★阿修羅♪ > 戦争87 > 853.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
米、批判覚悟 最後の賭け
大統領、『勝利』に固執
ブッシュ米大統領は十日発表したイラク政策の「新戦略」で、駐留米軍の増派により、あくまでイラクでの“勝利”を目指す決意を表明した。共和党が大敗した米中間選挙以降、国内で急速に強まる反戦圧力をあえて振り切り、大統領は政策の失敗回避に向けて、最後の勝負に出た。 (ワシントン・小栗康之)
「われわれは戦略を変える必要がある。米国民のためイラクで成功を収めなければならない」
米東部時間、夜九時すぎ。全米注視のテレビ演説で、ブッシュ大統領はこう強調した。
新戦略が検討される発端となったのは、昨年十一月の中間選挙だ。最大争点のイラク政策で、駐留米軍の撤退を求めた民主党が大躍進。共和党ブッシュ政権は国民から同政策の大幅見直しを迫られる形となった。
それを受け、ベーカー元国務長官ら超党派の「イラク研究グループ」は昨年十二月、駐留米軍の「二〇〇八年までの段階的撤退」を提言した。さらには、イラク政策の推進役だったラムズフェルド前国防長官でさえ、更迭される前、政権に「一定規模の駐留削減」を求めるなど、流れは大きく「撤退」の方向に傾いていた。当然、この日の新戦略にも、撤退への道筋を付ける内容が盛り込まれることに、米国内の期待は高まった。
ところが、大統領の選択は「段階的撤退」や「撤退時期の明示」などとは全く逆方向の「増派」だった。大統領はテレビ演説で「増派すれば、米軍帰還の日は早くなる」と口調を強めた。
米国の関与は無期限ではないものの、増派によってイラクの治安を回復させ、イラク政府の独り立ちを早められれば、イラク政策は「成功」であり、駐留米軍撤収への出口も見えてくる。「撤退」ではなく、勝利して「撤収」する−。これが大統領の判断だった。
「米国はイラクで失敗することは許されないのだ」。新戦略の発表前、ホワイトハウス高官は言明した。現段階で撤退すれば、ブッシュ政権のイラク政策は完全に「失敗」したことになる。大統領としてはその選択だけはできなかった。
発表に向け、ブッシュ政権内では、新戦略の軸となる「増派」が米国民に理解されるかどうか、周到な計算がなされたという。結局「国民は駐留米軍の早期撤退を必ずしも求めているわけではなく、イラクの治安回復を望んでいる」と分析。具体的な効果は不透明だが、増派によって治安回復の兆しが出れば、国民の批判は弱まるとの見通しから決断したようだ。
もっとも、増派によって「米兵がさらに危険にさらされることになる」(リード民主党上院院内総務)のは確か。ブッシュ大統領自身も新戦略のテレビ演説で「イラク国民や米国民のさらなる犠牲を覚悟しなければならない」と指摘した。
イラク駐留米軍の死者数は既に三千人を超え、これが米国内の強い厭戦(えんせん)機運につながっている。増派が実際に治安回復につながらなければ、早期撤退論が今まで以上に強まるのは必至だ。
米紙ニューヨーク・タイムズはこの新戦略を、ベトナム戦争当時、国民世論に反して戦争を加速させたニクソン大統領を引き合いに、それ以来の「大統領による“賭け”だ」と報じた。
〇八年末で二期目の任期切れ。次の選挙もないブッシュ大統領にとって政治的に失うものは何もない。とはいえ、増派には政権党の共和党内や米軍内にまでも反対論がくすぶる。そうした批判を押し切って決断した増派が失敗すれば、ブッシュ大統領の歴史的な名誉は地に落ちる。それ以前に、上下両院で過半数を握る民主党の怒りを考えると、「大統領弾劾」に動く可能性さえ取りざたされ始めた。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20070112/mng_____kakushin000.shtml