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http://www.chunichi.co.jp/article/feature/yui_no_kokoro/list/200804/CK2008040502001276.html
小さな善意集めたい 地域の力<1>
2008年4月5日
のわみ相談所の近くで行われる炊き出しには、20人以上の路上生活者らが集まる。若者も少なくない=愛知県一宮市内で
体は小さいが、声はよく通る。
「こんちわぁ」
大森信子(60)があいさつすると、古ぼけた4階建てのビルが途端ににぎやかになった。愛知県一宮市にある「のわみ相談所」の宿泊所。路上生活を抜け出そうとする人たちが暮らす。
「こんなかばんをもらったけど、いる?」「いいねえ」「この服は?」「寒くなるで助かるわ」
がやがやとビルの住人が届け物を囲んで品定め。近所で酒屋と食堂を営む大森は、世話好きで顔が広く、店に「いらない物を分けて」と張り紙すると、生活用品から大型家電まで、次々に集まる。
宿泊所を開いた林隆春(57)と三輪憲功(のりかつ)(63)には、そんな大森が心強い。
「大森さんがいると、ご近所も安心するんだわ」
市内で人材派遣業を営む林は、長年同居した全盲の義父への冷たい風当たりに「なんて水くさい国なんだ」と思ってきた。路上の人を見ると、じっとしていられない。外国人労働者の相談に携わってきた三輪は、仕事の失敗で自殺まで考えたとき、路上生活者を他人と思えなくなり、声を掛け始めた。
支援を通じて出会った2人が3年前、一宮でスクラムを組んだ。
「炊き出しをしたら、人数が分かる。やってみるか」
林が会社の駐車場に豚汁を用意し、三輪は自転車で公園を回ってチラシを配った。集まった人たちに「アパートに入らない?」と生活保護を勧めた。宿泊所として当初、自社の社員寮の空き部屋を提供していた林が決心し、1000万円の借金でビルを買った。
大森は2年前、三輪に聞いて初めて炊き出しをのぞいた。並んだ人たちの服がどれもぼろぼろで見ていられない。「ちょっと待ってて」。児童養護施設のために集めた古着が自宅にあった。大人用は余っている。自転車にセーターやジャンパーを積んできた。
他人の世話が苦にならないのは「親のおかげ」と思う。高齢の母は実家で畑を障害者のために開放し「みんなが成長する様子を見るのが楽しい」と大森に話す。そんな母に頭が下がるという。
「ちょっとしたことでも、人の役に立ちたい。そんな気持ちって、誰でも持ってるでしょ」
大森の世話好きと顔の広さ、腰の軽さがつなぐのは、人の心にあって自分からは言い出しにくい「誰かのために」という思い。彼女の手帳には、これまでに協力してもらった37戸の「ご近所さん」の名前がある。 =文中敬称略
× ×
例えば夕方、エプロン姿のおばちゃんが「しょうゆ貸して」と戸をたたく。地域の問題には寄り合って知恵を出し合う。かつては、そんなつながりが当たり前だった。思いやりを分け合うご近所が持つ「結いの心」。もう一度見直してみたい。
【のわみ相談所】 路上生活者や在日外国人を支援する任意団体。林隆春会長、三輪憲功事務局長。1998年ごろ名古屋で活動を始め、昨年、愛知県一宮市に宿泊所を開設。入所した28人中20人がアパートに移った。1日3食付き500円だが、就労前は求めない。「のわみ」は三輪ら初期の関係者の頭文字から。