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(回答先: 既に進行中か?安倍降ろし。 座礁しかけた安倍政権または既に座礁した安倍政権。 投稿者 新世紀人 日時 2007 年 1 月 30 日 15:28:06)
□時評2007「小泉改革」使い捨てのススメ =中西 寛 [SAPIO]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070129-01-0501.html
2007年1月30日
時評2007「小泉改革」使い捨てのススメ =中西 寛
発足直後には中川秀直自民党幹事長が「ロケットスタート」と自賛した安倍政権だが、ここにきていささか失速気味である。その理由としては、いわゆる造反議員の復党問題や道路特定財源問題をきっかけとして、小泉前首相が「抵抗勢力」と指弾した自民党内の勢力に対して安倍首相が後退を余儀なくされているとの見方が広まってきているから、といった説明がされているようである。つまり、小泉政権の改革路線を引き継ぐには安倍首相は指導力不足ではないか、と見られ始めているというのである。
しかし問題の本質は少し違うところにあるのではないか。小泉政権の抱えていた課題と安倍政権が果たすべき課題とはかなり異なっているにもかかわらず、安倍政権がその違いを明確に表現しえていない点に真の問題があるのではないだろうか。そのために安倍首相は、小泉前首相と比べられて批判されるという不利な状況に自らを追い込んでいるように思われる。
小泉政権の課題は、何と言っても閉塞状況に陥っていた日本の政治および経済に突破口を見出すことであった。その核心が、徹底した不良債権の処理であり、また派閥の集合体としての自民党の体質の変革であった。これらを実現するために、小泉前首相は「改革」を唱え続け、道路や郵政といった目に見えやすい問題を取り上げて抵抗勢力との対決という図式を演出し、国民の支持を集め続け、一定の成果を上げた。しかしそれは病んでいた日本に対してそれまでできなかった荒療治として思い切ってメスを入れ、病巣の一部を切除したとは言えても、日本という国を完全な健康体にするところまではいかなかったのである。たしかに日本経済は危機的な低迷こそ脱したが、依然として記録的な低金利状態であり、経済がゆっくりと改善している状態を持続的な好景気と呼んでいるに過ぎない。郵政や道路といった目に見える病巣についても完全に処理が済んだわけではなく、ましてや日本の経済にとって根幹的な問題である財政や社会保障といった問題については小泉流の外科手術では直せそうにもない。
安倍首相は事実上、小泉前首相から政権を禅譲された形になったため、小泉政権の成果と同時に負債も引き受けることになってしまった。復党問題などはその最たるもので、もう少しうまいやりようはあったかもしれないが、小泉前首相が郵政法案否決を受け解散総選挙に打って出て、「刺客」を大量動員したことの後始末を背負わされたというのが本当のところであろう。
もちろん日本にとって外科手術的な改革が必要なくなったとまで言うつもりはない。しかし現下の日本の基本的な課題は、今日の日本の体質に見合った健康状態を作り出すことである。旧体制に戻ることではもちろんないが、改革は改革のためであってはならない。手術にばかり目がいくと「手術は成功したが患者は死んだ」ということになりかねない。
現在の日本の課題は改革よりも構築であり、時代にふさわしい体制を作ることである。安倍首相が出している「美しい国」や「主張する外交」といったスローガンにはそういうメッセージが込められているのかもしれないが、その具体像がはっきりせず、国民の理解を得ているとは言いがたい。そうした言葉が単なる美辞麗句と受けとめられないためには、首相が目指している到達点をより具体的な姿として示すとともに、いつ頃、どのようにそこに到るのかに関する手順も明確にされなければならない。その上で、国民が関心を持つ直近の課題、たとえば、いじめや北朝鮮などの問題がどのように長期的な課題と結びつけられて解決されていくのかを説明することである。
発足当初は七〇%程度と高水準だった内閣支持率も、最近の世論調査では五〇%を切る水準に下がってきた。しかしそれでもまだ高い。支持率低下を気にし過ぎ、羽音に驚いてあわてふためいてはかえって国民の信頼感を低下させかねない。前首相のようにサウンドバイトを生み出す能力は持たずとも、丁寧な説明で計画性を印象づけることが可能だろう。
「政治家は使い捨て」という小泉前首相の言葉はさすがに至言である。「小泉改革」をよい意味で使い捨てにすることができるか否か、すなわち安倍政権の小泉政権からの自立をどのように印象づけられるかで、この政権の命運は決まってくるだろう。
(なかにし ひろし 京都大学教授)
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