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「沖縄返還密約」裁判の今日的意義 3月27日に「国家賠償訴訟」判決 池田龍夫(ジャーナリスト)
太平洋戦争後27年間も米軍占領下にあった「沖縄」が、祖国に復帰したのは1972年5月15日。あれから35年の歳月を経て、沖縄は平和の島≠取り戻せたろうか。今なお米軍基地の75%が集中している現状は深刻である。在日米軍再編をめぐる動きが大きな政治課題になっている今、沖縄返還時の「密約」に関する裁判が注目されている。
「密約の存在」をスクープした西山太吉・毎日新聞記者(当時)は、佐藤栄作政権の国策捜査(外務省機密漏洩の疑い)で有罪判決を受け、30余年蟄居し続けてきた。その西山氏が2005年4月25日、「密約を知りながら違法に起訴したうえ、密約の存在を否定し続けたことで著しく名誉を傷つけた」と、国に謝罪と約3300万円の損害賠償を求める訴訟を提起。1年半に及んだ東京地裁(加藤謙一裁判長)の口頭弁論が昨年末結審し、3月27日に判決が下される。
沖縄返還密約を告発した西山氏が、30数年前の日米関係と現在の米軍再編の類似性を的確に指摘しているので、その一部を紹介したい。
「歴史は繰り返す≠ニいうが、今回の日米軍事再編の動きをみていると、まさに、あの沖縄返還時の手法そのものの再現といっても、決して言い過ぎではない。いや、繰り返す≠ニいうよりは、あの当時まいたタネが、その後芽を出し、どんどん成長して、この手狭な庭園の中で、必要以上に深く、広く根を張りめぐらすほどの巨木としてもはや、ちょっとやそっとで動かすことのできない存在にまでなったと言ったほうがいい。しかも、この巨木の周囲には、立ち入り禁止≠フ柵が張りめぐらされた感すらする。
これまで、二度にわたって公開された米国の外交機密文書(2000年・02年)、さらには先に世間を驚かせた吉野文六元外務省アメリカ局長の証言(2006年2月)にみられるように、米国は、沖縄返還に際し二つの基本方針で臨んだ。一つは巨大な沖縄の軍事基地の自由使用であり、ほかの一つは、基地関係諸経費の日本側による肩代わりの推進である。この二大方針に基づいた米国の強い要求に対し、日本側は、大幅な譲歩をもって応じ、対米コミット(約束)を国内に流した場合の摩擦や混乱を避けるため、あるものは隠し、あるものはウソをつくといった外交史上例のない情報操作を繰り広げ、交渉成果の美化=i吉野証言)に奔走したのである。
例えば、核抜き≠フ問題では、それを『永久秘密』とすることを予め想定してか、正式な外交ルートとは別に、『密使』をもって衝に当たらせ、表向きは核抜き≠うたいながら、裏では、緊急時における核の沖縄への持ち込みについての日米両首脳による秘密合意議事録の署名という政治犯罪をやってのけた。また、返還後の米軍基地の扱いについても、『返還が先決であり、そのため実質的な話し合いは、ほとんどしなかった』(吉野証言)にもかかわらず、『都市部を中心に、基地の整理縮小を推進する』と宣伝し、『基地返還リスト』を公表したのである。これがいい加減な空手形≠ナあったことは、30数年経った今、沖縄の米軍基地が、日本全体の75%を占めているという事実が証明している。
財政面では、米側支払いの形をとったXOA(ボイス・オブ・アメリカ)の沖縄外への移転や米軍基地の復元補償などを対米支払い3億2000万ドルの中に含める一方、今日の『思いやり予算』の原型ともいえる米軍施設改良・移転工事費6500万ドルを地位協定からはみ出していることと、対米支払いの増大につながる(米外交機密文書)という判断から、ついに発表しないまま実行に移し、さらに円をドルに交換して、無利子のまま米国に自由に使わせて1億1000万ドル以上の便宜供与を実施したことも公表しなかった。
以上の対米支払い根拠の偽装と復元補償費の肩代わりや、6500万ドルの件は、返還時に暴露された電信文中に明記されていたが、ほかの問題も、すべて米外交機密文書により詳細が表面化し、吉野氏もこれを追認したのである。」
「日米軍事再編――沖縄返還の今日的意義」と題する西山論文(『琉球新報』06・5・15〜17掲載)のほんの一部を紹介させてもらったが、見事な今日的分析≠ナある。「在日米軍再編推進特別法案」が2月9日閣議決定され、日米軍事一体化≠ェ加速されている現状が、歴史は繰り返す≠実証しているように映る。「今回の日米軍事再編は、日本側からの双務的協力の方向を固定化するとともに、これを拡充するための突破口をつくり出すことにある。沖縄返還が安保変質の原点であるとすれば、今度の再編はその集大成であり、究極の変質と言ってよい。このことは、憲法第9条の改憲≠ヨの外堀を埋めることを意味する」という西山氏の指摘はズシリと重い。
▽生かされなかった「朝日1998年のスクープ」
「沖縄密約問題とジャーナリズム」と題する研究会が2月3日岩波セミナーホールで開かれた。「日本マスコミ学会ジャーナリズム研究部会」主催で、マスコミ研究者やジャーナリストが多数集まって、熱っぽい論議を交わした(講師に招かれた西山太吉氏の発言内容は、インターネット新聞『日刊ベリタ(2・5)』参照を)。
「沖縄密約問題」が再び注目されるようになった契機は、「2000年の米機密文書公開」以降と言われてきたが、それ以前に二つの重要な指摘があった。しかし ジャーナリストも研究者も追究を怠っていたことが、今回のセミナーで取り上げられ、反省をこめて「ジャーナリストと研究者の連携」などにも論議が及んだ。
2000年の米機密文書公開以前の文書は1998年の朝日新聞記事と、1999年の政策研究大学院大学の「オーラルヒストリー」に応えた吉野文六証言の二つだが、朝日新聞98年7月11日夕刊1面トップに掲載された「特ダネ」をきっかけに、この問題を掘り下げる意識を持たなかったのは、ジャーナリズムの敗北≠ニ指摘されても抗弁の余地はあるまい。98年の朝日記事は、2000年公開文書のエッセンスが書き込まれている貴重な資料だ。
[注=「吉野・オーラルヒストリー」が公になったのは2006年以降だった]
「沖縄返還時/米軍移転費を秘密補償/大蔵が覚書/協定外に6840億円」との見出しを掲げたトップ記事で、「沖縄返還に日米政府が合意した佐藤・ニクソン日米首脳会談直前の1969年11月、当時の福田赳夫蔵相が米財務当局に沖縄米軍施設の移転費などを日本側が負担することを約束し、日米財務当局で秘密覚書を取り交わしていたことが、我部政明・琉球大教授が入手した米国立公文書館の外交文書や関係者の話で明らかになった。日本は沖縄返還協定に記載された対米補償額3億2000万ドル(当時の為替レートで1152億円)とは別に、在日米軍基地改善費などとして1億9000万ドル(同684億円)を秘密裏に米側に補償していた。公表分の補償額についても、核撤去費を実際より大幅に水増しし、核とは無関係の米軍施設移転費用などに転用することを黙認していた」と前文に明記していた。
このあとの本文74行には「沖縄返還後に米大使館が作成した報告書では、沖縄返還協定に記載された対米補償額3億2000万ドルの使途についても、日本政府の公式な説明と食い違いを示している。日本政府の発表では、核撤去費用として7000万ドルが米側に手渡されたが、米側が実際に核撤去に使ったのは500万ドルに過ぎなかった。かわりに日本側発表にはない米ラジオ局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の移転費や『その他支出』などに計7800万ドルが使われており、核撤去費や『労働コスト増大分』の保証金が転用された実態を明らかにしている。柏木・ジューリック両氏の交渉は71年4月ごろまで続いており、同年6月の返還協定調印式までに最終的な秘密合意を結んでいた可能性が高い」など密約の存在≠推察できる記述は、本質を衝くものだ。
同紙2面の解説では、「文書は『沖縄の買い戻し』が明るみに出ることを福田蔵相ら当時の財務当局が恐れ、その費用を予算に計上させない方法に腐心しながら米側に『機密扱い』を求める経緯にも触れている。その結果得をしたのは、『より大きな経済的利益』を得た米国であり、交渉の『影の部分』を見せずに領土回復という政治的成果を達成した佐藤政権だった。……4半世紀が過ぎた今も、普天間飛行場、那覇軍港などの返還は、代替施設の建設に地元が反発し、暗礁に乗り上げたままだ。普天間基地返還に伴う海上基地建設問題などで、この『覚書』が前例になっていないか――」などと指摘していた。
この記事から9年も経過した「沖縄基地の現実」の解説としても通用する内容ではないか。「沖縄返還の今日定意義」を痛切に感じるのである。
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