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「大連立構想」は小沢失脚狙いの罠? 民主主義の成熟を妨げる黒い影(中) 2007/11/08
http://www.news.janjan.jp/government/0711/0711085325/1.php
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前回記事:「大連立構想」は小沢失脚狙いの罠? 民主主義の成熟を妨げる黒い影(上)
1 小沢氏民主党緊急役員会での誤算
11月2日(金)夜、民主党の緊急役員会が党本部で開催された。既に、「福田首相が連立を打診」とか「小沢代表が大連立を受諾した」との情報が流れており、議場はさまざまな思惑で緊張感が漂っていた。
この夜の様子を、毎日新聞(11月4日)朝刊にて、再構成してみよう。
役員会に先立って、菅代表代行、鳩山幹事長、輿石参院議員会長、山岡国会対策委員長の4人の幹部による事前協議があった。
その席上、小沢氏は、福田首相との会談の推移やテロ特措法をどのように決着するか、また大連立を組むことで、民主党のマニュフェストで選挙民に約束した政策を実現できることなどを、高揚した口調で話した。小沢氏は、この時点で、間違いなく「大連立」を受け入れる気持であった。しかしこれは余りに唐突な変貌振りだった。小沢氏と、話を聞かされた4人の「温度差」は、歴然としていた。
『小沢氏は、「(現行の)112(議席)を2倍の200に増やすことはできるかもしれないが、それ以上は難しい」(前掲記事)と、具体的に数字まで揚げて大連立の提案に乗ることのメリットを語った。
鳩山氏は「農業にしても子供手当にしても、(大連立後に党の政策を)実現したら与党の手柄にされる」(前掲記事)と言い、また菅氏も「どうやって選挙を戦えばいいのか」と懸念を示し「とにかく役員会の意見を聞こう」』(前掲記事)と語った。
この後、波乱含みの役員会はいよいよ始まった……。
小沢氏は、福田氏から連立を持ち掛けられた経緯を語り、「政権協議には入っていいんじゃないか」(前掲記事)とズバリと語った。
それに対し『……真っ先に挙手したのは赤松広隆選対委員長だった。「選挙で民意を経ないで連立を組むのはおかしい。今すぐ断るべきだ」と声をあげた赤松氏に、小沢氏は即座に「自社さ政権の例もある」と切り返した。……赤松氏がかつて身を置いた旧社会党の「自社さ」になぞらえて反論したのだ』(前掲記事)
さらに役員も堰を切ったように語り始めた。皆、反対の声ばかりだった。
『「選挙で勝って、政権を取らないとダメだ」
「早く断らないと党内に動揺が走る」
出席者の半数近くが発言し、すべて反対だった……
特に、菅、鳩山両氏は「大連立を受けるなら、首相をもらわないとダメだ。そうすれば衆院を解散できる」』と言った。
この時点で、小沢氏は、先ほどまで、あれほど高揚していた気持が急速にしぼんで行くのを感じたに違いない。自らの独断専行型の手法を封印し、党内の民主的な決定プロセスにしたがって、説明をすれば、役員たちも、きっと分かってくれるに違いない。そんな目算が小沢氏にはあった。しかしそれの思考は、完全に外れだった。
現実に引き戻された小沢氏は、一瞬「イヤなら止めるか」と、自自連立(2000)の席を蹴って出て、「壊し屋」という有り難くない異名をもらった時の「小沢一郎」に戻ったかのようだった。
そして、会議から1時間余りで、小沢氏は「皆さんがそう言うなら分かった」と、やにわに立ち上がり、別室に入って、福田首相に、「大連立を断る」旨の連絡を入れたのである。
はっきり言えば、小沢一郎氏は、民主党内の空気というものを完全に見誤っていた。少なくても、小沢氏は、2度目の福田首相との会談に臨む前、菅、鳩山、輿石の三氏と、打ち合わせをしていて、その席上で、鳩山氏は、小沢氏に「大連立の話があるかもしれないが、簡単に引き受けるべきではない。もしも受けるなら、首相を取るべきだ」とクギを刺していたという。
おそらく、鳩山幹事長は、第1回目の会談後の小沢氏の高揚感から、危ないものを察知していたのだろう。しかしこの鳩山氏の発言について、小沢氏の方では、「場合によっては大連立を受け入れてもよい」と内諾を得たと受け止めていた可能性があるかもしれない。
2 小沢代表辞意表明の分析
小沢氏は、「大連立」の頓挫から2日目の4日(日)夜、党本部で緊急記者会見を開き、一連の混乱の責任を取り、民主党代表を辞任することを表明し、辞職願を鳩山幹事長に提出したことを明らかにした。
この緊急記者会見は、およそ2日夜の緊急役員会から1日を踏まえ、この間、どのような協議がなされるのか、またマスコミの報道姿勢について、自らの心情を文章にまとめたものであり、言うならば弁解の表明という側面がある。奥が見えにくい部分もあるが、推測を踏まえて、この間の小沢氏の心の揺れを、日本の民主主義の成熟の一過程として見ていきたいと思う。
・小沢代表辞意表明全文(以下「 」かっこ内は、左記の引用文である)
1)辞職の表明
ただ何が何でも辞職というのではなく、「執行部と党員に身体を委ねた」というものであること。この冒頭に、小沢氏の政治家としてのしたたかさを感じる。絶対的な辞職ではないのだ。彼は自分が、民主党にとって、必要な人間かどうか、引いては日本政治に必要な政治家であるかどうかを、考えてくれ、と判断のゲタを預けたのだ。このことは無論、世論がその後どのように推移をするかも考えての、「態度留保」という戦略を描いてることになる。
2)自民党福田首相が、安全保障政策で重要な政策転換を決断したことを明示
これは、自民党が、小沢氏の持論である国連中心主義の考え方を呑み、「特措法」ではなく、「恒久法」として成立させる腹を固めたことを、今回の会談の最大の成果と小沢氏自身が考えていることを誇示していると見るべきだろう。
ポイントとして、以下の2点を上げる。
1.「特定の国の軍事作戦については、我が国は支援活動をしない」
2.「テロ特措法は、連立成立を前提にして、これにこだわらない」
このことは、ずばり言えば、来年度の恒久法の成立を前提にして、「テロ特措法」には反対しない(通す)というニュアンスだ。福田首相にしてみれば、これよって、念願のインド洋上での海上給油が可能となり、アメリカ訪問の最高の手みやげが出来るはずだったことを意味する。
最後に小沢氏は「私個人はそれだけでも政策協議を開始するに値すると判断をいたしました」と早く政策協議を始めるべきだ、と念を押している。
このことは、小沢氏にとって、最大の成果であり、最大の譲歩だ。まさに肉を切らせて、骨を断つような、深い思慮が伺える。このことによって、「これまでの我が国の無原則な安保政策を根本から転換し、国際平和協力の原則を確立する」と本気で、小沢氏は思っているようだ。
3)参議院選挙のマニュフェストが実現できないジレンマの表明
「マニフェストで約束した年金改革、子育て支援、農業再生(について)……政策協議を行えば、その中で国民との約束を実行することが可能」となる。
4)民主党が実力不足であることの表明。
原文ではこの箇所はこのように説明されている。
「国民の皆さまからも、自民党は駄目だな、民主党も本当に政権担当能力があるのか、という疑問が提起され続け、次期総選挙での勝利は大変きびしい情勢にあると考えております」。
私はこの「民主党も本当に政権担当能力があるのか」というフレーズに、先の8月16日付け、読売新聞社説の「大連立の思想」の影響があると思う。おそらく、「民主党の政権担当能力」のフレーズは、福田ー小沢会談前に、会ったという小沢氏の耳元で、渡辺恒雄氏が、囁いた文言がこびり付いて、この部分に反映しているのではないかと推測する。小沢一郎氏のような政治家にとっても、影響力のある人間やマスコミの一言は、一種のサブリミナル効果を持つものである。
またこの民主党が実力不足としたこの部分を取って、民主党の中には、自分の党を侮辱したに等しいではないか、と快く思わない党員がいるらしい。しかしこれは決して、民主党そのものの否定というようなものではなく、文字通り、小選挙区で争われる来るべき衆議院選は、参議院選挙の地滑り的な大勝利とはまったく違った厳しい戦いになるとの思いがあって、出てきた言葉だと解釈する。日本における真の意味での2大政党の時代までの道程は、まだまだ厳しい。そんな自戒の表明だったのだ。
5)個別の政策協議、大連立を踏まえ民主党政権を実現する道
ここで、小沢氏は、「政権への参加は私の悲願である」と語っている。はっきり言って、小沢氏も65歳である。政治家として、引退の時期は、刻々と迫っている。日本の政治を変革し、2大政党を実現することに執着する小沢氏の政治家精神の炎は、消えていないことは明白だ。
6)党首会談で誠実に対応してもらった福田総理に対しての信頼感の表明
私からすれば、このところに小沢氏に一抹の不安を感じる。福田氏がどのように誠実な態度で、小沢氏に接し、小沢氏の持論である国連中心主義への譲歩の態度を見せたとしても、それはアメリカへのメンツを立てる意味での「海上給油」の早期復活を狙った策である。この箇所に、「大連立」を受け入れてしまった小沢氏が、今だ自らにトラップを仕掛けた福田氏への信頼を見せていることは、少し不思議な感じがする。
7)ジャーナリズムへの怒りの表明。
一転、ジャーナリズムには不信感を爆発させている。もっとストレートに言えば、これは「大連立は小沢氏が持ち掛けた」などという読売新聞の一方的なデマ報道に対しての怒りである。
「特に11月3、4両日の報道はまったく事実に反する……私の方から党首会談を呼びかけたとか、私が自民・民主両党の連立を持ちかけた、連立構想……小沢首謀説は……事実無根……。朝日新聞、日経新聞等を除き、ほとんどの報道機関が政府・自民党の情報を垂れ流し、自ら世論操作の一翼を担っているとしか、考えられません。それにより、私を政治的に抹殺し、民主党のイメージを決定的にダウンさせることを意図した、明白な誹謗中傷報道であり、強い憤りを感ずる……。このようなマスメディアのあり方は明らかに、報道機関の役割を逸脱しており、民主主義の危機である。」
今回の小沢氏のジャーナリズム批判は辛辣だ。それは特に、読売新聞という大新聞社そのものが、権力の不正を国民に暴き、権力が暴走しないような公器としての存在であるはずの存在を逸脱し、政界そのものに公然と手を突っ込み、影響力を行使するという異様なものであった。また取材ソースそのものも、圧倒的に自民党サイドからのものであるなど、明らかに民主主義の否定に等しいものであった。この偏った報道姿勢によって、小沢一郎氏と民主党のイメージダウンは避けられず、この騒動によって、衆議院選挙が、先に伸びたということを言う政治評論家も増えている。
ジャーナリズムは、その後も一方的に小沢氏にフォーカスを宛てて、福田首相や自民党で今回の「大連立」というトラップを仕掛けた人々についての報道が少ないのが気になる。またジャーナリズムとしてのあり方を越えた読売新聞の報道姿勢とその読売のトップである「渡辺恒雄氏」に対する批判や責任論などが浮上しないのは、実に不思議な気がするのである。
(つづく)
(佐藤弘弥)
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