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□臨床政治学 永田町のウラを読む=伊藤惇夫〈第5回〉熟睡寸前の無党派層 [中央公論]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070424-01-0501.html
2007年4月25日
臨床政治学 永田町のウラを読む=伊藤惇夫〈第5回〉熟睡寸前の無党派層
民主党の大票田かと思ったら、「小泉劇場」に熱狂し、自民党を大勝に導くこともある。捉えどころのない、この日本最大の“政治勢力”を動かす秘策とは−−
「一個の妖怪が今、ヨーロッパを徘徊している。共産主義という名の妖怪が……」と『共産党宣言』に書いたのはマルクス。その共産主義はもはや絶滅寸前の状態だが、変わって今、日本の政治の世界を徘徊どころか席巻しているのが、いわゆる「無党派層」と呼ばれる大集団(?)かもしれない。
実は「無党派」の登場は、それほど昔ではない。一九七〇年代以降、時おり政治の世界に顔を出してはいたが、本格的な“デビュー”は細川非自民連立政権が誕生した九三年夏ごろのこと。それ以前は浮動票、支持なし層あるいは無関心層などと呼ばれていた人たちを、なぜかメディアが一斉に「無党派」と呼び始め、あっというまに定着してしまったのである。以後、「浮動票」などと呼ぼうものなら、すぐさま“確信的無党派”を自称する人たちから「俺たちはそんなフワフワしていない」とお叱りを受けるハメに。
「無党派層」というと、特定の政治家や政党を支持することはないが、政治的意識が高く、自立した人間として責任ある行動を取れる人たちといったニュアンスが漂う。だが、政治、選挙の現場で彼らを追いかけ続けてきた経験に基づく感覚からいうと、一括りに「無党派」といっても、中身は様々。敢えて分類すれば1.意識層2.気まぐれ層3.無関心層の三つぐらいに大別できる。このうち、本当に政治意識の高い1は、せいぜい全体の二〜三割程度で、何かの拍子で政治に関心を持つが、それも気分次第という2や、ほとんど関心のない3が大半を占める、というのが実態ではないか。民主党の事務局長時代、メディアへの露出度と政党支持率の関係を長期間にわたって調べたことがある。結果は露出度(スキャンダル等マイナス情報による露出は除く)が高ければ支持率が上がる、という極めて単純な答えを得ただけだった。
固定的な政党支持層は、ほとんど動かないから、政党支持率の変動要因は、大半が無党派層の動向によると考えていい。となると、前述した調査の結果と併せて考えれば、無党派層はメディアへの露出度によって支持政党を変える。もっといえば、無党派層の大半は、単にマスコミ報道に反応、あるいは踊らされているだけ、という見かたも成り立つことになる。〇五年の郵政選挙にしたところで、メディアがあそこまで「小泉劇場」を大々的に取り上げたからこそ、無党派層の自民党なだれ込み現象が起きたのではなかったか。
とはいえ、彼ら「無党派」がいまや最大の“政治勢力”であり、彼らの動向次第で選挙の結果が決定的に左右されることもまた事実である。統一地方選の焦点となった東京都知事選でも、現職の石原慎太郎には自民党が、挑戦者の浅野史郎候補には民主党が、それぞれピッタリ背中に張り付いていたにもかかわらず、表面的には「無党派候補」を気取ったのも、それこそ無党派層を取り込もうとしたからであることはいうまでもない。
だが、彼らを一括りにはできないし、候補者自身が無党派を気取ったくらいで彼らを取り込めるほど簡単な話ではない。メディアだって、自分の方に都合よく無党派を煽りたててくれるとは限らない。都知事選の結果も、結局は掴みどころのない無党派層の動向がカギを握ることになった。七月に行われる参議院選挙も同様だろう。なにしろ相手は「無党派層」である。自民党も民主党もこれから、姿かたちのはっきりとしない「妖怪」を必死で追い掛け回すことになるわけだ。
ただ、無党派層は何かのきっかけで大票田に変身する存在だし、「未開の沃野」であることもまた間違いない。彼らを動かす手立ては全くないのか、といえば、実はそれなりのヒントはある。過去の経験からいうと、政治意識の高い一部を除いた、大半の無党派が反応する三つのキーワードがある。まず一つ目は「格好いい」、次が「面白い」、そして最後が「目新しい(新鮮)」である。〇四年参院選での岡田民主党人気や郵政選挙など、これまでの顕著な事例を分析してみると、理想的にいえばこの三つがそろった時、それが無理でも、このうちのどれかがメディアを通じて流れた時、どうやら無党派層は敏感に反応するようだ。
もっとも、今の安倍・自民党、小沢・民主党ともに、格好はよくないし、面白くないし、目新しくもないだけに、このままでは無党派層が永い眠りに入ってしまうかも……。
(いとうあつお 政治アナリスト。元民主党事務局長。明治学院大学非常勤講師)
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