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3日からローマで開催されている食糧サミットにおいて、福田首相は穀物市場への投機マネー流入の抑制策に関し、"監視する強い政治的意思の表示"、"何らかのメカニズム構築"を提唱しました。バイオ燃料問題、異常気象による不作、新興国の需要増加、投機マネーの流入など、複数の要因が絡み合って高騰が続く食糧価格に対し、世界的な危機感の高まりを受けたうえでの呼びかけとなっています。
この提唱に先がけて、去る現地5月29日、全米商品先物委員会(CFTC)は、エネルギー市場の監督強化策を発表しました。この発表当日、WTI原油は前日の130ドル台から126ドル台に急落したほか、金やコーンなど他の商品価格も急落しています。
そればかりか、原油価格が125ドルに達した5月半ばまで強い買いの姿勢を見せ、5月13日時点では7万1,000枚以上に達していた大口投機家の買い越し数は今回の発表直前の5月27日には2万5,867枚まで縮小しています(CFTC建て玉報告、先物のみの場合)。
このように市場の熱気を一気に冷え込ませ、原油価格を急落させる効果をもたらしたCFTCによる今回の発表の要点を簡単に紹介すると次の3つとなります。
まず始めに挙げられるのが、全米の商品先物市場を監督するCFTCと英国の商品先物市場を監督する英国金融サービス機構(FSA)、ICE(インター・コンチネンタル取引所)が協力しNYMEX市場とICE市場の両市場の透明性を高める、としている点です。
今回ICEとの協力が提携されたのは、ICE市場では世界の指標となる原油の一種であるブレント原油(北海産原油)、そして現物引渡しを伴わないとはいえ、WTI原油の先物が上場されており、NYMEX市場で上場されている原油価格と相互に影響しあうため、NYMEXだけで監視を強化しても片手落ちになる可能性が高い、との考えが背景にあってのことでしょう。
2点目は、CFTCは米国市場のトレーダーに対するインデックス・トレードの月次報告を早急に義務付ける、としていることです。CFTCではこの報告を基にしたうえで、米国のエネルギー先物市場において指数取引を通した市場への参入がどの程度影響を及ぼしているかを把握し、市場の報告義務や参加者の分類について再検討する、との見解を明らかにしています。
そして3点目には、07年12月から全米での原油(輸送、買い付け、在庫など)やエネルギーに関連した金融派生商品の取引状況を調査していることを明らかにしたこと、が示されています。
この案に続き、3日にCFTCは穀物市場においてもインデックス取引の監視強化案を盛り込んだ新たな監督強化策を発表しました。CFTC自身が現在の市場環境を"前例の無い状況"と記していますが、今年に入ってからも4月、5月、そして6月とCFTCが立て続けに市場監視強化策に関する発表を行っていること自体も異例と言えます。それだけ当局ですら商品価格の高騰に対する懸念を強めていることが窺われます。
ただ、だからといってこの監督強化策がすぐに大口投機家による取引の規制につながるかというと、この点については疑問を持たざるを得ません。というのも、市場に流入している資金が流出すれば商品価格が急落し、かえって混乱を招く可能性があるからです。
また、世界規模で取引所のM&Aが進んでいるため、取引所自身も存続のためには自身の存在価値を高める必要もあるでしょうし、取引所の収入が取引手数料を主としているため取引規模のむやみな縮小は避けたいとの考えもあることでしょう。
このような取引所の事情、そして監視当局のなかなか進まないこれまでの歩みを見越しているのか、一時的に下落する場面が見られたエネルギー、穀物、それぞれの市場では史上最高値達成時に比べると水準を引き下げたとはいえ、依然として高値での推移が続いています。
投機資金の流入が一因となって価格の上昇が続くエネルギー・穀物市場の手綱を監督機関がどのようにさばいて行くのか。先進国のみならず、新興国のCPIも上昇傾向が続くなど、資源価格の高騰が牽引するインフレが世界経済に与える影響に対する懸念も深まるなかで、監督当局の今後の動きが注目されます。
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