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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2008011202078858.html
2008年1月12日
参院の「ノー」の意思が衆院の再可決で即座にひっくり返った。賛成の世論が広がりを見せていないにもかかわらず。与党側が合意形成への努力を尽くさず、給油新法成立に突き進んだのは遺憾だ。
いつも通りの私語が多い騒々しい衆院本会議だった。三分の二以上の勢力を背景に、再可決の「大権」が半世紀ぶりに行使される。歴史的瞬間を迎えることへの緊張感は与野党ともになかった。こうした空気こそが、新法審議をめぐる国会の姿勢を如実に物語ってはいまいか。
新法成立を受け、政府は昨年十一月一日で中断した海上自衛隊によるインド洋での給油活動を二月中旬にも再開させる方針だ。国際社会が継続する「テロとの戦い」への貢献を訴えてきた福田康夫首相にとっては、就任以来初の「大仕事」を果たしたことになるかもしれない。
しかし、再可決という手段をとってまでも、急ぐべきだったのか。憲法五九条は、衆参両院の議決が異なった場合、衆院は三分の二以上の賛成で再可決できると規定している。ただ、その権限行使は慎重であるべきだ。昨年の選挙で直近の民意が反映された参院の意思を「数の力」で葬り去ることになるのだから。
最近の世論調査では、給油再開反対が賛成を上回る傾向にあった。与党内では当初、再可決に踏み切るには、六割以上の国民の賛成がほしいとの声が根強かった。もっともな「目標値」だったが、それに向けて懸命に汗をかいた形跡はない。これで再可決の条件が整っていたのか、疑問なしとはしない。
新法の内容も腑(ふ)に落ちない。給油活動がテロ抑止やアフガニスタン復興に本当に役立つのかという一番知りたい部分に納得のいく説明はなかった。民主党も駆け引きを優先させたきらいがあって、あるべき国際貢献をめぐる論戦は深まらなかった。
私たちは「初めに再可決ありきでは困る」と注文してきた。
ねじれ国会では、審議を通じ対立点を修正するという新しい光景が期待された。だが、与党が再可決カードに頼ったこと、民主党も対抗策として与党ののめない対案で譲らなかったことで、これまでと同じように国会審議が消化試合となってしまったのは残念だ。
政府は参院での否決が確実になった時点で撤回し、十八日召集の通常国会で出直しを図るべきではなかったか。自民、民主とも自衛隊海外派遣の恒久法に前向きというなら、正面からの議論が必要だ。国論が二分したまま、自衛隊を送り出すことは決して好ましいことでない。
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