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http://www.korea-htr.com/jp/091110/110411kg.htm から転載。
【寄稿】準戦時での異常な制裁騒動/在日同胞の人権じゅうりん
戦争がひき起こす差別と犯罪
前田 朗(東京造形大学教授)
日本政府は、朝鮮の「ミサイル実験」と「核実験」に対して矢継ぎ早に各種の「制裁措置」を実施してきた。外為法に基づく送金停止や資産凍結など「金融制裁」に始まり、「万景峰九二」号の入港禁止、外国人登録の国籍欄が「朝鮮」の者に対する出入国制限措置など、ヒト・モノ・カネの動きを遮断する政策である。これによって在日朝鮮人は祖国への往来が極めて制限され、家族・親せきとも会えない状況が生まれている。
さらに、朝鮮に渡航しようとした女性が持っていた薬品を口実にした薬事法違反容疑と称する不当な強制捜査など、瑣末(さまつ)の事案を取り上げて誇大に宣伝することにより、朝鮮人弾圧キャンペーンを繰り広げている。
朝鮮人弾圧に躍起になっているのは政府だけではない。マス・メディアは連日のように警察情報をたれ流して、朝鮮人非難キャンペーンに加担している。
こうした騒動は、ほとんど戦時における敵国に対する対応というべきもので、日本国憲法にも国際法にも違反する異常な態度である。
このキャンペーンによって、日本社会は朝鮮人に対して暴行・暴言・脅迫事件を招いている。全国の朝鮮学校には多数の脅迫電話、無言電話、中傷メールが送られている。「殺すぞ」「朝鮮帰れ!」「火炎瓶を投げてやる」「地獄に落ちろ」などの脅迫が行われ、大阪では初級学校一年生男子が日本人に殴られた。愛知県では中級学校男子が殴られた。朝鮮総連関連施設に対する放火未遂事件も発生している。
弾圧キャンペーンに精を出しているマス・メディアは、朝鮮人に対する差別と犯罪を、申し訳程度に報じたが、差別と犯罪ではなく、単なる「嫌がらせ」としている。
今年三月に国連人権委員会に提出されたドゥドゥ・ディエン「人種差別問題特別報告者」の報告書は、日本における朝鮮人差別に言及して、その解決を求めている。教育における差別や、暴行・脅迫事件についても明示して、日本政府に解決を求めている。
ディエン報告者は、本年九月には国連人権理事会で、十一月には国連総会で、その報告書の内容を紹介し、日本における人種差別を非難した。ところが、マス・メディアはこれを黙殺し、日本政府は人種差別の存在を否認する異常な挙に出ている。
政府とメディアが完全に共犯体制で「朝鮮人に対しては何をしてもいい」といった雰囲気をつくり出している。朝鮮人差別の特徴は、単に社会に理不尽な差別があるということではなく、政府とメディアが長期にわたって結託して、上から差別政策を実施してきたことにある。
人種差別や民族差別は、どの社会にも多かれ少なかれ存在する。差別のメカニズムにも共通性が指摘されてきた。
例えば、バイアー、クライダー、ビッガース「偏見犯罪の動機」(『現代刑事司法雑誌』十五巻一号、一九九九年)は、犯罪者が自己の行為を正当化する論理、手法を解明しようとした。キリスト教の一派であるアーミッシュに対するヘイト・クライム(憎悪犯罪)では「中立化の手法」が用いられ、@傷害の否定(実害はないじゃないか)A被害の否定(現実の被害者の無視)Bより高い忠誠(自分が属する集団の安全という言い訳)C非難者に対する非難(被害者と称する者こそ犯罪者だ)D責任の否定(他の諸事情への仮託)が試みられる。
@朝鮮人に対する差別と犯罪について、日本政府は沈黙を決め込み、メディアは「嫌がらせ」として小さく扱う(傷害の否定)。A日本における人種差別について、日本政府はこれを否定してみせる。朝鮮人被害者に対する聞き取り調査はしない(現実の被害者の無視)。B朝鮮敵視キャンペーンによってナショナリズムをあおり、「日本人」として「正当化」をはかる。日本社会の安全を叫びだす(より高い忠誠)。C朝鮮政府を「悪魔化」し、朝鮮総連を糾弾し、朝鮮人を両者と結びつけることによって、差別であることを見えなくする(非難者に対する非難)。D「ミサイル実験」や「核実験」への対応であるからやむをえないと正当化する(責任の否定)。
日本における朝鮮人差別は人種差別一般と同じ側面も持つとはいえ、それ以上に独自の性格を有している。東北アジアにおける歴史と現在に由来する差別であるから、その歴史性に刻印されざるをえない。二〇〇六年は東北アジアにおける政治的緊張が改めて激化したが、ここに至る歴史を無視しては、真の問題が見えなくなる。ここでは、要点のみを指摘しておこう。
@韓国併合に始まる植民地化と植民地支配における膨大な差別と犯罪の確認が出発点である。A第二次大戦後の米国の占領政策に便乗した、戦争と植民地支配の清算の否定が続く。B朝鮮戦争における米軍の出撃基地としての役割、戦争支援、そして朝鮮特需による戦後復興を果たした。C朝鮮半島の分断を固定化させる日韓条約と朝鮮敵視政策。D日米韓合同軍事演習など東北アジアの緊張を激化させる威嚇政策への加担。E一九九〇年代の戦後補償運動に対する反発・開き直りとナショナリズムのせん動。F朝鮮の日本人拉致事件を利用した敵対化と朝鮮人差別意識の醸成。――こうした要因を踏まえてみると、日本の朝鮮人差別政策が、一方では日本自身の論理により、他方で米国による朝鮮政策とともに(それに応じて変化を遂げながら)進められてきたことを理解できるであろう。
中間選挙の敗北でブッシュ政権の朝鮮に対する姿勢にもわずかながら変化の兆しが見られる。にもかかわらず、日本政府はさらに緊張を激化させようと躍起になっている。しかし、ブッシュ戦略が最初から破たんしていたように、日本政府の東北アジア政策にも展望がない。日本政府は緊張激化政策を放棄して、朝鮮人差別を速やかに終わらせるべきである。
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