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http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/saitama/news/20070426ddlk11040396000c.html
◇知事ら「安全確保」要望
地上配備型迎撃ミサイル「PAC3」が航空自衛隊入間基地に配備されて30日で1カ月。飛来する弾道ミサイルに自衛隊が初めて迎撃能力を持つことになったが、地元では沖縄のような「反基地」意識が薄いうえ、ミサイル防衛(MD)に対する実感が乏しいことも手伝ってトピックな話題にはなっていない。入間基地を取り巻く現状を追った。【内田達也】
基地正門東隣にある彩の森入間公園は、住民からは今でも「ジョンソン基地」と呼ばれる。休日には芝生で遊ぶ親子連れらの歓声が響く。25日は雨のため、訪れる人もまばら。咲き始めたハナミズキの白い花びらが光っていた。
しかし、PAC3が配備された3月30日早朝、基地正門前では「米軍基地を守るミサイル配備に反対するぞ」との声が響いた。激しい雨の中、市民団体などでつくる「パトリオット3はいらない!入間基地行動実行委員会」のメンバー約20人が太鼓の音に合わせて、シュプレヒコールを繰り返した。さいたま市西区の自営業、堀本秀生さん(53)は「(自衛隊は)国民を守るより、イラクで米軍がやったことを訓練しているように思える」と批判した。県警が警備にあたり、混乱もなく、PAC3の機材を乗せたトラック10台はメンバーの目の前を通り、基地内に入った。
基地は入間、狭山両市にまたがり、敷地の93%は狭山市。同市には毎年5億〜6億円の基地交付金が入るが、22日の市議選がそうであったように、7月予定の市長選でも「基地問題」は争点化しないとみられる。
仲川幸成市長は「騒音や事故などの懸念もあるが、基地撤去の要望はない。旧陸軍航空士官学校以来の歴史もあり、反対運動が広がりにくいのでは」とみる。狭山市の製茶業、浅見誠次さん(50)は「北朝鮮に備えてのミサイルだということは分かるが、身近な問題ではないので近所で話題になることはない。はるか上空でミサイルを撃つことに、住民が賛成や反対を表明することができるだろうか」と首をかしげた。
16部隊と隊員約4300人を擁する空自最大級規模の基地。米軍「ジョンソン基地」を経て、周辺を学校や公園、団地などの用地に返還し、現在の形になった。仲川市長が「『基地の街』という意識はない」と言うように、沖縄で見られる深刻な対立はない。
隣接する県営狭山稲荷山公園では夏に「ハイドパーク・ミュージック・フェスティバル」が開かれる。軍人が居住していた「米軍ハウス」に、元YMOの細野晴臣さんや歌手の吉田美奈子さんらのミュージシャンが移り住み「狭山アメリカ村」と呼ばれていた60〜70年代の熱気を再現するライブだ。
ただし、PAC3配備によって基地の安全確保には関心が向かう。入間市の木下博市長は「自衛隊には、的確な情報をスピード感を持って提供してほしいと申し入れた。何かあった時に、情報音痴になることだけは避けたい」と表情を引き締める。上田清司知事は11日の定例会見で「国民の生命と財産を守るため、防衛省の責任として行ったことは評価する。事故がないように要望した」と述べた。
◇4基地で2800億円、12年度まで1兆円
防衛省は2010年3月までに浜松(静岡県)、岐阜、春日(福岡県)の高射群にPAC3を配備する予定。整備費は4基地で約2800億円。ミサイル購入を加えると計約3000億円だ。ミサイル防衛にかかる経費は、イージス艦に搭載する海上配備型迎撃ミサイルSM3なども含めると、整備完了の12年度までに1兆円に上るとされる。
◇「意義は抑止力」−−第1高射群・物部司令
入間基地に本部のある第1高射群の物部明徳司令は毎日新聞のインタビューに応じ、PAC3配備の意義を「それは抑止力。ミサイルを発射しない状況が続くのが一番良い。『戦わずして勝つ』だ」と強調した。航空機を迎撃するPAC2が同基地に配備された90年代に比べ、北朝鮮のミサイル発射など脅威が顕在化していることについては「PAC3に対する期待は感じる。ミサイル対処能力は、イージス艦も含め、現在の科学技術では最高水準。隊員の質も高く最高レベルの集団だ」と述べた。基地が攻撃目標になるという懸念に対しては「攻撃する方は悪くないのか。鉄道など民間を狙ったテロさえある」と語った。
物部司令は1978年に防衛大卒後、各地の高射部隊で勤務、4月1日から現職に就任した。【内田達也】
毎日新聞 2007年4月26日