素材が発火した場合に、爆発したように一気に燃焼する現象)が発生した。炎は向かいの通路北側の壁にぶつかって左右に燃え広がり、下方向にも広がった。さらに炎は室内に入り、痕跡を残した。燃え広がった炎は10号室前に向かい、置いてあったラック上部を燃焼させ、非常な強烈なものになり、ドアが開いていた9号室に入り込み、室内を焼損させた。9号室の焼損が最も激しいのはこのためだ。
以上の見解は、「キャッツなんば店」店内の特徴的な焼損状況について無理なく説明していて、十分納得できるものである。
弁護人は、9号室が最も激しく焼損していることからすれば、9号室が出火元である、18号室に外から炎が流れ込んだ痕跡があることからすれば、18号室は火元でないと主張する。しかしながら、9号室内が最も激しく焼損しているからといって、出火場所と考えることはできない。
以上によれば、本件現場の痕跡からだけでも、本件火災は、被告が利用していた18号室内(キャリーバッグの残骸(ざんがい)があった地点)から出火して、18号室内に燃え広がり、炎が出入り口から噴き出してさらに試写室スペースに燃え広がったことが推測できる。
●18号室内で出火した後の状況(出火直後の状況についての客及び店員の供述)
30号室の客は「被告が18号室から出てきて、すれ違った。18号室の中をのぞくとキャリーバッグの上の方が燃えていた」と供述した。
店員Aは「受付していたところ、涙と鼻水を出し、よだれを垂らした被告がきた。若い客から火が出ているのを聞き、試写室スペースに入った。18号室のドアが全開になっており、キャリーバッグの上から火が出ているのが見えた。ボーンという音がして、18号室の上の方から天井の方に火が噴き出した」と供述した。
店員Bは「被告が受付のところに来た。被告が着ていた白いシャツは軽くすすけたような感じで、黒っぽかった。別の客が来て、『火や』などと言ったので、試写室スペースに入った。通路の角に置いてあった消火器を取りに行ったところ、いきなりボンと音がして暗くなった。18号室の方から炎が来たので、取ることができなかった」と供述した。
以上の各供述は、いずれも具体的である上、特に不自然な点も認められない。
弁護人が主張する点を考慮しても、上記の30号室の客、店員A及びBの供述内容に疑問を抱かせるような事情はないのであって、それぞれの供述を信用することができる。
一方、被告は、当公判廷等において、上記の時間帯に当たる供述について、「キャリーバッグを18号室に持ち込んだことはない。エアコンのリモコンの調子が悪かったので、そのことを話しに受付に行くことにした。受付でリモコンの調子が悪いことを言った。その後、店員から外に出るように言われたが、その時は火災が発生していることには気付いていなかった」などと供述する。
以上の被告の供述を前提とすると、本件火災後、キャリーバッグの残骸が18号室内から発見されたことについて合理的な説明ができない。また被告が受付でリモコンの調子が悪いことを言ったころ、本件火災が発生し、店員が異変を聞いて、試写室スペースに入っていくなどの対応をしたことは店員らが一致して供述しているところであるのに、被告はその点についてほとんど触れておらず、その不自然さは否定できない。
したがって被告の供述は信用できない。
以上によれば、18号室の出火後の状況においては、30号室の客、店員A及び店員Bの供述どおりであると認められる。
●検討
18号室内のキャリーバッグから出火した際、被告は利用客として18号室に在室していた(出火直前に他の者が18号室に入った形跡はない)。被告が18号室から出た直後は、炎はまだ小さいものであった。したがって被告は、出火時に18号室の中にいて、出火に関与したものと考えられる。
被告は、キャリーバッグからの出火に気付いたはずなのに、通路ですれ違った30号室の客や受付にいた店員らに対し、出火のことを言わなかった。これは、被告が出火に関与したからであると考えられる。
被告の店員Aに対する「すみません」「補償もします。弁護士もつけます」などとの発言は、自らが出火に関与したことをうかがわせるものである。
被告は、現場に臨場した警察官から「お前が火付けたんか」と聞かれた際、「死にたかったんです」と答えるなどしているが、その際の被告の言動は自殺目的で放火したことを認めたと考えるしか合理的な説明ができない。
以上に加え、被告が喫煙のためにライターを所持していたことからすれば、被告がそのライターを用いるなどして、何らかの方法でキャリーバッグに火を放った事実を推認することができる。
《被告の故意》
●現住建造物等放火罪の故意
被告は、本件店舗内に店員や他の客がいること、18号室の扉は木製であり、室内には木製棚、リクライニングソファなどの可燃性の高い物が備え付けられていたことについては、当然認識していたはずである。
被告は、本件放火前に試写室スペース内を歩き回ったり、知人の部屋(17号室)を訪れたりしていたのであるから、通路の配置及び通路両側に試写室が並んでいることや、各試写室の扉が木製であることを認識していたものと認められる。
被告において、上記のような事実を認識した上で、キャリーバッグ上部に火を放ったものと認められる。そのような方法で火を放てば、炎が18号室内、さらには他の試写室に燃え広がり、「キャッツなんば店」の建物を焼損させるに至ることは容易に想像できることである。そして、そのような認識のもとで本件放火に及んだのであるから、「キャッツなんば店」の建物を焼損することを認容していたことも認められる。
上記のとおり、被告は、出火したことを店員らに告げていないが、この事実は、上記認定に沿うものということができる。
以上によれば、被告に現住建造物等放火の故意があったというべきである。
●殺人罪の故意
被告が、本件放火行為により、炎が試写室スペースに燃え広がることを認識していたと認められることは上記の通りである。
また被告が、本件放火当時、他の試写室内に他の客がいることを認識していたことも認められる。
そして、試写室スペース内を歩き回った被告において、試写室スペースからは試写室出入り口を通らなければ外へ出られないことや試写室スペースの通路が狭いなど、火災が発生した場合に試写室スペースから脱出しにくい構造であることを認識していたことも認められる。
被告は、宿泊のために本件店舗を訪れたものであり、午前3時前という時間帯にも照らし、他の客が就寝している可能性を認識したと考えられるし、自分でもヘッドホンを使用したことなどから、ヘッドホンを利用している客がいる可能性も認識していたことも十分推認できる。
したがって、被告において、上記のような事実を認識した上で、本件放火行為に及べば、逃げ遅れた客が死亡するに至る危険があることは容易に想像できるのであって、被告においてもその危険は十分認識していたと考えられる。そして、そのような認識のもとで本件放火に及んだのであるから、「キャッツなんば店」の各試写室内にいた客が死亡することを認容していたことも認められる。
以上によれば、被告に「キャッツなんば店」の客らに対する殺人の故意があったというべきである。
《放火の態様及び動機の詳細》
●同行直後の自白について
被告は、浪速署での取り調べにおいて、「最初、火は付けていないと答えていたが、2、3人の警察官に次々『おまえしかおらんのや』『おまえの部屋から火が出てるのを見たやつがおるんや』などと言われ、机をたたかれた。その後にらまれ、ボスみたいな警察官が出てきて、お手上げという感じになって、放火したことを認めた」などと供述する。
しかしながら、この供述は内容が変遷しており、信用できない。
また、被告は午前5時20分ころ、「部屋の中のティッシュをいっぱいとって丸めて私のキャリーバッグの中に火を付けたティッシュを入れました」などとの内容の自供書を作成しているが、この時点で火災発生から約2時間30分しか経過しておらず、現場の実況見分等はもちろん、参考人からの事情聴取等も十分に行われていないことは明らかである。そのような段階で、机をたたいたりするような追及的な厳しい取り調べの手段を用いるとは到底考えがたい。
したがって任意性に影響を与えるような事情はない。
●被告人の否認
被告は、検察官の取り調べにおいて、10月19日までは、放火した事実を認めていたものの、その一方で、10月17日の弁護人の接見において、放火の事実を否認し、また、10月19日の検察官の取り調べにおいても、当初、放火の事実を否認する供述をした。
しかしながら被告は、10月18日の検察官の取り調べにおいて、「死刑になりたくないから、弁護士にうその話をしてしまった。きちんと事件に向き合います」と供述している。また、10月19日の取り調べ中に、「弱い心が出てしまいます。また事件から逃げました」「ひきょう者になりたくはありません。事実と向き合い、本当のことを話します」旨供述している。
この点についてみるに、16人の被害者の死亡という重大な結果を生じさせた犯行を犯した者の心境として、犯行をいったん認めながらも、厳しい刑罰が予想されることから、何とかしてその刑罰から逃れたいと思って心が揺れ動くことは、理解できないことではない。
そうすると被告が、弁護人の接見や検察官の取り調べにおいて、放火の事実を否認して、供述が揺れ動いたとしても、自白調書の信用性に大きな影響があるとは考えられない。
●自白の内容
被告の自白は、放火した状況について、その方法、その際の心理状態等、詳細で具体的である上、特に、当時の心理については、本件の前からの移り変わりも含めて詳しく描写されている。
警察官は、当公判廷において、火災原因等についての情報は知らなかったと供述しているが、その時点ではまだ火災発生から約2時間30分しか経過していないことからすれば、同供述は十分信用できる。
そうすると、被告は、取調官がキャリーバッグが出火箇所であるとは知る前から、キャリーバッグに放火した旨供述していたのであるから、かかる経緯は、被告の捜査段階の自白が取調官の誘導によるものではないことを示すものである。
●小括
以上のとおりであるから、被告人の自白調書の記載はおおむね信用することができ、犯行態様、犯行を決意するに至った経緯については、これによって認定することができる。
次に、犯行を決意するに至った経緯についてであるが、被告は、9月28日に占いをしていた人物と知り合い、その人物と一緒に本件店舗に入店してから、店の雰囲気、部屋の狭さなどに若干うっ屈した気分を持ったものの、すぐに自殺を企図したわけではない。その人物が部屋を訪ねてきた後、逆にその部屋を訪ねた時点でも、追従的な言葉を述べたりしていて、自殺を企てるようなそぶりはうかがえない。その後眠ろうとしても眠れないまま、自分が個室ビデオ店にいることがいやになり、自分の人生が何だったのかと考えるうち、その場ですぐ自殺しようと決意した。極めて衝動的な自殺の決意というべきである。
《結論》
●以上のとおり、被告の捜査段階での自白以外の証拠に上記の自白を総合して被告が本件殺人、殺人未遂、現住建造物等放火の罪を犯した事実を認定することができる。
なお弁護人は、被告には完全責任能力はなかった旨主張するが、被告に生じていた具体的な精神障害については何らの主張をしていないし、本件放火当時、被告に何らかの精神障害が生じていたことをうかがわせるような事情も認められない。したがって、本件放火当時、被告が完全責任能力を有していたと認める。
【量刑の理由】
《犯行の動機及び態様》
本件当日、被告は、知人に連れられて本件店舗に入店した。個室に入って眠ろうとしたが眠れず、イライラした気分になり、自分を惨めに思って死にたいと考え、火をつけて自殺しようと企て、試写室内にいた他の利用客が火災に巻き込まれて死亡してもかまわないと考え、本件犯行に及んだ。
被告は、衝動的に自殺することを決意して犯行に及んだものであり、他の利用客を積極的に殺害する意図があったとまでは認めることはできないが、犯行の動機は、短絡的で身勝手極まりないものであって、酌量の余地はない。
被告が放った火が燃え広がり、店内には煙が充満した。直後に停電し、照明が消えて、店内は暗闇になり、店外に脱出するのは極めて困難であったと思われる。多数の利用客が死亡するに至ったのは、上記のような店内の構造・設備などもその一因であることは否定できない。
しかし被告は、店内を歩き回って、店内の構造がそのようなものであることや他にも利用客が在室していることを認識しており、それを承知で本件犯行に及んだものであって、これは多くの人の生命を危険にさらす極めて悪質なものであるといわなければならない。
《犯行の結果》
死亡した16人の被害者は、本件当夜、たまたま本件店舗を利用していたもので、被告とは全くかかわりのない者であった。もとより、何の落ち度もない。遺体の姿が物語るように、就寝中に火災に気付くことなく絶命した者も、火災に気付いて脱出しようとしたものの、暗闇の中、力尽きて絶命した者もいる。被害者らの苦痛、恐怖は、計り知れないものであったであろう。このような形で16人もの人々の生命を絶った犯行は、残虐なものといわなければならない。
たまたま利用していた本件店舗で突然人生の終わりを迎えることになった各被害者の無念を思うと暗澹(あんたん)たる気持ちにならざるを得ない。
遺族らは、意見陳述や供述調書などによって、それぞれの悲しみや被告に対する憎しみなどを述べる。多くの遺族は被告に対する厳正な処罰を訴え、極刑を望んでいるが、至極当然のことである。
さらに、本件火災により、被害店舗が全焼し、同店舗の経営会社には少なくとも5000万円、同店舗が入っていたビルの所有者には修理費用として約2200万円という極めて多額の財産的損害が生じている。
《捜査段階及び公判段階における被告の態度》
被告は、犯行直後から、警察官に対し、自分が放火したことを認め、取り調べに対して、事実を詳しく供述していたが、捜査段階の終盤、自白を撤回して犯行を否認し、当公判廷においても、自己が放火したことを否定している。自分の行った犯罪やその結果に真摯(しんし)に向き合う態度に欠けているといわざるを得ない。
《結論》
本件は被告が身勝手な動機から、本件店舗に火を放って焼損させ、16人の被害者を殺害し、7人の被害者を生命の危険にさらしたもので、その行為を行った被告の人格態度は最大限の非難に値する。特に酌量すべき事情がない限り、死刑をもって臨むしかない事案であると考える。
死刑を選択するについては慎重の上にも慎重を重ねて検討すべきであるが、以上にみた本件犯行の罪質、経緯、動機、態様、結果、被害感情、社会的影響及び犯行後の情状などを総合考慮し、特に、被告が他人の生命を全く省みずに試写室に火を放ったこと、これにより多数の者が生命を絶たれたことを考えると、上記のように被告が他の利用客らの殺害を積極的に意図したわけではないことや被害の拡大に本件店舗の構造などが寄与していることなど、被告にとって有利に斟酌(しんしゃく)すべき事情を最大限考慮しても、被告はその生命をもってその罪を償うべき場合に該当する。
アサヒ・コム
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