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(回答先: 国家権力と右翼・暴力団【天木直人・日本の動きを伝えたい】5/2 投稿者 天木ファン 日時 2007 年 5 月 02 日 11:56:51)
■【関連内容】立憲意識が希薄な“日本社会の危機”の深層
http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/より、部分抜粋
ドイツ全体の歴史とオーバーラップするザクセン史の概観が示唆するのは、日独戦後史を比較・考量するとき、特に我われ日本人は「ドイツにおける有力王朝の歴史(神聖ローマ帝国からドイツ帝国に繋がる)はドイツ革命(1918/皇帝ヴィルヘルム2世の退位によるホーエンツォレルン家の崩壊)で消滅したこと、ヒトラー・ナチズム体制の公式名称が「(ドイツ)第三帝国」(Drittes Reich)であったこと、戦後の日本国憲法下では平和裏に象徴天皇が存続していること」が示す「歴史的な意味の重さ」を俯瞰的・通時的・客観的・形而上学的・倫理的・哲学的・法理的に捉えるべきということであるように思われます。
ドイツが日本と根本的に違うのは「人道に対する罪の意識」を戦後のドイツ国民が共有することに成功し、今もその状態が持続している点だと思います。もちろん、これはドイツでの国際軍事裁判のために連合国側が規定した「平和に対する罪」、「戦争犯罪に対する罪」、「人道に対する罪」のなかの一つです。しかし、ドイツの場合にはこれが単なる消極的な受身の意識に終わらず、この三つの罪についての反省的な思索を深めドイツ国民へ大きな影響を与えたカール・ヤスパース(Karl Theodor Jaspers/1883-1969/ハイデルベルク大学の実存主義哲学者、精神医学者)の存在があります。ヤスパースは、その妻がユダヤ人である故のナチスに対する抵抗の貫徹で大学を追われ、妻の強制収容所送りでは自宅に2人で立て籠もり通したというエピソードがあります。
ヤスパースの偉大な功績のポイントは「ドイツ国民一人ひとりが、それぞれ自分が負うべき罪について身の丈に合わせて主体的・積極的に考えるべきだ」という前提を明快に示したことです。そして、ヤスパースはナチス・ドイツが行った侵略戦争やホロコーストなどの「罪」を四つの次元に分けて考えます。それは、刑法上の罪、政治上の罪、道徳上の罪、形而上学的な罪の四つです。つまり、これで「政治的・法的な責任」(前者二つ)と「内面的な責任」(後者二つ)を区別して考えることが可能となったのです[出典:仲正昌樹著『日本とドイツ、二つの戦後思想』(光文社新書)]。
これによって、一人ひとりのドイツ人が自分の能力に見合った自覚レベルに応じて「人道に対する罪の意識」を具体的に表わすことが可能となり、是非とも自分はそうすべきだという人道に関する実践的な心と意志をドイツ国民が共有できるようになったのです。このように見ると、ドイツの人道に関する戦後の責任意識が日本とは比較にならぬほど高い地点に到達していたことが理解できます。このことはドイツと日本の政治家の品格の違いの第一原因ともなって長い尾を引くことになり現在に至っています。ともかくも、「日本の国会議員の品性の低劣さ」と「ドイツの国会議員のモラルの高さ」はあまりにも対照的です。
ところで、「ドイツ連邦共和国基本法」(Grundgesetz fuer die Bundesrepublik Deutschland、http://www.datenschutz-berlin.de/recht/de/gg/)は2000年末までに48回もの改正が行われており、その改正要件は「連邦議会議員数の三分の二及び連邦参議院議員の表決数の三分の二の同意を必要とする」ことです(同基本法79条)。これによって、NATO加盟のための再軍備・徴兵・国民の環境権など国民の人権にかかわる重要な改正が行われてきました。だから、日本国憲法も改正すべきだという議論を持ち出す政治家や識者が存在するようですが、ことはそれほど単純ではないと思われます。
何よりもまず、周辺諸国との歴史的・外交的関係を始めとしてドイツと日本が置かれた戦後の冷戦体制下での状況が全く異なることを前提としなければなりません。それに加えて、初めから「ドイツ憲法は政治権力に制度的な枠組みを与えるものである」こと、つまり“ドイツ憲法の授権規範性(立憲主義の視点)”が、先ず権力的立場に立つ者たち自身によって明確に意識され、かつ国民一般もこの立憲主義の意味を正しく理解してきたということです。もう一つ、ドイツ憲法の特徴的な性質をあげておくなら、それはナチズムをもたらした過去の歴史と厳しく対峙(ナチズムを完全否定)しているということです(この意味で過去のファシズム的感性への親近性を窺わせる妖しげなフレーズ“美しい国”には危険な匂いが付き纏っています)。そして、このことは主に同基本法の第1条、第20条、第79条の条文内容に明確に書かれています。
(第1条)人間の尊厳は不可侵なので、すべての国家権力はこれを尊重し保護することが義務づけられる。
(第20条)ドイツ連邦共和国は民主的な連邦国家であり、このことは第1条の規定とともに「憲法改正の手続き」によっても変更できない。(憲法改正の限界を明記)
(第79条)第1条、第20条で定められた原則は、憲法の番人たる「ドイツ連邦憲法裁判所」によって厳しく監視される。
このように置かれた環境条件の違いからドイツは明快な形で再軍備を実現してきましたが、一方で根本的には憲法の中で侵略戦争を明快に拒否しており、その意味では「平和主義」に徹しています。もう一つ見逃すべきでないのは、ドイツも「フランス革命」に相当する「ドイツ革命」(1918)で明確に重い歴史に繋がる帝制を政治的な次元から消滅させたということです。冒頭で述べたとおり、ナチス・ヒトラーはこの帝制を復活して自らが皇帝となるつもりであった訳です。この点に関して言えば、日本が進んできた道は「太平洋戦争を経験した戦後の日本」しかできなかったという意味で掛け替えなく世界中でもユニークなものです。それは「象徴天皇制の下での平和主義の徹底」ということですが、このこと自体は決して恥ずべきではなく、むしろ世界に向かって堂々と誇るべきことだと思われます。
仮に、「国民の総意」が「ヤスパースの反省」のような観点を十分に理解できていたとすれば、そして立憲主義の意識が日本国中に満ちているとするならば一般国民の総意に基づいて「ドイツ型の憲法運用体制」へ移行することは形式論理的に(“人間の尊厳と歴史経験の一回性ということ”を無視して)捉える限りでは可能かも知れません。しかし、今のように政治家も一般国民も立憲意識がきわめて希薄(軽薄)な社会・政治状況のなかで「日本国憲法の授権規範性」を安易に緩めることは甚だ危険だと思われます。なぜなら、比喩的な意味で今のドイツが歴史から真っ当な知恵を学ぶことが可能な「正統保守政治」とするならば、日本の現況は過去の歴史から何も学ばない「衆愚ポピュリズム政治」だという違いが歴然としているからです。このような日本の社会・政治環境下で、これから“日本のヒトラー”が絶対に出現しないという保障はないのです。
このため、まず日本国民は、「お坊ちゃま型寄生・世襲議員」と「メロドラマ型チンドン屋議員」を安易に“自分の好みのタイプで選ぶ”という下劣な選挙意識を改革しなければならないでしょう。また、日本の殆んどの国会議員はノーブリス・オブリージュ(高い身分に応じた義務感)以前の下劣な存在であるので、日本はこの辺りの改善についてもドイツから学ぶべきです。それは、今でもドイツの連邦議会議員・連邦参議院議員らはモラルとノーブレス・オブリージュを持ち続けているからです。
また、「新ドイツ憲法」(ドイツ連邦共和国基本法)下のドイツ大統領の位置づけは、ワイマール時代と異なり国民から直接選ばれることがない仕組みとなっており、連邦議会(第1院)と各州議会の代表者(連邦参議院議員)によって間接的に選挙されます。ここには、ワイマール時代にヒトラーを総統(第三帝国皇帝)に任命してしまった大統領の地位の危うさへの反省の思いがあり、同時に大統領の地位が国民による“美人投票”のような一時の激情(又は憤怒)の感情に流されることを防ぐ意図があると考えられます。そして、このように精妙な政治システムが可能となるのは、ドイツの連邦議会議員・連邦参議院議員らがモラルとノーブレス・オブリージュを自覚・実行してきており、一般国民がそのことに対して信頼を持っていればこそです。
ともかくも、日本のように低俗なワイドショーやバラエティ番組に出まくって売れ筋の芸能人たちとイチャついたり、弱い立場の者や利害が対立する人々を高圧的に恫喝したり、手品師かペテン師のように政治資金をチョロまかしたり、あるいは破格の袖の下を薄汚く集め捲くったり、あるいはアメリカにとってはプラス・マイナスゼロの問題と見做せる集団的自衛権のような政治課題で一般国民の不安心理を煽ったりするような、謂わば「国営泥棒&暴力組織の組員のような国会議員」(それでも国民の代表か?/参照→下記“参考”)の恥ずべき姿はドイツでは見られないようです。
<参考>
一部の報道によると「与野党を問わず、国会議員の公設秘書が採用される条件として給与の一部を議員へ寄付(上納)するように強要されていたこと」が明るみに出ています。おその金額は分かっているだけで「過去3年で205人、総額約3億円」となっています。
このことからも、日本の国会議員たちが国民の代表としてのノーブレス・オブリージュを意識するどころか専ら暴力団組織かヤクザ集団の“恫喝、脅迫、ゆすり、たかりのノウハウ”を政策運営の手本としてきたことが分かります。
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