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地球の悲鳴 流氷異変 100年で4割減 (「しんぶん赤旗」)
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投稿者 そのまんま西 日時 2008 年 3 月 16 日 11:41:56: sypgvaaYz82Hc
 

地球の悲鳴 流氷異変 100年で4割減 豊かな海 オホーツクは今
2008年3月16日(日)「しんぶん赤旗」

 「流氷の南限」といわれるオホーツク海では、近年、地球温暖化の影響で沿岸に押し寄せる流氷の勢いが弱まっています。流氷の減少は、地域の環境や住民の生活にどんな影響を与えるのでしょうか。(田代正則)

 オホーツク海に一番近い駅、北海道網走市のJR北浜駅からは、波打ち際まで埋め尽くされた流氷の先にうっすらと浮かぶ知床(しれとこ)連峰が見えます。

 駅からほど近い浜辺。東京から来た二十三歳だという男性がたたずみ、
じっと流氷を眺めています。

 「就職に失敗して、もう三週間、こうやっています。友達のところに来たんですが、流氷が行ったり来たりして、こんなのがあるんだって感じです」

 流氷を間近に見ようと紋別市や網走市の砕氷船によるクルージング(船での巡航)や、知床半島での流氷ウオークのために多くの観光客が国内外から訪れます。

センサー

 冬にシベリアから寒風が吹き付けるとオホーツク海北部から南へ凍る範囲が広がり、平年で一月中旬から下旬には北海道まで到達します。

 ぎりぎりの環境で凍る北海道のオホーツク沿岸は、地球環境に敏感に反応する
“高感度センサー”とも呼ばれます。

 道立オホーツク流氷科学センター(青田昌秋所長)が調べたところ、オホーツク沿岸の平均気温は百年前より〇・六度上昇し、流氷勢力は40%減少していることが分かりました。百年以上前から流氷観測を続けている網走観測所(現地方気象台)のデータをもとに算出しました。

 流氷の減少は、水産資源の宝庫であるオホーツク沿岸の漁業に大きな影響を及ぼしています。

 網走川の河口付近では、漁師がキンキ釣りの漁船から雪を払い、水で洗って整備して、流氷が去る「海明け」を待っていました。キンキは、太平洋やオホーツクの深海に生息し、網走近海で釣れたものが最高とされています。

 かつては冬の間漁に出られなくする流氷は、漁師からやっかいもの扱いにされていました。しかし、漁業にとっての流氷の役割が明らかになり、「ここ十五年で意識が変わった」と網走漁業協同組合の漁場環境保全委員長を務める新谷哲章さんは言います。

 流氷の運ぶ植物性プランクトンが春に増殖し、
これを餌に動物性プランクトンが増えて、海を豊かにします。

漁業被害

 流氷によって漁の休養期間が生まれ、乱獲が防がれたり、流氷が海底を削り取り海のごみ掃除もしてくれます。ウニなどをつぶしてしまう恐れがありますが、「最近はそんな心配がいるような大きな流氷は来ないなぁ」と新谷さん。

 流氷は波を吸収し、しけの影響を抑えていました。近年、気候が不安定になり、急速に発達し風雨の強い“爆弾低気圧”が冬に発生して頻繁にオホーツク沿岸を襲いますが、波を吸収する流氷の減少傾向によって、大きな漁業被害が出るようになりました。

流氷減がホタテ漁に影

 食用のホタテガイは北海道で年間約四十万トンの水揚げがあり、道内漁獲量の約30%を占めます。そのうち約二十五万トンがオホーツク海でとれます。

 昨年一月の大型低気圧のときには、網走漁協だけで、二千トン、
二億三千万円分のホタテ被害がありました。

 地球温暖化で流氷が減って、大型低気圧が発生しやすくなり、流氷の少ない海を荒れさせるという悪循環が生みだされているのではないか―。漁業者にこんな不安が募ります。

 流氷が減れば、ホタテのえさとなるプランクトンが減り、ホタテの生育に影響が出る懸念もあります。新谷さんは「漁業は自然の生産力で成り立っており、良好な環境なくしてありえません」と語ります。

 網走漁協では、海を豊かにする植林や海浜清掃、アイドリングストップなど環境対策を心がけていますが、「流氷を直接増やす方法は、ないんだよなぁ」と新谷さんはうなります。

釧路は21年「接岸なし」

 ことしの流氷は、平年並みの規模となり、気をもんでいた人たちも胸をなでおろしました。

 流氷は三月六日、知床半島と根室の納沙布岬を回り、釧路でも肉眼で確認できる「流氷初日」を迎えました。二〇〇三年以来、五年ぶりです。海岸に漂着した氷塊もありましたが、船の水路を妨げるほどではないため、二十一年ぶりの「接岸初日」にはなりませんでした。

 しらしらと氷かがやき千鳥なく釧路の海の冬の月かな―。
歌人・石川啄木は百年前の釧路で夜の流氷をこう詠みました。

 かつては、流氷はさらに南下して、十勝沖の広尾町にも頻繁に接岸し、
襟裳(えりも)岬付近にまで姿を見せていました。

 流氷に魅せられた菊地慶一さん(75)=元教員=は、網走市の高台にある自宅から三十六年間、流氷を観察しています。

 以前、道内各地の七十七人から流氷の思い出を書き寄せてもらったことがあります。一人の女性が、子どものころ、広尾町で流氷を見て過ごしたと証言しました。

 「広尾測候所の記録を調べてみると、一九六〇―七〇年代は、二年に一度は流氷が接岸していたようです。ほんの三十年前までの話です」と菊地さん。

 その広尾測候所は九九年に廃止されました。紋別測候所も昨年十月に廃止・無人化されたため、市が流氷の独自観測をしています。網走、紋別、枝幸に設置されていた北海道大学流氷研究施設の流氷観測レーダーも、国立大学の法人化を機に廃止。流氷の貴重なデータを集めていた機関が失われています。

 流氷勢力は、その年によって増減があるものの、長い期間でみると減り続けています。菊地さんがショックだったのは、一九八九年のこと。網走沖に流氷がチラッと見えただけで、「接岸初日」が来ないまま、春を迎えてしまったのです。網走地方気象台が五九年に接岸の観測を始めて以来、初めてのことでした。

 菊地さんは言います。「確かに次の年からは流氷は接岸しているし、量の多い年もあります。でも、気がついてみたら、いつか流氷が来ない海になるのではないか。八九年は、地球が温暖化のシグナルを送った大事な年でした」

 オホーツク海はなぜ凍るのか

 オホーツク海はなぜ低緯度で凍るのでしょうか。通常、塩分の含まれる海水はマイナス1.7度まで冷えなければ凍りません。しかし、オホーツク海には、全長4350キロ、流域面積205万平方キロを誇る大河、アムール川から大量の真水が流れ込みます。毎年オホーツク海の水位を20センチ以上押し上げるほどの水量で、水深50メートルまでの表層にマイナス1.7度より高い温度で凍る塩分の薄い海水をつくりだし、低い緯度でも結氷するのです。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-03-16/2008031601_03_0.html



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