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ウインザー・ビル火災についての資料(および自説の一部訂正):千早さんへの返答
2005年2月12日深夜に発生したマドリッドのウインザー(ウインドソル)・ビルについての資料を挙げておきます。(ここでは国際基準にあわせて「ウインザー」と言っておきます。)
(日本語)
http://www.obayashi.co.jp/technology/shoho/pdf/2006_070_11.pdf
スペイン超高層ビル火災の被害調査報告
(英語)
http://www.mace.manchester.ac.uk/project/research/structures/strucfire/CaseStudy/HistoricFires/BuildingFires/default.htm
The Windsor Tower Fire, Madrid
http://www.elmundo.es/fotografia/2005/02/incendio_windsor/index.html
エル・ムンド紙による写真(解説はスペイン語)
●先ほどの日本語資料の方に豊富な写真と解説があります。この火災は2005年2月12日午後11時過ぎに32階建てのビルの21階から出火し(消防署に第一報が入り)、すぐに上の方に燃え広がり、またひ弱な鉄筋中空レンガ作りの床が壊れて下の方にも火が広がりました。原因は未だに不明で、放火説もありますが漏電説もあり何とも捜査が進まず(スペイン警察ではいつものことですが)、よほどの決定的な証言でも無い限り結局は迷宮入りになりそうです。
その後16階と17階の間にあったメカニカル・フロアー(2番目のテクニカル・フロアー:T2)より上の部分が、合計で4時間半ほどかけて崩落しました。ここに約2時間半後の崩落、約3時間後、また約4時間半後の崩落の写真があります。
その際に、崩落した高温の物体が17階の床(28cmの鉄筋コンクリート)を破壊し突き破ったため16階以下にも火災が広がり、さらに数時間激しく燃え続けました。
その後、下の方で燃える火災は4階以上の部分を全焼させ、完全鎮火には24時間近くかかったのですが、最も火勢の強かった時間はおそらく7〜8時間ほどだったのでしょう。次の日の朝には激しい炎は見えなくなっており(エル・ムンド写真2番目:季節と太陽の高さから午前8時〜9時と思われる)、その後ビルの方々で小さな火が長時間くすぶり続けました。それがほとんど収まったのは20時間を過ぎたくらいで、「24時間燃え続けた」というのは大げさな表現でしょう。
●資料にもありますが、コア部分の支柱は鉄骨構造ではなく鉄筋コンクリートです。外周部は鉄骨構造で、各支柱は外径100 mm〜180 mm、板厚7 mm程度の細いものでした。また各階の床は鉄筋に中空レンガ、4階と17階のメカニカル・フロアー部分だけ鉄筋コンクリートとなっていたようです。
資料にあるとおり建設当初はほとんどまともな防火設備が施されておらず、火事になればあっという間に燃え広がるようなお粗末な状態でした。(同じフランコ政権末期に作られた建物がバルセロナにも数多くあるのですが、防火設備はもちろん、水周りも電気系統も手抜きのお手本のような悲惨なもので、中空レンガを積んだだけの壁を通して隣の声が丸聞こえ、エレベーターなどはしょっちゅう止まります。水周りが壊れたときなど配管図が残されていないために手当たり次第に壁を壊して水道管や配水管を探さなければならない、という状態です。逆に100年前の建物の方がよほど安心して住めます。)そして火災が起こったときにはちょうど防火対策の工事を施している最中でした。
しかし崩落した17階以上の部分には外周の鉄柱にはまだ防火被服がつけられておらず、16階より下には一部を除いてようやく防火被服がつけられた状態でした。その他、防火壁や防火用の空間などの設備はまだつけられておらず、スプリンクラーも工事中という、それまでに火事にならなかったのが単なる幸運としか言いようのない状態でした。
火災の温度について日本語資料では「上層階の構造体を崩壊に至らしめた火災は,室全体が燃焼する換気支配型の盛期火災であり,火災温度は1,000℃に達する高温であったものと推察される」と書かれています。場所が高すぎて消防の水も届かず、写真を見ても分かりますが、四方八方から好き放題に新鮮な空気が流れ込む、まさしく「燃えっぱなし」の状態です。これじゃ1000℃近くになってもおかしくありませんし、たぶん鋼鉄の強度は常温の20%ほどに落ちていたでしょう。
外周部分の崩落に関して、17階以上の部分が崩落したことについては、英語での資料と日本語の資料ともに、防火被服のつけられていなかった外周の鉄柱が火災の熱によって上からの重量を支える力を落とし、座屈を起こしてそれが支えていた床を崩落させたとしています。さらに外周の鉄柱が細く熱容量が小さかったことも急激な温度上昇の原因だったことが書かれています。
ただ16階以下の外周部分が崩落しなかったことへの評価には多少の食い違いが見られます。日本語資料(大林組の製作)では、16階以下の外周鉄骨に防火被服が施されていたことと、消防の水がかけられて温度の上昇が防げたことの2点を挙げています。確かに防火被服は180分の耐火性能を持っており、たとえ炎が1000℃近くにまでなったとしても相当に鋼鉄の温度上昇を防げたでしょう。比較的短時間の火災であれば上からの重量に対して十分な強度を保っていたことが考えられます。
一方、英語資料(マンチェスター大学の製作)では、もちろん防火被服の重要性について言及していますが、それ以上に17階と16階の間にあるメカニカル(テクニカル)・フロアーの頑丈な構造の重要性を挙げています。上層階の外周が崩落する運動をそれ以下の部分に直接に伝えることを防いだ点です。もしこれが無ければいくら16階より下に防火被服が施してあっても、やはり連続して崩落していたでしょう。これが力学的なショックに対する「防御壁」となったことに間違いはありません。
●ところで、WTCタワーとウインザー・ビルを比較する場合、実際にはさまざまな点で「まるで比較にならない」箇所があります。
あまりにもお粗末な防火対策(というか、全く防火対策をしていない)ウインザー・ビルが全面的な火事になるのは当たり前で、7〜8時間もまるでキャンプファイヤーのように燃えたわけです。これと、防火設備も一応ととのっており、かなり閉鎖的な状態を保って不完全燃焼の明らかな、しかも第2ビルで1時間以内、第1ビルで1時間半しか燃えていないWTCでは、火災の条件が全く異なります。おまけに鉄骨の量や大きさがまるで異なり熱容量が圧倒的に大きいため、NISTが「600℃に達した鋼材」を発見できなかったのも「250℃に達した鋼材」すらほとんど見つけられなかったのも、当然といえるでしょう。
さらに、ウインザー・ビルでは何時間もの猛烈な火災で1000℃近い温度となったと思われる鉄骨部分だけが崩壊したのですが、WTCビルでは明らかに常温の部分までが全面的に「崩壊」したのです。たとえ大マケにオマケして火災現場の鉄骨構造が高熱のせいで崩壊を開始したと認めたとしても、それは全然、常温の部分まで崩壊することの根拠にはならないのです。しかも水平方向に大量の建材を激しく吹き飛ばしながら。
一方で、ウインザー・ビルのコア支柱は熱容量の大きな鉄筋コンクリートであり、火災の熱に耐え得たことが指摘されています。その意味では確かにmsqの言うとおり、「鉄骨構造のビルは火災に弱い」といえるかもしれません。またその意味では、ウインザー・ビルが全面崩壊しなかったことだけをとってWTCタワーが崩壊したことと比較するのは早計だったのでしょう。この点については自説の一部を訂正しておかねばなりません。
しかし、WTCの火災はウインザー・ビルのそれよりもはるかに小規模で(温度が低く時間も短い)あり、しかも火事で無い部分が、上も下も何一つ立体的な構造を残さずに完全に「崩壊」したわけです。これで「鉄骨構造のビルは火災に弱い」などという全く筋違いのトンデモ・コメントをつけるなど「さすがに三流言論詐欺師だけある」と感心せざるを得ません。(こんなことを言うと、あの人、またしても「鉄骨構造のビルは力学的な衝撃に弱い」などというトンデモを言い出しかねませんが。)
●ではWTCのメカニカル・フロアーはどうでしょうか。
WTCで力学的なショックに対する「防御壁」の役割を担っていたのが、4階分をとって建設されたメカニカル・フロアー(スカイ・ロビーを含む)です。どのような高層建築でもこの部分は特別に強化されており、ガラス窓もほとんどついていません。次の写真をご覧ください。
http://image53.webshots.com/553/0/70/88/2071070880037627062vYjsKN_ph.jpg
建設中のWTCタワーですが、コア部分の頑丈な構造が見えます。その一番上の部分に、斜めのトラス構造が全体に施された箇所が見えますが、これが7〜10階にあるメカニカル・フロアー部分です。それより上の41〜44階、74〜77階、108〜109階の部分の写真は見ていませんし、外周部分に具体的にどのような強化策が施されていたのかは、直接に示す資料を知りません。しかし、例えば下の図は第7ビルのものです。ここに2箇所の頑丈に設計されたトラス構造の部分が見られるでしょう。
http://killtown.911review.org/images/wtc-gallery/fema403-5/5-3_wtc7-core-area.jpg
次の写真は上海の高層ビルの例です。
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/thumb/3/33/Shanghai_Shimao_Plaza_Construction.jpg/450px-Shanghai_Shimao_Plaza_Construction.jpg
タワーの外周部分にもこのような構造が作られていたはずで、また床も頑丈に補強されていたと思われます。これが力学的な衝撃に対して何の力も発揮しないなどということはありえません。
拙著『「WTCビル崩壊」の徹底研究』で申し上げているように、WTCのメカニカル・フロアーは最初から「狙い撃ち」的に破壊されました。それがタワーの「崩壊」を食い止めることはおろか、遅くすることすらできなかったのです。
●最後に、拙著『「WTCビル崩壊」の徹底研究』で、このウインザー・ビルのコア支柱を、つい勢い余って「鉄骨ビルのコア」と書いてしまったことに気が付きました。このビルの外周は鉄骨でも他は鉄筋コンクリートです。これでは「コアも鉄骨」のような表現になっています。これはまことに私の筆名どおりあきらかにドジでマヌケな失敗でmsqを喜ばせるものでした。これもまた訂正します。
まあmsqをはじめ「9・11言論詐欺師」どもは、言っていることがどれほど明らかに事実と食い違っていても絶対に訂正も撤回もしないのが特徴の一つですから、その点でも差をつけておくことにしましょう。
(参照:まあ以下に対してmsqが一つでもその説の訂正と撤回をするなら、大いに評価しますがね。)
http://www.asyura2.com/07/war97/msg/241.html
投稿者 バルセロナより愛を込めて 日時 2007 年 10 月 18 日 19:36:16:
ネオコン公式説に尻尾を振り続ける「9・11言論詐欺師」撃退の手引書