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<ヤマハ発動機>幹部ら3人逮捕…ヘリ不正輸出の疑い
(毎日新聞 - 02月23日 15:31)
大手二輪車メーカー「ヤマハ発動機」(静岡県磐田市)の無人ヘリコプター不正輸出事件で、経済産業省の許可を受けずに05年12月、軍事転用が可能な無人ヘリを中国に輸出しようとしたとして、静岡、福岡両県警の合同捜査本部は23日、ヘリを開発・輸出した同社スカイ事業部長、内山一雄容疑者(58)ら社員3人を外国為替及び外国貿易法(輸出の許可)違反の疑いで逮捕した。法人としての同社も同容疑で静岡地検に書類送検する。捜査本部は同日、同社など7カ所を家宅捜索。今後は輸出開始の経緯などについても追及する。【稲生陽】
このほか逮捕されたのは、いずれも同事業部主査で、輸出管理グループ長の板垣孝文(57)、開発グループ長の鈴木昭彦(49)の両容疑者。調べでは、内山容疑者らは05年12月21日、輸出に経産相の許可が必要な無人ヘリ「RMAX L181」1機を、無許可で中国・北京市の空撮会社「北京必威易創基科技有限公司」(BVE)に輸出しようとした疑い。いずれも容疑を否認している。
輸出貿易管理令(05年1月改正)では、液体を噴霧できるよう設計され、燃料のほかに液体など20リットル以上を載せて運べる無人航空機で、(1)自律的な飛行制御及び航空能力を有する(2)視認できる範囲を超えて人が飛行制御できる機能を有する−−のいずれかに該当する場合、輸出に許可が義務づけられている。
「RMAX L181」は高度150メートルまで飛行でき、リモコンから手を離せば自動的にホバリングして下りてくる機能がある。捜査本部は同機が(1)、(2)両方の規制対象にあたると判断した。
スカイ事業部は89年に新設された約40人の技術者集団。同社は事務系の専門部門が輸出を担当しているが、無人ヘリだけは同部が担当。内山容疑者は99年から現職で、輸出管理なども統括していた。BVEとは01年7月から取引を始め、今回の事件と同型の機種9機を輸出している。
経産省は05年12月、ヤマハ発動機本社などを立ち入り調査。捜査本部は昨年1月、外為法違反容疑で関係約20カ所を家宅捜索した。梶川隆社長は当時、「05年12月に経産省から受けた業務審査でも法令違反はなかった。違反などとんでもない」と話していた。
ヤマハ発動機は東証1部上場で、二輪製造世界2位。農薬散布用無人ヘリを87年に開発し、シェアは国内トップクラス。
◇軍事転用の可能性追求…捜査本部
「家電などの方がよほど怖い。後ろめたい気持ちはない」。内山一雄容疑者は逮捕前、強硬な姿勢を崩さなかった。しかし、中国メディアはBVEがヤマ発のヘリを参考に独自に無人ヘリを開発したと報道。ヤマ発が同様のヘリ9機をBVEに輸出、代金以外に年に数千万円を受け取っていたことも明らかになっている。捜査本部は、大手メーカーの技術者集団による商行為が軍用ヘリを生んだ可能性があるとみて追及する。
スカイ事業部は89年に新設され、総勢約40人でヤマ発では最小の事業部。うち半数は開発グループに所属する技術者集団だ。内山容疑者は99年に現職に就き、同部を統括していた。同社は製品の輸出は法律を熟知した専門部門が担当しているが、無人ヘリに限っては開発から輸出まで同部が担当している。ある幹部は「スカイ事業部が輸出まで担当したのは、事務系の社員にはヘリのことは分からず判断できないからだ」と説明する。
同社がBVEと取引を開始したのは01年7月。以降、今回の事件と同型の「RMAX L181」を9機輸出した。ヤマ発は疑惑発覚後、記者会見などで「改造には世界レベルの高い技術が必要なので無理。違法性はない」と、軍事転用を一貫して否定してきた。一方同社に、購入代金とは別に年間数千万円規模の入金がBVEからあったことも発覚。密接な関係が浮き彫りになっている。
さらに03年11月、中国人民解放軍と関係の深い「保利科技有限公司」にも、より性能の高い無人ヘリ1機を輸出していたことも判明している。
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