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(回答先: 安倍首相の根本的矛盾、対米追従外交の限界【天木直人・日本の動きを伝えたい】4/23 投稿者 天木ファン 日時 2007 年 4 月 24 日 09:14:33)
http://www.mainichi-msn.co.jp/tokusyu/wide/
安倍晋三首相の初訪米(26、27日)が迫った。中国の温家宝首相の来日は無難に終わったが、北朝鮮問題、イラクへの自衛隊派遣など、安倍内閣が抱える外交課題はまだまだ多い。首相訪米を前に、日中、日米に太いパイプを持つ加藤紘一・自民党元幹事長に日本外交の課題を聞いた。【太田阿利佐】
◇強いナショナリズム、米国側はなお警戒 日本政治は「みんなで間違えれば怖くない」
◇拉致問題は一番の売りでありアキレスけんにも 外務省はモノが言えない状態になっている
−−温家宝首相の訪日で、日中関係は修復できましたか。
仮修復でしょうね。今後、この路線をどれだけ固めていけるかにかかっている。温首相は非常に和やかながら、言いたいことは遠慮なく言って帰った。国会演説では「日本発動的侵華戦争(日本が発動した中国侵略戦争)」とまで言った。けれど、夜のパーティーでは原稿なしでこうも語った。「日本には使命感を持ってきましたが、実は不安でもあった。国会演説を終えて私がすぐにしたことは国の母に電話することでした。『どうだった』と聞くと、母は『息子よ、よくやった』と言ってくれた」
実に心憎い演出ですよ。国会演説は中国でも報道されるから侵略戦争という表現は使わなければならなかった、と暗に日本側に伝えている。やはり13億もの国民をまとめていくのは並の政治的技量ではない、と実感しました。
−−自国と相手国の国民感情のギャップをよく理解し、双方に配慮している。
温首相がここまでの真剣さで訪日したのだから、安倍さんも靖国神社に参拝することはもうできないでしょう。最近の外交を見ていると、北朝鮮の核問題にしても、韓国人従軍慰安婦問題にしても、日中歴史問題にしても、相手側は政権の命をかけて真剣に計算しつくして発言しているのが分かります。
ところが、日本の閣僚は「ちょっと言いたい」ぐらいの軽い感覚で発言し、相手にたたかれると引っ込める。最近で最たるものは日本の「核保有」論議。米国は日本の軍事力強化には賛成だろう、と単純に考えて政府や党の要人が発言したら、米国から猛反発を受けた。日米安保を破棄するほどの覚悟があればいいが、もう少し言葉を選ぶべきではないか。
*
−−今回の訪米の課題は。
安倍外交の試金石になるでしょうね。対中外交の改善は米国にも評価されている。そこは自信を持ってほしい。しかし、米国側には、安倍さんの奥底深い個人の思想にはかなり強いナショナリズムがあって、それは米国の価値と矛盾するのでは、という漠たる不安が消えていません。注意して発言してほしい。
それにしても「従軍慰安婦募集には狭義の(旧日本)軍の強制性はなかった」という趣旨の参院予算委員会(3月5日)の首相発言は危なかった。あの発言をブッシュ米大統領との電話協議などで修正していなかったら、訪米中止の可能性もあったほどの発言でした。ところが、日本側には危機感は薄く、日米間のギャップは大きかった。私が親しい親日派の元米政府高官は本気で怒っていましたよ。ある学者は「軍が強制連行したか、業者にやらせたかはささいなこと」と顔をこわ張らせていた。その事情が安倍さんには分かっていなかった。
−−米ワシントン・ポスト紙には安倍首相は「ダブルトーク」とまで評されました。
自主憲法への強い熱意や、靖国神社へA級戦犯合祀(ごうし)の肯定など、今の日本のナショナリズムのかなりの部分は反米につながる要素がある。安倍さんもその一人か、と米側が見定めている時にあの発言なので、「やっぱり!」となってしまった。
一国の首相に「ダブルトーク」とは大変失礼です。しかし、そう書かれてしまったことは外交上痛い。しかも訪米はわずか1泊。米側も今回はとりあえず一度お会いしてみましょう、という程度なのでしょうね。
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−−米国では昨秋の中間選挙で共和党が負け、イラク政策の見直しが進んでいる。日本にはそんな空気はありません。
イラク問題で日本は、米国という強烈な機関車に引っ張られてきた。米国では中間選挙というポイントで機関車は別の道に進んだが、日本は惰性で従来の路線を走っている。米国ではすでにイラク戦争を主導したラムズフェルド前国防長官やボルトン前国連大使らが辞め、現在のライス国務長官もイラク政策の誤りを認めました。ところが、日本はいまだに「イラクに大量破壊兵器があると信じたことは間違いではなかった」などの主張を繰り返している。
−−間違いを認めようという反省も検証もないし、誰かが責任を取ることもない。
日本のラムズフェルドは誰か、ボルトンは誰なのか。当時の政治家はポストを去っているが、外務省や旧防衛庁内の推進派は責任を問われるどころか、出世しています。サダム・フセインが宮殿まで調べてくれと主張し、大量破壊兵器の調査をしていた国連のブリクス監視検証査察委員長が延長を求めたことにどれだけ注意を払ったのか。
日本の政治は「みんなで間違えれば怖くない」で、それに異を唱えるのは悪い人間なんです。でも将来のことを考えると、どこで間違えたのかの分析はしておかなければならない。最近、報道は小さくなりましたが、イラクでは日々、何十人もの人間が自爆テロなどで死んでいるんですからね。
*
−−北朝鮮による拉致問題はどうですか。核問題を優先する6カ国協議でも日本の孤立化が懸念されています。
拉致問題は「安倍外交」の一番の売りです。しかし、同時にアキレスけんになりかねない。いかなる人も政権も、自分が一番得意な分野で失敗するものです。そうならないように祈っていますが、安倍さんが「(拉致問題の進展が前提という日本の方針は)米中にも理解を得た」と発言をした直後に米国は北朝鮮関連口座の凍結解除をすることで妥協してしまった。
−−日本は外交当局も読めていなかったということですか。
外務省は読めていたと思います。ただ外務省は、安倍さんに本音を言っていないのではないか。麻生太郎外相にも言っているか疑問です。このままでは北朝鮮問題で壁にぶち当たる可能性があると思います。
−−外務省による外交と、官邸主導の外交にギャップがあるということですか。
拉致問題への安倍さんの思いがあまりに強いから、外務省の人間がモノを言えない状態になっています。上に立つ人間、ことに首相には、部下や役人が「本音を言っていないな」と直感的に感じる力がいる。拉致問題に対する日本の怒りが各国に100%共有されているわけではありません。各国は「核問題は拉致とは別に議論してほしい」とクールに考えている。
改めて、小泉訪朝は大胆な賭けだったと思います。米国が北朝鮮と直接交渉はするなと言っている中で訪朝したんですから。当時、安倍さんは官房副長官で、小泉路線の補助者だったが、拉致問題への強硬姿勢で人気を集め、首相にまでなった。でもあの小泉訪朝があったからこそ北朝鮮は拉致を認め、5人の一時帰国にもつながった。安倍さんが軟化するためには、再び小泉訪朝の意味を振り返ることも必要なのではないでしょうか。
毎日新聞 2007年4月23日 東京夕刊
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