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【コラム】筆洗 【東京新聞】 2007年6月14日
「じん(塵)肺」とは、長年の間、肺に粉じんを吸い込み、肺機能が低下する職業病をいう。炭鉱や採石場、アスベスト(石綿)を扱う現場などで働く人たちが苦しんだ。一九六〇年には、じん肺法もできている▼国発注のトンネル工事で、コンクリート粉じんの防止対策を怠った国の責任を問う「全国トンネルじん肺根絶訴訟」で、国は厚生労働省令を改正して対策に取り組むことを条件に和解することを決めた。今ごろまだそんなことを言っているのかという驚きが先に立つ▼防止対策については二〇〇四年に、福岡の炭鉱労働者が起こした「筑豊じん肺訴訟」判決で、最高裁は「粉じん防止の規制権限を行使しなかったことは違法」とし、「省令制定」についても「立法不作為の違法」を明確に指摘している▼今回の和解条件となった「現場で粉じんを測定し、換気を義務づけ、防じんマスクの着用や、労働時間を制限する」など、当然のことだろう。年金の電算入力事務では、社保庁職員と「一日五千タッチまで、四十五分につき休憩十五分」の協定をあんなに手際よく結んだというのに▼近刊の写真集『筑豊 ヤマが燃えていた頃(ころ)』(井手川泰子編、河出書房新社)には、炭じんで全身真っ黒の炭鉱労働者と子どもたちの入浴風景や、屈託ない笑顔が懐かしい▼六〇年代までに全国の炭鉱は“なだれ閉山”し、労働者たちは全国に散った。所在がつかめず、写真のネガ探しに苦労したと担当編集者。彼らは老後もじん肺に苦しみ、年金だって満足に受け取れていなかったのではないか。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2007061402023952.html