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(回答先: 裁判を起こした西山さんの思いを想像し、万感胸に迫るものがありました「西山太吉国賠訴訟」判決 (JANJAN) 投稿者 天木ファン 日時 2007 年 4 月 04 日 19:47:54)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200704031530122
「原告の請求をいずれも棄却する」─。3月27日の東京地裁「沖縄返還密約・国家賠償訴訟」で言い渡された判決は、素っ気ない主文のみ。約2年間口頭弁論を積み重ねてきたのに、加藤謙一裁判長はわずか5秒で幕引き≠宣言して退廷した。まさに、司法の名の下に国家権力側が示した門前払い≠ナある。
1971年6月に日米間で調印された「沖縄返還協定」に関する公電を外務省女性事務官から入手し密約を暴いたスクープは、佐藤栄作政権を揺るがす大問題に発展した。毎日新聞の西山太吉記者=当時=(75)が国家公務員法違反で逮捕され、一審無罪のあと二審で逆転有罪、最高裁で有罪(懲役4月執行猶予1年)が確定したものの、「知る権利」が大きな争点の事件として特筆される裁判だった。
事件から約30年の歳月が流れ、風化≠フ扉を破ったのが、「日米密約」を裏付ける米国外交文書公開である。2000年と2002年に封印を解かれた米公文書により、「密約はなかった」と強弁していた日本政府のウソが白日のもとに曝されてしまった。国策捜査でペンを奪われた$シ山氏は故郷に長らく蟄居していたが、「政府の謝罪と3300万円の賠償」を求めて2005年4月東京地裁に国家賠償請求訴訟を提起した。次いで06年2月、日米交渉に直接関わった吉野文六・元外務省アメリカ局長が従来の否定発言を翻して、「日米密約はあった」とマスコミに証言、政府はさらに窮地に追い込まれた。
政府の密約否定のウソ≠大方の国民は察知しており、今回の東京地裁判決が極めて注目されていた。ところが、加藤裁判長は、最大の焦点だった「日米密約」には一切言及せず、「仮に違法な起訴や誤った判断があったとしても、賠償請求権は民法の除斥期間(20年間)を過ぎて消滅している」として、原告の請求をすべて棄却して「密約」を封印してしまった。
原告側が9回の口頭弁論の場に提出した証拠は約80、その中で「検察官らに24の違法行為があった」とも指摘したのに対し、被告側(国)は実質審理に応じる姿勢を全く示さず、形式論理に終始。「密約論議の土俵には上がらない」との姿勢で臨み、「除斥期間」を盾にした判決を引き出す法廷戦術に出た。
東京地裁が公表した「判決要旨」はB5判約14頁で、「争点」を(1)刑事事件の高裁判決及び最高裁決定は誤判か(2)原告に対する被告公務員の違法行為の有無(3)民法724条の適用の当否(4)原告の損害の有無及び程度等(5)名誉措置の必要性――の5点に分類。このあと「裁判所の判断」が明記されている。苦渋に満ちた判決文を通読して、「初めに結論ありき」の印象を受けたので、原文に忠実に要点を紹介しておきたい。
「沖縄密約・国賠訴訟」東京地裁判決の骨子
[民法724条後段適用の当否]
民法724条後段の規定は、不法行為による損害賠償請求権の除斥期間を定めたものであり、不法行為による損害賠償を求める訴えが除斥期間の経過後に提起された場合には、裁判所は、当事者からの主張がなくても、除斥期間の経過により上記請求権が消滅したものと判断すべきであるから、除斥期間の主張が信義則違反または権利濫用であるという主張は、主張自体失当であると解すべきである。
原告主張の(国家公務員法違反にかかわる)違法行為については、これらの各行為から20年を経過した後に本訴が提起されたことが明らかであり、かつ、民法724条後段の規定の適用を妨げる事情は証拠上何ら認められないから、仮にこれらの行為について不法行為が成立するとしても、国家賠償法4条及び民法724条後段により、これらの行為に関する損害賠償請求権は既に消滅したとものというべきである。
従って、原告主張の違法行為に関する請求はいずれも理由がない。
[検察官、政府高官及び国務大臣の原告に対する違法行為の有無]
本件に顕れた一切の事情を検討しても、検察官において、本件刑事事件につき具体的具体的に再審請求をしなければならない事情があるものとは考え難く(検察官でなければ再審請求をすることが著しく困難であるとの事情も見当たらない。)、検察官がその義務を負うものと認め難いというべきである。そうすると、検察官が再審の請求をしないことが、国家賠償法上、違法な行為であるとはいえず、この点についての原告の主張を採用することはできない。
原告が指摘する国家公務員及び国務大臣らの発言・回答は行政活動に関する一般的なものにすぎず、原告個人に関してされたものとはいえないし、一般人の普通の注意と読み方・聞き方を基準として、当該発言回答が原告に関するものであることを認識しうる程度に特定性・具体性有しているということもできない。原告主張の違法行為(羽田浩二外務省北米第一課長の回答及び河相周夫外務省北米局長の発言)においては、「西山氏の御発言については承知しておりません。いずれにせよ同氏個人の御発言について政府としてコメントする立場にないと考えます」との回答ないし「…日米間の合意というのは日米返還協定がすべてでございまして、それ以外の密約は存在していないということでございます。」との発言が、一般人の普通の注意と読み方を基準として、原告の社会的評価を低下させるに足りるものであると認めることはできない。したがって、この点についての原告の主張は理由がない。
原告は、平成12年5月24日ころ、朝日新聞の米公文書発見報道に対して、外務省職員と河野洋平外務大臣は、吉野文六に電話して、「(報道の問い合わせに対して)『密約はない』と否定してほしい。」と懇願し、原告の名誉回復の機会を奪い、この行為は原告に対する不法行為を構成すると主張する。しかし、外務省職員と河野洋平外務大臣が上記行為をしたと認めるに足りる的確な証拠はなく、この原告の主張を採用することはできない。
よって、その余の点について認定・判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないことに帰する。
――――◆――――
原告側は「時効の起算点は、米公文書が発掘・報道された2002年6月とすべきだ。除斥期間を画一的に当てはめることは公平に著しく反し、権利乱用に当たる」と主張したが、上記のような三百代言%I判決で、賠償請求の道を断ち切ってしまったのである。
閉廷後、東京地裁内の記者クラブで西山太吉氏と藤森克美弁護士が記者会見、次いで弁護士会館で「沖縄密約訴訟を考える会」の報告会も開かれ、両氏から肩透かし判決≠ノ対する厳しい批判と今後の決意が表明された。
西山太吉氏 こちらが目指したものは、全部肩透かし。想像していたものの中で、一番グレードの低いものが出てきた。除斥期間という武器で何でも抹殺できる、これが国家機密裁判だ。行政のメンツを守るためだけで、日本に司法がないことを証明するような判決だった。歴代外相が密約を否定し、それを社会、メディアが容認する。これは先進国じゃない。
権力は鉄壁=c生やさしいものじゃない。しかし、法廷は自分にしかできないジャーナリズムの場。勝ち負けはあるにせよ、問題を発信し続けていくことに意義がある。
藤森克美氏 密約の存在に触れず、除斥期間という一番楽な方法で結論を導き出したと言わざるを得ない。木で鼻をくくったような判断で、非常に志の低い判決だ。控訴はもちろんだが、民事ではつまみ食い#サ断されやすい。この際、(除斥期間で逃げられず、密約の存在の判断を避けられない)刑事再審を求めたいと考えている。
吉野文六・元外務省アメリカ局長は2006年2月、北海道新聞の取材に応じ、「沖縄返還交渉当時の米国はドル危機で、議会に沖縄返還では金を一切使わないことを約束していた背景があった。交渉は難航し、行き詰まる恐れもあったため、沖縄が返るなら(本来、米国が負担すべき)土地の復元費400万ドルを日本が肩代わりしましょうとなった。当時の佐藤栄作首相の判断だ。……交渉当初は米国が無償で沖縄を返すと言うので、佐藤首相もバーンとぶち上げた。ところが、先ず大蔵省が折衝を始めたら、米国はこれだけ日本でもってくれとリストを出してきた。外務省は驚きましたよ。(協定7条で日本側が負担する)3億2000万ドルだって、核の撤去費用などはもともと積算根拠がない。いわばつかみ金。あんなに金がかかるわけがない。費用を多くすればするほど『核が無くなる』と国民が喜ぶなんていう話も出た。3億2000万ドルの内訳なんて誰も知らないです。……西山さんの言っていることは正しい。だから機密扱いなんです」と初めて密約を認めた(道新06・2・8朝刊)。
この後も各報道機関に同趣旨の証言をしており、密約問題のキーマン的存在になった吉野氏だが、今回の判決内容を聞いて「西山さんは本物の電文(公電)を入手して報道したがゆえ罰せられた」(毎日07・3・28朝刊)、「法律の目的は真理の探求ではなく、みんなが平和に収まることだから、この判決は妥当だと思う。ただ、僕は裁判で罰せられても真理を探究する西山さんは偉いと思う」(道新同日朝刊)などと、感想を述べていた。
「沖縄密約訴訟を考える会」世話人の田島泰彦・上智大学教授は新聞数紙の取材に答え、「米公文書や吉野発言などで密約は証明されており、西山さんを国家公務員法違反で有罪とした根拠はなくなった。当時と状況は変わっているのに東京地裁判決は全く触れず、除斥期間を中心とする法的な形式論だけで退けてしまった。司法が本来すべき判断を示さず、歴史の真実を隠した。非常に残念な判決だ」と、地裁判決を厳しく批判している。
原告側は東京地裁判決を不服として控訴。一貫して「密約」の存在を否定している政府の厚い壁に挑む原告側との厳しい攻防は、今後さらに続くに違いない。
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