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(回答先: 長野県警は自他殺両面で捜査、民事の判決は「他殺」認定 [朝日新聞] 投稿者 white 日時 2007 年 1 月 24 日 13:30:26)
□アベック焼殺 [JANJAN]
http://www.janjan.jp/column/0609/0609040622/1.php
アベック焼殺 2006/09/05
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長野県塩尻市の奈良井川河川敷で乗用車が燃え、焼け跡から男女の焼死体が発見された。
男性は車内の後部座席、女性は車から10メートル程離れた所に倒れていた。燃え方が激しく男性は性別が分からないほどだったというが、名前は酒井宏樹さん(当時24才)、女性は渡辺芳美さん(当時24才)と判明した。この事件は2002年10月12日の夜に起きた。
事件当時、渡辺芳美さんは「桃井望」という芸名の人気AV女優だった為、センセーショナルに取り上げられた。しかし、事件発覚から3日後の10月15日、北朝鮮による拉致被害者5人が帰国し、ニュースは拉致一色ということになり、続報はあまり伝えられることはなかった。
燃えた車のナンバーから宏樹さんの実家に事件当日に連絡が入った。母親の倫子さんは捜査員から事故は考えられないから、事件か無理心中しかないと言われ、更に「事件なら目撃情報とかいろいろあるので、これは薄いかもしれない」と根拠の曖昧な理由で、無理心中の可能性が高いと言われたという。
事件発覚から2〜3時間後のことだという。警察は現場の状況から無理心中と決め付けていた節がある。司法解剖の結果、芳美さんは背中を含む4ヶ所を刺された後に火を付けられたという。車の中から凶器と見られる包丁が宏樹さんの遺体のそばから見つかっている。
芳美さんには背中に刺し傷がある、自殺するのに自分の背中を刺すとは考えられないから、無理心中だとすると宏樹さんが芳美さんを刺し殺した後に灯油をかけて火を点け、宏樹さんは自分の車の後部座席に乗り込み、包丁で刺してから灯油を浴びて火を点けたということになる。
ある捜査員からは「報道には1回広報すればいい、我々は犯人が分かればいいのだから」と言われたという、そして別の捜査員からは、もし相手の女性の家族から損害賠償を請求されたら、弁護士に相談したらいいと言われたという。
警察によって無理心中と断定されれば法律的には、宏樹さんは被疑者死亡で検察庁に証拠書類が送られて、事件は落着することになるのだが、その容疑は殺人であり、宏樹さんは殺人者という汚名を着せられるということになる。母親の酒井倫子さんは悲しみに打ちのめされる中、息子を殺人者にしたくはないという思いと、どこか釈然としない思いがあったという。
事件の翌日の夜、宏樹さんの遺体と対面した倫子さんは「もう真っ黒で、ぱっと見た時、首が長いなと思ったのです。細身で首の長い子だったので息子だと思ったのです。なんでこんなことなってしまったのだろう。こんなことになる筈がない。正直なにかがおかしいと思った」と語った。
そして司法解剖の結果については、何回聞いても息子さんのは分かりませんと言われたというが、2人とも肺の中からタバコ一服分の煙が検出されたという。事件後の塩尻署の発表によると、芳美さんの体には刃物による刺し傷が数ヶ所あり、これが致命傷になったと見られるが、宏樹さんの死因は不明と発表されて刺し傷については分からないとしていた。
しかし宏樹さんの友人は捜査員に宏樹さんに悩み事やトラブルがなかったかなどと聞かれた。心中の理由を探していたようだったというが、友人は宏樹さんに刺し傷があったのか気になり遺体の状態を聞いてみると、宏樹さんにも刺された跡があったことを認めたという。ここで事件の状況を整理すると、芳美さんは背中など4ヶ所を刺されたことが致命傷と見られているが、その後灯油などを掛けられ火を付けられた。
宏樹さんは刺された跡があり、致命傷ははっきりしないが焼かれた状態で発見された。2人の肺からは同じようにタバコ一服分の煙が検出された。刺されたことが致命傷になったということは、火を点けられる前に芳美さんは死亡していたか瀕死の状態だったということを意味している。その芳美さんと同量の煙が宏樹さんの肺から検出されたということは宏樹さんも火を点ける前に死亡していたか瀕死の状態だったということにならないだろうか。
法医学者の上野正彦氏によると、たばこ一服分ほどの煙が肺に入っていたということは、生きていて吸い込んだということではなく、すでに死亡していた可能性があるという。死亡した後に火を点けられても、肺の中にはその程度の煙は入るのだという。この証言は大きな意味を持っていると思う。火が付けられる前に宏樹さんも芳美さんも死んでいた可能性があるということは、一体誰が火を点けたのか。第三者が介在したことを意味している。
しかし警察は殺害されたとは断定していない。倫子さんが心中ではないと考える根拠はまだある、事件の2時間ほど前に宏樹さんと電話で話しているのだ。宏樹さんは塩尻市でアパート暮らしをしている。「週末には伊那市の実家に帰ってくるのですが、今週も帰ってくるのかと聞いたら、今週の土日は忙しいので帰れない」といつもとまったく変わらない様子だった。
宏樹さんは仲間とバンドを作り、ボーカルを担当している。そのバンドのライブが11月19日に予定され、事件翌日の10月13日も練習することになっていたという。その練習についてのメールを事件の30分ほど前に友人にしている。更に事件の5日前の7日にはヘヤードライヤーを購入していたり、2日前の10日には宏樹さんはオメガの腕時計を修理に出していることが分かった。事件後の11月19日には2級ボイラー技士の資格を取るため、試験を受ける予定になっていたのである。
心中しようと考えていたらこんなことをするだろうか。話を聞けば聞くほど心中するような理由が見つからない。そして現場から凶器と見られる包丁が発見されているが、宏樹さんのアパートには2本の包丁がそのまま置いてあるというし、灯油を運ぶのに使ったとみられるポリタンクも彼のアパートに4個置いてあり、無くなったものはないという。
宏樹さんは母親の倫子さんを受取人にした生命保険に加入していた。警察は殺人と断定していないことから、保険会社は保険金を払えないという。仮に自殺の場合でも、一定の期間が経過すれば保険金が支払われることになっているのだが、酒井さんは、その期間を満たしていなかった為に保険金がまだ払われていない。
そこで母親の倫子さんは生命保険会社を相手取って保険金請求訴訟を起こした。宏樹さんは殺害されたのだから保険金を支払うべきだという主張なのだが、生命保険金3600万円が目的ではないという。この訴訟の中で宏樹さんと芳美さんは心中ではなく、何者かに殺害されたということを裁判所に認めてもらうことにある。
それによって警察に殺人事件の捜査本部を設置して、捜査をしてほしいという気持ちからだった。訴訟を起こすことの意味はそこにある。8月8日、長野地裁飯田支部の法廷で母親の倫子さんは息子が殺害されるような理由があると思っている訳ではないが、心中するような理由は何処にも無いと訴えた。証言の後「頭が真っ白になって……」と話していたが、理路整然と証言している姿に息子の死の真相を知りたいという母親の執念を感じた。
心中なのか殺人なのか、そしてなんと言っても初動捜査は適正に行われていたのか、あれから3年10カ月。所轄の塩尻警察に現在の捜査状況を聞いてみた。現在も20名の捜査員が捜査を続けているというが、未だに殺人事件なのか心中なのか「決め手がない」という。事件発生当時の捜査員はまだ居るというが、捜査幹部は人事異動で誰も残っていない。
(高村智庸)