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2007年12月18日
井原勝介岩国市長を応援する
米軍の空母艦載機部隊の岩国移転に反対し補助金交付を打ち切られた岩国市。その不当さと闘っている井原勝介岩国市長を応援するシンポジウムが16日に岩国市で行われた。パネリストの一人として招待された私は、新幹線を乗り継いで栃木県の那須塩原市から山口県の岩国市まで駆けつけた。井原市長に会って一言激励したかったのだ。岩国市民に私のメッセージを届けたかったのだ。その思いで駆けつけた。
私が送ったメッセージの趣旨は次のとおりである。掛け値なしの私の本心である。
「人と協力する事の出来ない人間、いつまでたっても官僚から抜け切れない人間であると、私はよく批判される。そんな私が、わざわざ栃木県から岩国市まで駆けつけてきた。その理由はただ一つ、今日ここに集まった皆さんと共に、井原市長を応援したかったからである。
元キャリア官僚の井原市長が、国の不合理な暴政と闘っている事に私は心から共感する。感動すら覚える。私も元官僚である。国を相手に闘う事のつらさ、厳しさを誰よりも知っているからだ。
井原市長の主張には一点の誤りも無い。言う事を聞かないからといって理不尽な補助金カットを行おうとしている国の政策は、どう考えても間違いだ。住民から選ばれた市長が、「苦しめられてきた住民にこれ以上の更なる犠牲を求める訳にはいかない」と国に申し立てを行う事のどこが間違っているというのか。話し合いを拒否しているのは政府や外務省の方なのである。
私ができる事は、国際政治という観点から井原市長を応援することである。国際政治の観点から見た政府の誤りを指摘し、皆さんに目覚めてもらう事である。
今日は特に二つの点を強調したい。
一つは、在日米軍のために我々が犠牲を払う必要性はもはやなくなりつつあるという事実である。皆さんの中には、米軍が日本を守ってくれる以上、我々も少々の犠牲は甘受しなければならないと思っている人がいるかもしれない。この認識こそ大きな間違いなのである。政府・外務省の嘘に騙されているのである。
1951年に日米安保条約が締結されて以来、日米安保体制は今日まで日本の国是になってきた。その安保体制とは、極東におけるソ連共産主義の脅威から守ってもらう代わりに日本全土に米軍基地を受け入れると言うものである。終戦直後の判断としては、それは正しかったかもしれない。しかし国際情勢は変化する。
この日米安保体制は、冷戦が終わった時点で大きな転換期を迎えた。ソ連共産主義の日本に対する脅威はなくなったのだ。
そして9・11が在日米軍の役割を決定的に変えてしまった。9・11を契機に米国は「テロ」を唯一・最強の脅威と公言して世界の米軍を再編するようになった。もはや在日米軍基地は日本を守るためではない。米国の「テロとの戦い」の展開基地となるのだ。この事は米国自身も公言している。政府・外務省はその事を一言も国民に説明することなく、受け入れるしかないの一点張りである。私たちはその不誠実さに気づかなければならない。
米軍再編に協力するよう求められた外務省は、その内容を知って腰を抜かさんばかりに驚いたという。それは、安保条約を超え、憲法9条を否定するものであったからだ。とても呑める代物ではない。しかし米国の要求は断れない。
本来ならばここで安保条約を作り直し、憲法9条改憲を行わなければならなかった。しかし国民の反対を恐れる外務省にはとてもそんな事はできない。そこで外務官僚が考え出した浅智恵は、「米軍再編への協力は憲法9条や安保条約とは関係のない事である、世界に影響力を有する日米両国が、世界の平和のために軍事協力を進める事は当然だ」と強弁し、政府だけで決定できる共同発表という紙切れだけで対米軍事協力を約束してしまったのだ。その名も「日米同盟:未来のための変革・再編」と呼称する紙切れである。
とんでもない超法規的措置である。こんな一方的な政府・官僚のごまかしのために、これ以上日本国民が犠牲を強いられる理由はまったくないのである。
もう一つは、政府が進めている国民分断政策の卑劣さである。米軍再編に従う自治体には無駄金さえもばら撒く一方で、岩国市のように住民の反対の声を伝えようとする自治体には必要な金さえもビタ一文出さない、この日本政府のやり方は、私に米国のパレスチナ政策を思い起こさせる。
イスラエルの不当な弾圧政策に抵抗するパレスチナ人を、米国は親米従属派と抵抗派に分断し、一方には金や武器を与え、他方には金も食料も医療品までも拒否する。かくて親米派と抵抗派が分裂し、殺しあう。やがて抵抗派の内部でも、これ以上抵抗すると生きて行けないからあきらめよう思い始めるグループと、最後のひとりになっても闘うという強硬グループに分断され、内部対立に引き裂かれる。こんな悲しいことは無い。岩国市民は決して分断されては行けない。今こそ結束しなければならないのだ。我々はオリーブと塩だけでも生きていく事が出来ると叫ぶパレスチナ人の心意気を私は今思い出している・・・」
集会を終え、帰路につく私を岩国駅まで私を見送ってくれた井原市長に、私は車の中で「国家権力のする事だから、最後は艦載機部隊の移転を強行して来るでしょうね」とあきらめ顔でつぶやいた。その私のつぶやきに答えた井原市長の次の言葉は衝撃的であった。
「いや、そうならないかもしれません。米国にとって艦載機部隊の岩国移転はそれほど重要な事ではないと聞いています。その移転のために住民の反対を招くような補助金交付の打ち切りというやりかたを、米国はむしろ不快に思っているのではないでしょうか。もっとうまくやれないのかと。岩国住民の反対が続けば、日本政府よりもむしろ米国のほうが移転しなくてもいいと言い出すかもしれません。少なくとも移転の一時凍結は出来るかもしれません・・・」
この井原市長の発言に私は目からうろこが落ちる思いがした。米国の方ばかりを向いて政策を進める日本政府は、その米国の考えさえも十分に理解しないまま、国民に不必要な犠牲を強いているのだ。それほど稚拙な政策が行われてきたのだ。
政府や外務省が唱える日米同盟至上主義は、米国の政策の転換ではしごを外される日がやがて来るに違いない、そういう思いで私は岩国を離れたのであった。井原市長ら岩国市民の闘いはこれからが正念場である。米軍基地を抱える住民たちはもとより、全国のすべての国民が注目していかなければならない闘いである。
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