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http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071226ddm002040014000c.html
薬害C型肝炎訴訟:首相が謝罪 救済「投与証明で」 原告団「法案明記を」
薬害C型肝炎訴訟の和解交渉決裂から5日後の25日、自民、公明両党が議員立法の早期成立を確認する一方、福田康夫首相と原告側との面会が実現した。国の責任をどう表現するかなど、詰めなければならない課題も残るが、決着に向けた歯車が大きく回った。【吉田啓志、清水健二、竹島一登】
原告側の弁護団は、被害者一律救済の議員立法案が浮上した直後から、補償の手続きが司法から行政に移ることへの警戒を強めてきた。法案作りを担当する与党が被害の認定を司法に委ねる方針を決めたことで、一応の安心感が広がっている。
全員一律救済について、弁護団はこれまで、既に提訴している約200人の和解成立後に追加提訴を重ねて全員が和解金を受け取る方法を想定していた。しかし、新たな法律ができると、裁判を起こさなくても、新法に基づく行政手続きで給付を受けることが可能になる。ハンセン病訴訟や中国残留孤児訴訟は、大筋この方法で決着が図られた。
ただし、この方法だと、給付を受ける「有資格者」の認定を、裁判所以外の機関が行わねばならない。ハンセン病療養所の入所経験や、残留孤児であることの証明は比較的容易だが、薬害肝炎の場合は、感染原因の認定で新たな紛争が起きかねない。医師の投与証明だけでカルテのない原告や、血液製剤投与時に輸血も受けた原告に対しては、国は裁判で因果関係を争っている。
もし被害の認定を行政機関が担い、これまでの国側の主張に沿うような厳しい審査をすれば、最大約1000人と推定される原告は、一部が切り捨てられる恐れがある。さらに認定を却下された被害者が処分取り消し訴訟を起こし、裁判所が別の判断をすれば、水俣病や原爆症のような「二重基準」が広がって泥沼化しかねない。このため原告側は「新法を給付の法的根拠として、あくまで裁判上の和解をすべきだ」と主張してきた。
裁判上の和解による解決は、判決と同じ効力を持つ和解調書が作られることから、輸血などによる肝炎感染に問題が広がるのを懸念する法務省や厚生労働省の官僚には、依然抵抗感もある。
今後の提訴者に対し、投与事実や因果関係について国側が争う可能性もあり、原告側は引き続き「投与証明があれば救済」という明快な基準を、法律に盛り込むよう求める構えだ。
◇「長年の苦痛」、盛り込みへ
焦点の一つである「国の責任」を法案にどう盛り込むかについて、与党は薬害患者らに長年苦痛や苦労を与えたことに対する責任がある点を指摘する方向だ。
政策の誤りを認め、被害者の一括救済を明記したハンセン病補償法などを念頭に置いているとみられる。
薬害肝炎訴訟で、首相が表明した「一律救済」を実現する以上、国はすべての薬害患者に何らかの責任を認めることが前提となる。根拠なしに税の支出はできないからだ。
ただ、原告の主張通りフィブリノゲンが使われた全期間に国の責任を認めるなら、過去には「問題なし」とされながら、新たな知見で問題が発覚した薬害にも責任を認めることになる。「全期間国に責任なし」との判決(仙台地裁)もあり、国の抵抗は強い。
一方で、患者の線引きをすれば、同じ薬が原因なのに特定投与期間の患者を特別扱いすることになる矛盾が生じる。双方を満たす一律救済とするには、賠償色を薄めた「法的責任でない責任」を国が受け入れるしかないと与党は判断した。
原告側は「薬害を発生させた責任」を追及しているが、その趣旨は「薬害を防げなかった責任」であり、国と原告が折り合う余地は十分ある。
◇意思決定、ドタバタ−−首相裁定、立法化/与党内から、異論/国の責任、法案に
与党は何とか「落としどころ」に行き着いた。ただ、ここに至る経緯は意思決定の不安定ぶりを露呈するドタバタ劇にも映った。
「原告と役所の主張を踏まえると、議員立法しかないのではないか」。与謝野馨前官房長官が21日、首相官邸に首相を訪ね、論点メモを示しながら裁定を促した。与謝野氏は法務省との太いパイプで知られる。「政府としての対応の限界」を感じる官僚の意向も働いていたとみられる。
同じ日の官邸。与党国対委員長が町村信孝官房長官に対し、首相あての「大阪高裁の第2次和解骨子案の前に政治判断を」との文書を提出。和解決裂が政権のダメージとなりかねないとの危機感が背景にあった。
町村氏は「裁判所の判断をベースにするのが原点」と語るなど、霞が関寄りの発言を続けたが、首相は与謝野氏の訪問の後、自民党の谷垣禎一政調会長に「議員立法の研究を」と指示した。
党側のゴーサインを受け、首相は23日に議員立法提出を表明。これで決着するはずが、原告との窓口の与党肝炎対策プロジェクトチームから「民主党との調整がつくのか」との声が上がったため、谷垣氏と与謝野氏が24日に「道義的責任」を何らかの形で法案に盛り込む方向を確認した。公明党の漆原良夫国対委員長も独自に原告弁護団と接触。「細かくやりすぎると障害になりかねない」と柔軟な対応を要請した。司令塔不在の与党の迷走。「首相を支える官邸から知恵が出てこなかった」との指摘も出ている。
一方、参院の与野党逆転の中、早期成立を図るには民主党の協力も欠かせない。民主党の鳩山由紀夫幹事長は25日夜、谷垣氏に「ちゃんとした法案なら賛成する」と伝えたが、26日以降も限られた時間の中で与野党の駆け引きは続きそうだ。
毎日新聞 2007年12月26日 東京朝刊
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