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憲法施行60年(その2止) 憲法論、各党の現状は(毎日新聞)
http://www.asyura2.com/07/senkyo38/msg/915.html
投稿者 天木ファン 日時 2007 年 7 月 21 日 10:48:23: 2nLReFHhGZ7P6
 

(回答先: 戦後政治、9条で読む(毎日新聞) 投稿者 天木ファン 日時 2007 年 7 月 21 日 10:41:34)

http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/archive/news/2007/07/19/20070719ddm010010216000c.html

平和と自衛:憲法施行60年(その2止) 憲法論、各党の現状は


◇主要政党に聞く

 【冷戦後の安保政策の変遷について】

 Q 小泉純一郎前首相は北朝鮮危機に備える日米同盟関係を自衛隊イラク派遣の理由に挙げました。どう考えますか。

 [自] イラク支援は日米同盟と国際協調の両立を図り、国益につながる。米国は唯一の同盟国で、日本も米国にとって信頼に足る同盟国でなければならない。

 [民] 米国が国連安保理の承認なしに武力行使を強行したため、国内世論対策で意図的に発言した。米国への追随のみが日米関係の維持策ではない。

 [公] 北朝鮮問題という日本周辺の脅威の有無でイラク派遣が左右されたとは考えない。

 [共] 北朝鮮問題は平和的・外交的手段で解決すべきであり、イラク派兵の理由にならない。

 [社] そのような理由での自衛隊派遣を許せば、米国の全戦争に参加できることになる。

 [国] ナンセンスだ

 [日] 論理的に矛盾している。

 Q 自衛隊の国際援助活動は、治安維持・回復目的との線引きが難しくなっています。現状の評価と今後の方針は。

 [自] PKO法、テロ特措法など根拠法に基づき実行し、国際的にも評価は高い。今後も国際協調と国益を考えて推進する。

 [民] 国連の平和活動は憲法理念に合致。国連憲章41条、42条など国連の要請に基づき、積極的に参加すべきだ。

 [公] 経験と業績を積み、国内外の期待と評価は高い。自衛隊派遣は恒久法でなく、その都度国民のコンセンサスを作るべきだ。

 [共] 現状は米国追従の海外派兵であり、自衛隊によらない災害救援・人道支援を拡大する。

 [社] 災害救援などの非軍事貢献は評価する。誤解が生じない効率的な別組織を整備すべきだ。

 [国] 実態としてなし崩し的に行われている点を改める。

 [日] 憲法9条3項に「国際救援隊」を明記、創設する。

 Q 国連平和維持活動(PKO)など自衛隊の海外での活動には、憲法解釈上の制約があります。活動範囲を拡大すべきだと考えますか。

 [自] 活動範囲拡大に努めるべきだ。従来の憲法解釈による制約は、安保法制懇(※)での検討を踏まえ、必要な見直しをすべきだ。

 [民] 国連の平和活動は国の自衛権行使とは違う。国連の要請に基づき日本の主体的判断と民主的統制の下で積極的に参加すべきだ。

 [公] これまで憲法の範囲で行われ、今後も進めるべきだが、集団的自衛権行使を認める憲法解釈は容認しない。

 [共] 海外での自衛隊の武力行使は憲法違反であり、PKO参加の拡大には反対。

 [社] 武力行使につながらない範囲で行い、憲法9条の理念に反する派遣は行うべきでない。

 [国] 平和的貢献活動は自衛隊派遣と同義ではない。

 [日] 憲法9条3項に「国際救援隊」を明記、創設する。

 Q 米軍再編で日本の米軍司令部機能が強化されました。また、政府は沖縄の在日米軍基地移転を進めています。どう考えますか。

 [自] 日米安保体制は日本の安全と地域の平和・安定に不可欠で、米軍との関係を強化すべきだ。在日米軍再編促進特措法などに基づき、地元の声に配慮し、地域振興措置を実施する。

 [民] 日米同盟は日本の安全保障の基軸だが、政府は交渉で受け身に終始し、費用なども説明しない。米軍司令部の運用のされ方を厳しく検討する。

 [公] 日米同盟を新たな安全保障環境に適応させ、確固たる地域の平和と安定を期待。沖縄地域振興策にしっかり取り組む。

 [共] 米軍と自衛隊を一体化して世界に出撃するための司令部強化にも新基地建設にも反対。

 [社] 在日米軍の役割を日本の安全と極東の平和と安全という目的を超えて拡大し、強化するもの。沖縄の新基地建設にも反対。

 [国] いずれも反対。

 [日] 日米安保は片務的でなく双務的であるとの認識に立ち、真のパートナーとして対等に話し合うべきだ。

 Q 小泉政権以来の有事法制、テロ特措法、自衛隊イラク派遣、防衛省昇格と続く流れは、憲法改正議論に影響すると考えますか。

 [自] 良い影響を与える。

 [民] 省移行に賛成したが、憲法問題とは考えない。緊急事態法制や国際協力を憲法で規定するかを含め、十分な議論が必要。

 [公] 憲法は時代の進展に伴い補強すべきだが、落ち着いた環境で腰を据え拙速は避けるべきだ。

 [共] 米国の言いなりの「海外派兵国家」作りが改憲論の起動力となり加速している。

 [社] 自衛隊の活動拡大で平和憲法がおとしめられてきた。改憲派には追い風だが、あきらめない。

 [国] 影響を与えると考える。小泉政権以来、米国の軍事行動に協力しやすくする意図がうかがえる。

 [日] (影響は)不明。


 ◇「イラク戦争支持」検証を−−成蹊大教授・西崎文子氏

 自民党は「9・11」(米同時多発テロ)の後、テロ対策・イラク復興特別措置法を制定してきたことが、憲法改正につながっていくと考えているようだが、私は逆に、憲法改正の歯止めになると見ている。テロとの戦いは成功するどころか、むしろ事態を悪化させているし、イラク戦争は道義的にも戦略的にも破綻(はたん)している。現状を見れば、憲法改正の好機が近づいているとはとても言えない。

 世界の歴史で、今ほど軍事力の限界が明らかになっている時代はない。米英両国はイラク問題で大変な苦労をしている。日本は泥沼に足を突っ込まなくてよかったと思うべきだ。そう認識したうえで、日本がイラク戦争を全面支持したことの是非が問われなくてはいけない。

 小泉政権以来、日本の安全保障政策は対米協調一辺倒の印象を免れないが、一番ふさわしくない時期にそうなった。集団的自衛権など日米同盟強化と国連の集団安全保障など国際協力は本来は別なのに、一緒くたに論じていることに注意しなければならない。

 安倍政権が勢い込むほどには、各政党とも憲法改正に向けて動いていないことが、アンケートで確認できた。安倍政権の掲げる「戦後レジーム(体制)からの脱却」はあいまいだ。そういう議論のレベルで憲法改正に持っていこうとしても、各論に入れば説得力を持たないだろう。


 【自民党新憲法草案について】

 Q 自衛隊を「自衛軍」に改めるとしています。どう評価しますか。

 [民] まったく評価に値しない。国連憲章に対応した厳格な制約された自衛権、専守防衛の原則を憲法で明確にすべきだ。

 [公] 今は各党で考えを深める時であり、他党を評価する立場でもない。約3年後から具体的な中身の議論になると考える。

 [共] 歯止めを取り払い、「海外で戦争する国」に変質させることになるから反対。

 [社] 第2項を削除し自衛軍とすることは現状追認にとどまらず一切の制約をなくし普通の軍隊にすることであり、反対。

 [国] 憲法9条ではなく、別の条文で自衛隊について国を守る誇りと使命感などをしっかり明記すべきだ。

 [日] 評価しない。

 Q 集団的自衛権行使や国際協力での武力行使を事実上容認しています。どう評価しますか。

 [民] 自民案には歯止めがない。集団的自衛権は個別・集団にこだわらず専守防衛原則などを明確に。国際協力は強い抑制的姿勢を憲法上明確に。

 [公] 今は各党で考えを深める時であり、他党を評価する立場でもない。約3年後から具体的な中身の議論になると考える。

 [共] イラク戦争のような先制攻撃の戦争に参加し、米国と肩を並べて戦うことになるから反対。

 [社] すでに専守防衛の範囲を大きく超えている自衛隊が、米国への従属を一層強めることになる。

 [国] 行使は限定的にすべきだ。

 [日] 賛同しない。


 ◇選挙のための改憲論−−同志社女子大教授・大嶽秀夫氏

 回答を見ているとつくづく、自民党が憲法改正論を持ち出す理由は、民主党をかく乱して、自分たちが選挙で有利になるためだけしかないように思えてくる。彼らは本当に憲法を改正したいのだろうか?

 憲法改正は民主党の協力なくしてはできない。なのに自民党は、この問題で意思統一ができていない民主党を敵対的な立場に追いやっている。それによって改憲を遠のかせている。

 しかも、あまりにこの問題を強調しすぎると民主党を混乱させるだけでは済まない。回答を読むと、結果として公明党を離反させる結果にもなるのだと想像できる。

 私個人は改憲論者だ。自衛隊の存在を否定しているように読める9条2項は削除すべきだし、国際貢献も、より積極的に行うべきだと思う。ミサイル防衛など安全保障面では、基本的に自民党を支持できる。集団的自衛権も、歯止めを持ちつつ行使できるようにすべきだと考える。ただし、靖国問題やナショナリズム、ジェンダーなどについての考え方は、社民党あたりに近い。

 教育基本法改正や歴史教科書問題などでの右派的な動きは、諸外国に警戒心を抱かせ改憲を難しくしていることにも留意すべきだろう。私の考えは奇異に思われるかもしれないが、国際的にはドイツなどの先例があり、むしろ常識的なものだ。


 【安倍政権の評価】

 Q 非核三原則の「持ち込ませず」は守られていないので削除すべきだとの意見があります。どう考えますか。

 [自] 持ち込む場合は日本と事前協議を行うことになっており、指摘の事実はない。

 [民] 三原則は国是。核不拡散と核保有国への核廃絶を訴え続けており、立場を変更すべきでない。

 [公] 被爆国として三原則をいささかも変えることなく堅持する姿勢を国際社会に示すことが大事。

 [共] 核兵器を持ち込む日米密約の全ぼうを政府に公開させ、非核三原則を厳格に実施させる。

 [社] 三原則が守られてないから変更するのでは本末転倒。法制化し、米国に尊重を求めるべきだ。

 [国] 米国に核を持ち込ませないよう対応する。

 [日] 改めて守るべきだ。

 Q 安保法制懇が憲法解釈を変更し、集団的自衛権行使容認を検討していることについて、どう考えますか。

 [自] 集団的自衛権行使には賛成だが、懇談会には結論を予断せず、幅広い観点からの検討を期待。

 [民] 個別的・集団的という概念上の議論にこだわらず、自衛権は専守防衛の原則に基づき行使すべきだ。

 [公] 懇談会は憲法解釈を変更し集団的自衛権行使を認めるための検討の場ではなく、現行憲法枠内の整理と理解する。

 [共] 明文改憲の前にも憲法解釈の変更によって武力行使に道を開くものであり、許されない。

 [社] 集団的自衛権行使を容認する差し迫った必要はどこにもない。容認は断固反対。

 [国] (無回答)

 [日] 法的根拠がない。

 Q 集団的自衛権行使容認に賛成の場合、解釈変更と改憲のどちらが良いと考えますか。反対の場合、懇談会の解釈変更の手法をどう考えますか。

 [自] 行使に賛成。これまでの政府見解も念頭にどんな方法が良いか検討すべきだが、今は個別事例に即し、既存の法的枠組みで十分かなどの検討が重要。

 [民] 懇談会は安全保障の根幹にかかわる問題で結論先にありきと言われるメンバーで構成しており、責任の所在が明らかでなく、ここで方向性を出すことは問題。

 [公] 集団的自衛権の行使を認めないこれまでの政府解釈を堅持すべきだ。

 [共] 大勢が変更論者の「八百長試合」による憲法解釈の変更は法治国家にあるまじきものだ。

 [社] 初めに答えありきのアリバイ的議論。時々の内閣に都合の良い解釈変更がまかり通れば法治国家と言えない。

 [国] 安保条約第5条を前提に限定的に行使を容認。

 [日] 問題あり。反対。


 ◇民主のあいまいさ、不安−−東京大教授・田中明彦氏

 政権を担当する可能性のある自民、民主両党は、安全保障に関して、差はあるにしても、おおむね常識的な範囲の政策を取っている。自民、社会両党の考えが明らかに異なった冷戦時代とは、そこが違う。従って、国民が内政上の争点によって政権を選択しても、外政上とんでもないことが起きることにはならない。

 ただ、民主党の回答には、憲法改正や自衛隊の海外派遣要件を定める恒久法について、あいまいさがある。意見をまとめにくい党内事情を反映したと見られるが、仮に政権を担当した場合「状況次第で決める」ということになりかねず、若干の不安がある。

 集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈変更については、自民、民主両党とも参院選の争点にはしたくないという印象を受ける。憲法9条解釈を検討している安保法制懇は、あくまでも首相の私的懇談会にすぎない。今秋、報告書が出た後で、政府や国会でどうするか議論するということだろう。

 久間章生前防衛相の原爆投下についての発言に対する国民の反応は、核に関する議論を政治の場ですることは望ましくないという判断を示したものと言える。日本人にとって核の話は単なる戦略論でなく、自分たちの存在証明のような問題だ。自民党が核保有論議に関する質問で回答を選ばないのは、そういう配慮があるからではないか。

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 ■ことば

 ◇安保法制懇

 安倍晋三首相が5月、憲法9条解釈を見直すため設置した私的懇談会「安全保障の法的基盤構の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)。行使を禁じられている集団的自衛権や海外での武器使用など、自衛隊に何ができるか、具体的な4類型に即して有識者が議論。今秋、報告書をまとめる予定。

毎日新聞 2007年7月19日 東京朝刊

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