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原田武夫 「ヒル米国務次官補訪朝」まで米国を追い込んだのは誰か? (慌てたアベッシュ団)…それで朝鮮総連本部売却問題?
http://www.asyura2.com/07/senkyo36/msg/1173.html
投稿者 新世紀人 日時 2007 年 6 月 25 日 11:56:57: uj2zhYZWUUp16
 

http://blog.goo.ne.jp/shiome/
「ヒル米国務次官補訪朝」まで米国を追い込んだのは誰か?

さて、ローカルがグローバルを飲み込むための「鍵」となる情報リテラシーを磨くために、もっとも適当な出来事が最近あった。米国のヒル国務次官補による電撃訪朝(6月21・22日)だ。

北朝鮮問題に必ずしも詳しくないかもしれない読者のために、簡単に解説しておこう。このヒル次官補訪朝は、米国政府の正式な代表団による訪朝としては、2002年10月のケリー大統領特使訪朝より、実に4年8ヶ月ぶりのことである。なぜその間、米国政府による訪朝団が組まれなかったのかといえば、このケリー訪朝の際、北朝鮮が「ウラン濃縮による核開発」を行っていることを、米国として「確認」したからである。それによってもちろん、北朝鮮を巡る94年以来の「親善モード」は世界中で表向きストップすることになる。直前に行われた小泉訪朝によって始まりかけた日朝接近の歯車も、完全にここで止まってしまった。

その後、米国は原油精製技術の極秘供与などを「エサ」に、まずは中国を米朝の間に挟ませることに成功。2003年には米中朝協議が実施される。しかし、これに日本、韓国、ロシアが反発し、かの有名な「六カ国協議」の開催へと連なっていく。2004年には「共同声明」が採択されるにまで至るが、その後も「核開発の停止、核放棄」という、米国のいう北朝鮮問題の「発端」については実質的になんらの伸展も見られず。やがて、2006年には北朝鮮による弾道ミサイル発射騒動が発生。著しく険悪なモードになる中で、米国は「北朝鮮による偽米ドル製造」を罪状の前面に打ち出し応戦。ついには、マカオにあるバンコ・デルタ・アジアを「北朝鮮によるマネーロンダリングに対する協力」の咎で金融制裁の対象とした。

しかし、2007年(今年)1月、事態は急展開。なんらの説明も対外的には行われないまま、「ドイツ・ベルリン」で米国は北朝鮮との正式な二国間協議を実施。その内容を踏まえる形で、米国は一方でバンコ・デルタ・アジアへの金融制裁の解除のための作業を進めつつ、他方で六カ国協議を順次開催、北朝鮮側との間で「核停止」までのロードマップを描くにいたった。そして、さまざまな経緯を経て、ついに先ごろ、バンコ・デルタ・アジアにある北朝鮮関連資金を、「NY連銀→ロシア中央銀行→ロシア極東地域の金融機関」経由で返還するとのルートが成立。ここにヒル次官補が訪朝するに至ったわけである。

こうした事態の急展開を受けて、日本の大手メディアは異様なほど冷たい反応に終始している。6月24日付日本経済新聞社説などがその典型だろう。背景には、「ポスト安倍」の最有力候補である麻生太郎外務大臣が、「足元を見られた外交だ」と強い懸念を表明したことへの配慮があるように思われる。また、「来年12月の大統領選挙を控え、イラク・中国と必ずしも主要外交案件でうまくいっていないブッシュ政権が、功を焦った」ようにも見えるため、企業としてのメディアの自己防衛反応として、「泥舟には乗れない」と判断してもいるのだろう。

しかし、今回のヒル次官補訪朝はそれだけの理由で行われたものなのだろうか。もっと別のところで、全体のシナリオを左右する「黒幕」はいないのか?・・・・・これを読み解く能力が、ローカルの立場にあってもグローバルに匹敵するだけのパワーを持つための「情報リテラシー」に他ならない。

注意深いウォッチャーの方々はお気づきであろうが、ヒル国務次官補が動き始める直前の時期に、東京発で不可思議な記事が乱れ飛んだ。「金正日総書記が重態であり、ドイツより医師団が訪朝の上、手術を行った」という情報である(参考:6月11日付週刊現代(講談社))。これは一般に販売されている有力雑誌に掲載されていることからも分かるとおり、誰でも入手できるという意味で「公開情報」の典型だ。

金正日体制は、今や世界でも稀に見る独裁体制だ。その頂点にある人物の命を助けたというのであるから、拉致問題を抱える日本などからすれば、「ドイツは噴飯もの」ということになる。「敵に塩を送るとは何事だ」というべきなのかもしれない。

それだけに、情報リテラシーという観点からは、当のドイツが一体どのような反応を示すかが鍵となる。とりわけ、東京発で「公開情報」による攻撃にも近い言論が展開されている以上、ドイツ側が一体どのような「公開情報」を流布させるのかが見ものとなる。

メールマガジン「元外交官・原田武夫の『世界の潮目』を知る」を平日毎日編集・執筆する過程で、ドイツ・メディアも丹念に見ているのだが、その後のじっくりと観察したものの、「反応」が出てこない。「これはひょっとして黙殺か?」と思い始めた矢先、ついに一つの記事がドイツ紙に掲載された。


6月22日付フィナンシャル・タイムズ(ドイツ版)の記事「北朝鮮の独裁者をドイツ人医師団が診察」がそれである。そのポイントは次のとおりだ:

●ソウルで発行されている脱北者のインターネット新聞「デイリーNK」が22日、ドイツ心臓医療センターの医師団が5月に金正日総書記の手術を行ったと報じている。
●施術後、数日してから金正日総書記は執務に復帰したとも報じている。

「インテリジェンスのプロ」「マルクス主義の語り部」を自称しつつ、実はドイツ語に流暢でない御仁のためにあえて申し上げおくと、この記事にはドイツ語の語法上、いくつかの決定的なポイントがある。

●第一に、上記のポイント1の部分について、文法でいう「非現実話法」で書かれていること。ドイツ語には「伝聞情報」を表現する際、「言われたことをそのまま伝える方法(第1話法)」と、「言われたことについて、伝達者が疑義を有している時に使う方法(第2話法)」がある。後者は「非現実話法」とも言われるが、これで記されているのだ。つまり、この記事の書き手は、「金正日総書記をドイツ人が施術」という報道を信じてはいない。

●第二に、「デイリーNK」の記事が東京にいる一名の情報提供者からの情報だけに基づいて書かれていることを明示している。日本語ではしばしば「情報提供者によれば」と書いて、それが複数であるか単数であるかをごまかすことがあるが、ドイツ語ではそうはいかない。この記事にはなぜかくっきりと「東京にいる一名の情報提供者」と明示しているわけであって、暗に「要するに誰かが東京で言ったことをそのまま伝えているだけなのだ」というニュアンスを出しているわけである。

さらに興味深いことがある。それは、ドイツの有力紙である以上、ベルリンにあるドイツ心臓医療センターに直接取材をして、事実確認をすれば良いものの、そうした「取材のイロハ」を同紙が行った形跡を記していないのである。ドイツ心臓医療センター(das Deutsche Herzzentrum Berlin)とは民法上の財団であり、ホームページも公開されている、いわば「表の機関」である。通常、この手の報道では「以上の報道を受けて、◎◎にあたったが、『そのような事実はない』といった回答を得た」とするのがドイツにおける報道のやり方だ。それをあえて行わず、「非現実話法」で、しかも、この新聞だけでベタ記事で報じさせるというところに、どのような意図を読み取るかが次なるポイントとなってくる。

日本の個人投資家、ビジネスマン、さらには中小企業経営者として、この「例題」の真実を突き詰めることは不可能であるし、また不要ですらある。むしろ重要なのは、こうした流れが一体どのような「潮目」をもたらすのか、あり得べきシナリオを想定し、それに備えて自らの行動(投資行動、ビジネス活動、事業展開)を軌道修正していくことでしかない。やれ「インテリジェンス」だの何だのといまだに活字媒体主体で騒いでいる自称「インテリジェンスのプロ」といった、金融資本主義の中心から見れば「末端」に過ぎない連中の撒き散らす言説は、その意味で全く意味がない。

さて、ドイツがここであえてなぜ、本件について否定的な報道を、ひっそりと流すかについては、二つの解釈が成り立つだろう。
一つは、本当に金正日総書記の施術をドイツの医師団が行った場合。
二番目は、施術ではないが、なんらかの密接な接触(協議、交渉など)を当該期間に独朝間で行った場合。

「そもそも、独朝間におけるなんらの接触もないというオプションはなぜ考えないのか」といわれるかもしれない。しかし、5月27日付のこのブログでもお伝えしたとおり、「施術が行われた」とされる5月半ばには、ドイツの有名メディアが続々と訪朝していたことは紛れも無い「事実」なのである。また、このブログでは紹介しなかったが、6月初旬、ドイツからは「独朝友好議員連盟」が訪朝し、これにもまた、数多くのドイツ・メディア関係者が同行している。つまり、「独朝間で何も接触はなかった」というオプションは無いわけである。

ドイツの情報工作機関以外は、率直にいって以上の二つのオプションのいずれが「真実」なのかを答えることはできないだろう。だがそれでもなお、気になることが一つある。それは、ドイツ・メディアがヒル米国務次官補訪朝のきっかけとなった「バンコ・デルタ・アジア問題の処理」について懐疑的な論調をふりまいているということだ。

まず前者の点について。ドイツの最有力経済紙であるハンデルスブラットは6月19日付の記事「マネーと幸福」において、要約すると次のように論評した:

●過去30年間にわたって米国人の所得は上昇したが、幸せの度合いは上がっていないという研究がある。その理由は、隣人や友人などとの接触がますます減っているからだ。
●このように、「マネーは人を幸せにはしない」ということの典型が、バンコ・デルタ・アジアを巡っての米国の動きだろう。NYの連邦銀行は米国国務省からの依頼により、バンコ・デルタ・アジアの持つ資金を洗浄し、ロシア中央銀行へと引き渡した。これによってNY連銀は議会に対して説明すべき立場に置かれたことになる。

NY連銀が「マネーロンダリング(資金洗浄)」の手助けをしたとは、何とも強烈な表現だが、ロシアなど外国報道機関からの情報提供に実は頼りつつも自称「インテリジェンスのプロ」などと呼ばれる輩とは異なり、毎日、自ら丹念に公開報道を読み解く癖をつけている読者からすれば、至極納得のいく表現だろう。

なぜなら、米国がバンコ・デルタ・アジアを金融制裁の対象にしたのは、米国曰く、そこに大量の「偽米ドル」札が北朝鮮名義で預けてあったからだ。つまり、「偽米ドル」札という「モノ」がある以上、それをNY連銀であろうと、ロシア中央銀行であろうと、外国に移送したところで、「ニセ」であるという実態にはなんら変わりはないはずだ(電信送金ではなく、もちろん、大量のお札を抱えてのハンドキャリー(手持ちでの移送)となる)。それを手助けした金融機関は当然、「マネーロンダリング」を超法規的に行ったと糾弾されるべきなのである。

ちなみにこの点について、さらに確認したい読者は、2月1日付インターナショナル・ヘラルド・トリビューン記事を読まれることをおすすめする。そこにははっきりと、問題の核心が「『偽米ドル『』札そのもの」という「モノ」にあること、そしてバンコ・デルタ・アジアの背景には東アジア最大の金融機関である英国の香港上海銀行(HSBC)がいることが明記されている。
「偽米ドル」札が本当に「偽」なのであれば、米国においてNY連銀とはいっても受け取るわけにはいかないだろう。しかし、そこに究極の「言い訳」として、「これは通常の通貨ではないが、米国のある種の政府機関が通貨当局とは別に実態として発行した、いわば軍票のようなものである」ということは、ギリギリ可能であるはずだ。それが「論理的に見て正しい真実である」ということを、IISIAではこれまで繰り返し述べてきた。

これに対し、未だに「北朝鮮による偽米ドル説」を譲らない、自称「インテリジェンスのプロ」たちの内の一人は、最近、笑止なことに某紙における連載で上記のインターナショナル・ヘラルド・トリビューンを読者に薦めたようである。そうであるならばなおのこと、まずは御自分で同紙をじっくりとご覧になる必要があろう。また、上記のとおり、「贋金のモノがある以上、それはどこまでいっても贋金であるはず」なのに、最後にその中継点となったのがロシアであったという事実の「重み」を、この御仁たちは自らの情報源の「出自」との関係でしっかりとかみ締めるべきだろう。・・・・・つまり、ロシアとしてはこの「贋金」の最後の中継者になることで自らに利点があったからこそ、「偽米ドルは北朝鮮製」と米国と並んで騒いできたことがここで明らかになったからだ。この場におよんでもなお良心的に申し上げれば、ハメられているのは、ほかならぬ自称「インテリジェンスのプロ」であるアナタたちなのである。少なくともこのブログの読者の方々は、もう騙されるべきではない。

以上を見ても、ローカルの場に座しつつ、グローバルな世界における「真実」が情報リテラシーによって次々と明かすことができるのがお分かりいただけたと思う。そして、そこにさらに透けて見て取れるのは、金融資本主義における「大規模なシステム転換、パワー・シフトの兆し」である。座して笑う北朝鮮には脇目も振らず、衝突しあう米独のすさまじさからは、この秋から始まるであろう「大転換の時」の歴史的な波動がすでに感じられはしないだろうか。

それでは、人よりも先に感じ取ったこの「波動」を、どのようにしてローカルにおけるビジネスへと転換していくのか。・・・・・これがIISIAにとって、2007年後半の最大の課題となっていきそうだ。

2007年6月24日

原田武夫記す

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