★阿修羅♪ > 戦争91 > 180.html
 ★阿修羅♪
米国の対イラン政策の迷走〜背後に在米ユダヤ社会の「分裂」あり
http://www.asyura2.com/07/war91/msg/180.html
投稿者 これは大変だ 日時 2007 年 4 月 12 日 20:47:23: Kq60bFHMy4Bd.
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20070411/122358/?P=3

米国の対イラン政策の迷走〜背後に在米ユダヤ社会の「分裂」あり
さりげなくも明確な方針転換を宣言したライス国務長官

2007年2月27日、米上院予算委員会で証言したコンドリーザ・ライス国務長官は、イラク政府が3月10日に近隣諸国を集めてイラクの治安問題を討議する地域会議を予定しており、米国もこの会議に参加する意向であることを明らかにした。

 「イラク政府は広範な近隣諸国との初めての会議を準備しており、それは3月の前半にバグダッドで開催される予定です。招待される国はイラクに近接する国々であり、同じ地域の他の国々、多国籍の国際機関、そして国連安保理の常任理事国のメンバーであり、もちろん米国を含みます。最初の会議に引き続いておそらく4月の前半に大臣レベルでの会議も開催される予定です。ここでは地域の国々、隣接する国々、国際機関や常任理事国に加えて、主要8カ国(G8)のメンバーも加わることになる予定です」

 「イラク政府はシリアとイランも含めたすべての近隣諸国をこれらの地域会議に参加してもらうように招聘していることを指摘したいと思います。私たちはすべての政府がこのイラクとの関係を改善させる機会をものにして、地域の平和と安定のために努めることを願っています」

 こうしてライス国務長官はさりげなく、しかし明確に対イラン政策の転換を宣言したのであった。

ジャーナリストが明らかにした米政府の対イラン秘密工作
 ライス国務長官は年初に行った議会証言では、中東地域が「主流派」―サウジアラビア、エジプトやスンニ派湾岸諸国―と「過激派」すなわちイラン、シリアやヒズボラなどの2つに分裂しているというレトリックを使い、イランやシリアと外交交渉に入るのではなく、むしろ「主流派」との関係を強化・再編成して、「過激派」に圧力をかけて孤立させる方策を取ると述べていた。

 そして米軍は実際にイラクで活動中のイラン人外交官を逮捕・拘束し、またイランからイラクのシーア派武装勢力に渡されているとされる高性能路肩爆弾の部品、迫撃砲やロケット砲を一般公開してイランを非難するなど、一連の「過激派」への圧力を実行に移していた。

 ちょうどこのライス長官の議会証言の行われる直前の2月25日には、辣腕ジャーナリストのセイモア・ハーシュが、ブッシュ政権の対イラン政策に関するセンセーショナルな記事を発表していた。これによると、ブッシュ政権は「方向の向け直し」戦略と呼ばれる新しい中東戦略を実行に移しているということだった。この新戦略によると、サウジ、エジプト、湾岸諸国等の「穏健派」が、イラン、シリア、ヒズボラ、ハマス等の「過激派」の台頭によって動揺しているとして、米国は穏健派勢力との関係を強化し、この国々との同盟を再編成することでイランを中心とする過激派を包囲し、孤立させるというものだった。

 ハーシュはまた、この新たな戦略の一環として、公にはしていないものの、イランを不安定にさせるための秘密工作もあるとしており、実際にチェイニー副大統領周辺が中心となって、サウジアラビアやイスラエルと協力する形でイランに対する秘密工作を開始している、と報じたのである。ブッシュ政権は、中東における最大の脅威をシーア派の影響力増大であると見なし、スンニ派の過激派勢力に肩入れしてでもヒズボラなどシーア派勢力への攻撃の手を強めるという方針を決めたというのである。

 つまり、イランが支援する勢力を弱体化させるために、サウジがバックアップする勢力に対する支援を強化する秘密工作を開始したというのである。

 今年の2月に入ってブッシュ政権は、イラクで米軍を苦しめる爆破装置の部品がイランから入ってきているとしてイランを批判し、とりわけ革命防衛隊が関与しているとして、イランがイラク武装勢力に武器を供給し、訓練を施して米軍の殺害を支援しているという主張を展開していた。ブッシュ政権はつまり、イラクの治安がよくならないのは、イランが介入してイラクの武装勢力への支援を続けているからだという大々的なキャンペーンを行ったわけである。ハーシュ論文によれば、過去数カ月の間に米軍は人道支援活動を行っているイラン人を含めて500人近いイラン人を拘束、逮捕したという。

 またハーシュ論文によれば、「ブッシュ政権はイランの兵器開発プログラムに関するインテリジェンスの分析に力を入れているが、こうしたインテリジェンスの多くはイランで情報収集活動を行っているイスラエルの情報機関からもたらされている」と書いている。さらに米国防総省はイランを空爆するための計画策定にも力を入れている、とハーシュは断言する。

一度は無視されながらも、復活した対話路線
 ハーシュはこのようにブッシュ政権が対イラン秘密工作も含めた強硬策に打って出ている様子を詳細に報じていた。それが一転、イランとの対話路線に転じたのはなぜか?

 そもそも「イランとシリアを含めた近隣諸国や国連安保理常任理事国のメンバーを含めた地域会議」というアイデアは、2006年末に超党派の「イラク研究グループ」がまとめた提言、いわゆる「ベーカー提言」に含まれていたものだった。

 この提言はブッシュ大統領に事実上無視されたと思われていたが、完全に死んではいなかったのだ。2007年3月13〜19日号の「インサイト」誌は、ブッシュ政権と近い議会メンバーの証言を載せている。「最初、ブッシュはベーカーを完全に切り捨てて、会おうともしなかった。するとブッシュの父が介入してベーカーが戻ることになったのだ」。ブッシュ大統領は当初イラク研究グループの提言に真っ向から反対し、昨年12月以降ベーカーと会うことを拒んでいたが、ブッシュ父との会談後、再びベーカーがホワイトハウスに出入りするようになったのだという。

 ブッシュ大統領がベーカー提言を取り上げないと当初決めた後も、ライス長官はベーカーとの接触を続け、ベーカーと近いゲーツ国防長官と共に、いかにしてイラン、シリアとの交渉を成立させるかについて密かに研究を続けていたという。もともとイラク研究グループは、米議会がブッシュ政権のイラク政策に対する代替案を模索する中で生まれたものであり、議会の多数派を民主党が握る中で、事実上の議会の提言であったベーカー提言を完全に無視することはできなかったのであろう。このため今回ライス長官が打ち出した政策転換は議会で歓迎を受けている。

分裂する在米ユダヤ社会
 しかし米議会はもともと、対イラン強硬派のイスラエル・ロビーの影響が強く反映される場所である。議会がイランに対する穏健路線を取ろうとする背景は何だろうか?

 ここにきて米国の中東政策に一定の影響を与えてきた在米ユダヤ社会が分裂していることも、対話路線を後押しする好材料となっている。ステニー・ホイヤー下院院内総務は議会の親イスラエル派として知られているが、トム・ラントス議員やサム・ブラウンバック議員のような強硬なイスラエル支持者まで、今回のイランやシリアとの対話路線を支持している。

 従来在米ユダヤ団体はイスラエルの安全保障のためにアラブやイランに対する強硬策を支持する傾向が強かった。2003年のイラク戦争も、主要なユダヤ団体は強力に支持してブッシュ政権の中東政策を支えてきた。しかしイラクの泥沼化でブッシュ政権の中東政策が行き詰まる中で、「ユダヤ人が米国をイラク侵攻へと引き込み、今またブッシュ政権にイラン攻撃をさせようと圧力をかけている」といった見方が広まり、ネオコンや在米ユダヤ社会に対する反感が急速に強まっているのである。

 また在米ユダヤ団体はイラクやイランに対する強硬論を支持する傾向が強いが、在米のユダヤ人自体は統計的には穏健派が多く、団体の強硬派と一般ユダヤ人の穏健路線との間で深刻なねじれ現象が起きていることも指摘されている。

 2007年初めのギャロップ社の調査によれば、在米ユダヤ人の77%が「イラク戦争は間違いだった」と考えており、平均的な米国人の52%を大きく上回っていることが分かっている。この世論調査によれば、ユダヤ系の反戦姿勢は党派の違いに関係なく高くなっており、民主党のユダヤ人も共和党のユダヤ人も両党の非ユダヤ人党員と比べて、戦争に反対する傾向が強いことを示している。

 「これらのデータは、平均的な在米ユダヤ人は、たとえ共和党員であり他の問題でブッシュ政権の政策を支持しているとしても、戦争には反対であることを示している」と同社は結論づけている。

 こうした一般的なユダヤ人たちと違い、多くのユダヤ系団体は表立って戦争反対を訴えることには極端に消極的であり、事あるごとに政権への支持を表明してきた。ところが最近行われた在米ユダヤコミュニティーの公共政策を調整する主要組織である「公共問題に関するユダヤ人評議会(Jewish Council for Public Affairs)」(主要なシナゴーグ連盟、著名な全国組織、そして122の地方ユダヤ系組織で構成される)の年次総会では、400人の代表者が様々な問題に関する決議を採択する中で、イラク問題に関する決議は結局採択されなかったという。

2003年の米国によるイラク侵攻前の同総会では、JCPAは「イラクの大量破壊兵器保有を防ぐために最終手段として武力行使を行うことを支持する」声明を発表していた。在米ユダヤ社会が現在いかにイラクやイラン問題で分裂しているかを示すものである。

 JCPAの傘下団体の中でも少なくとも2つの団体、反誹謗連盟(ADL)とアメリカ・ユダヤ人委員会(American Jewish Committee)の2つはイラク戦争でブッシュ政権を支持する決議を採択することを主張しており、反対に改革派の改革派ユダヤ教徒連合(Union for Reform Judaism)は反戦路線へと明確に転向して対立を深めているという。同様にJCPAの年次総会ではイランに対する決議も見送られている。参加者の意見がまとまらなかったからである。

反ユダヤ主義の広まりに対する危機感
 米国の知識人たちの間では現在「ユダヤ人は米国をイラク侵攻へと引き込み、今またブッシュ政権にイラン攻撃をさせようと圧力をかけている」といった認識が広がりを見せており、在米ユダヤ人たちの間ではそうした反ユダヤ主義の広まりに対する危機感が強まっている。

 退役陸将で民主党の大統領候補になったこともあるウェズリー・クラーク氏も最近、ユダヤ人が米国の外交政策に過剰に介入していると指摘して「ニューヨークの金融界の連中が米国をイランとの戦争に押しやっている」と公然と述べた。これまでは考えられなかったような事態である。

 こうした風潮が強まる中で、最も熱心な親イスラエルのロビイストでさえ、イスラエルと米国の正式な軍事同盟というアイデアを促進することに懸念を感じるほどである。ある有力な親イスラエル・ロビーの代表者は、米国がイスラエル防衛のコミットメントを尊重しなくなることを懸念して、「イスラエルとの正式な同盟を構築することは米国にとってアラブ世界との関係という点から政治的なコストが高くなりすぎるだろう」と述べ、現在のユダヤ社会に蔓延する空気を表現している。

 こうした在米ユダヤ社会の変化を受けて、米議会はブッシュ政権の対イラク、対イラン政策に対する反対意見を堂々と論じ、ついにブッシュ政権側もそうした圧力に屈するようになっているわけである。

 このように米国はまたしてもイランとの交渉路線へと大きく舵を切り直した。イランの核問題では国連安保理における多国間外交でイランに圧力をかけながらも、イラクの治安問題をめぐりイランとの対話の方向へと軌道を修正させている。そしてその背景には、これまでの対イラン強硬路線を後押ししてきた在米ユダヤ社会の分裂があったのである。

 次へ  前へ


  拍手はせず、拍手一覧を見る

▲このページのTOPへ      HOME > 戦争91掲示板

フォローアップ:

このページに返信するときは、このボタンを押してください。投稿フォームが開きます。

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。