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イラクやアフガニスタンで「米国の自由を守るために戦った英雄」のはずの傷病兵が帰還後、お役所仕事のためにカビだらけの病院に放置されていた――。ワシントンのウォルター・リード米陸軍病院をめぐる醜聞が米国社会を揺さぶっている。「連邦政府の無策で多数の犠牲者を出したハリケーン『カトリーナ』の再来」との声まで出ており、ブッシュ政権にとって新たな痛手となりつつある。
この問題はワシントン・ポスト紙が2月中旬に特報。議会下院の小委員会が今月5日、現場の病院で公聴会を開き、さらに注目を集めた。内部告発した患者の兵士や家族らが時に涙を流しつつ、「悪夢だった」などと証言する様子がニュースで繰り返し放映された。
問題は、緊急治療が終了し、いったん「外来」扱いとされた患者が、最終的な治療方針の決定を待つ間に住む施設に集中している。
イラクで04年11月に自動小銃で狙撃され、左の眼球を失い、脳にも損傷を負ったダニエル・シャノン3等曹長は、入院から数日後には外来患者用の施設に移るよう言われた。それから2年以上経過しても、事務手続きの遅れから、陸軍による治療方針が示されず、外来患者のままだという。
ジェレミー・ダンカン技術兵はやはりイラクで仕掛け爆弾攻撃を受け、左腕の大半を失い、左目も失明した。報道されるまで、壁一面に黒カビの生えた外来用病室に住まわされていた。何度も管理者に苦情をいったが改善されず、「どんな人間も住めない状況だった」と振り返った。
シャノン曹長は「戦争のコストを削減する制度のせいで、兵士たちは本来よりはるかに低い水準の介護しか与えられていない」と政府や軍の対応を批判した。米軍再編の影響で同病院は数年内に閉鎖される予定。このため、医療以外のスタッフを民間委託していたことも遠因ではないか、との指摘が議員らから出ている。
2007年03月07日13時12分
http://www2.asahi.com/special/iraq/TKY200703070157.html