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http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2007/05/post_1126.html から転載。
2007-05-20
〔いんさいど世界〕 バルト海の小国、エストニアに対して 世界史上初の「対国家サイバー攻撃」 ロシア政府が関与の疑い 「反ロシア」に警告か?
エストニアという国をご存知ですか? バルト海に面した、エストニア人による小さな国です。エストニア語という独自の言語も持っています。
バルト海で、わたしたち日本人がすぐ思い出すのが、日露戦争のあのバルチック艦隊のバルト。
エストニアはそんなロシアの海の出口、バルト海に面した、人口140万人、国土も北海道の5分の3しかない、小さな国。ソ連崩壊後の1991年に「独立」回復を宣言した、ロシアの隣接国です。
ロシア(旧ソ連)の事実上の衛星国だったことから、残留ロシア人も多く、国民の4人に1人はロシア人だそうです。
対岸のフィンランドと競うように、国を挙げてIT化と取り組んでおり、インターネットの普及率は世界トップクラスと言われています。
そのエストニアがこの春、大規模かつ集中的な「サイバー攻撃」にさらされました。大統領府をはじめ国家機関のウェブサイトにツナミのようなアクセスがなんども押し寄せ、この国のネットを通じた活動をダウンさせてしまいました。世界初、史上初の「対国家サイバー攻撃」が、繰り返し行われたのです。
発端は、首都タリンでの、4月27日の出来事だと言います。
タリンは旧市街が「世界遺産」にも指定されている美しい街ですが、その中心部に立つ、旧ソ連の第二次大戦戦勝記念の銅像が、その日、エストニア政府の手で撤去、移転されました。
これにデモで抗議したのが残留ロシア人たちで、政府当局により1300人が拘束され、100人が負傷、1人が死亡する事態になりました。
エストニアに対する、大がかりなサイバー攻撃は、この危機のさなかに開始されたといいます。
「DDoS(分散的サービス否定)」といわれる、アクセス集中攻撃で、英紙ガーディアンの報道によれば、少なくとも100万台のパソコンが動員され、世界中から、エストニア国内のターゲット(WEBサイト)にアクセスが殺到したといいます。
波状攻撃の第一波は5月3日をピークに吹き荒れ、5月8、9日の第二派へと続き、同月中旬には第3派が荒れ狂いました。
おかげで、エストニアの大統領府、国会、ほとんどの政府機関、政党のウェブサイトがダウンしたほか、主要銀行2行、通信各社、3つの主要報道機関のサイトも閉鎖に追い込まれました。
ガーディアン紙によれば、損害の全容はまだわかっていないそうですが、かなりのダメージがあったことは確かです。同紙は「3週間にわたって、エストニアを無能化した」と書いています。
エストニアは2004年にNATО(北大西洋条約機構)に加盟、翌2005年にはEU(欧州連合)に加わって、ロシア離れを加速していますが、新規加入の同盟国に対する「サイバー攻撃」に驚いたNATOは、専門家をタリンに急派し、エストニア防衛に乗り出しました。
その結果、外国からのアクセスを排除する(国内からのアクセスだけを可能とする)水際作戦で「サイバー攻撃」を撥ね付けることには成功したようですが、これだとエストニアのネットがグローバルな接続から切り離され、ローカルなものになってしまうわけで、抜本的な対策にはなっていないのが実情のようです。
サイバー攻撃者の「公式特定」もできていません。
エストニア政府関係者らによれば、波状攻撃の初期段階でロシア政府機関発の攻撃があったことが確認されているので、どうもロシア政府が背後にいるのではないかと、そのの関与が疑われていますが、ガーディアン紙の問い合わせに対し、駐ブリュッセルのロシア大使はこれを否定、「ロシア政府が関与しているというなら、証拠を出せ」と突っぱねています。
NATOもロシア政府追及には及び腰で、今回のエストニアという同盟国への「サイバー攻撃」を、集団的自衛権の発動対象となる「軍事行動」とはとらえず、反撃は控える態度。
EUもロシア政府との政治的な折衝を通じ、問題解決の糸口をつかみたい考えだそうです。
エストニア政府もロシアを公式に非難する態度には出ていませんが、エストニアの代表紙のひとつ、「ポスティメーズ」の編集長、メルト・コプリ氏が言うように、「ロシア発のサイバー攻撃。疑問の余地はない。政治的な攻撃だ」と、エストニア人の誰もがみな、信じているようです。
かりに真犯人がロシア政府だとして、ではどうして今回、こうしたサイバー攻撃に踏み切ったのか?
背景には個別エストニアにとどまらない、大きな広がりがあるようです。旧ソ連衛星国のポーランドやチェコなどが米欧の「反ロシア包囲網」に加わり、ブッシュ政権が進めるミサイル防衛網の整備などに同調する動きを示していることに、ロシアは神経を尖らせています。
そうした動きに対する警告の意味が、今回のサイバー攻撃にはあったのではないでしょうか?
ところで、こんどのエストニア攻撃に使用されたPCは、いわゆる何者かによって、いわゆる「マル・ウエア」が仕込まれたパソコンが相当数、含まれているようです。他人のPCを乗っ取って、それをサイバー攻撃に使う手口ですね。
ガーディアン紙によると、今回と同じような攻撃は、ことし2月、インターネットの通信の流れを管理するコンピューター・サーバーのうちの3つに対して決行され、一時的なダウンに追い込んだことがあるそうです。
アメリカの国防総省とインターネット管理団体Icann、そしてUltraDSNの3機関のサーバーで、韓国発の攻撃ではないか、と見られているそうです。
ネット世界にも「有事」があるのですね。
こっちの方が、よほど平和な国民生活をおびやかす脅威ですよね。
ネットの「専守防衛」は、日本の現行憲法上の義務であるはず。どうなっているのでしょう?
日本政府関係者、とくに防衛省には聞いてみたいところです。
もっとも、「イージス艦極秘情報」を全世界に「発信・大公開」しているような「お役所」ですから、聞くだけ野暮かも知れませんが……。
「美しい国」の興廃はむしろ「ネット防衛」にあり、各自一層、奮励、努力せよ――でしょうに??!!……。
⇒
http://www.guardian.co.uk/frontpage/story/0,,2081512,00.html