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(回答先: 【あと1年で裁判員(1)】弁護士反発 模擬裁判の参加者は「で、何がよくなるの?」…浮かび上がる問題点(産経新聞) 投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 6 月 21 日 20:07:06)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080505/trl0805051327000-n1.htm
2008.5.5 13:26
■裁判員制度のスタートで消える従来の「精密司法」
「従来の法廷は記録をやり取りする場だった。その記録を眺め、判決では検察官が主張していない点まで言及する。判決を書くのに2、3カ月かかった」
あるベテラン裁判官は、これまでの刑事裁判をそう述懐する。
担当したある事件は判決までに約5年かかったという。警察、検察は犯行前の被告の行動、犯行後の被告の足取りまでしらみつぶしに調べた。その結果、事件の記録はロッカー数段分にも上った。
審理中はそのことを不思議には思わず、判決文を書く段になって初めて気が付いた。
「必要な部分は限られている。5年の審理のうち、どれだけ必要だったかと考えると、1年分ぐらいだったかな」
「精密司法」−。
起訴事実以外の被告の行動など事件の細部にまでこだわり、精緻(せいち)な立証を尽くす従来の刑事裁判の手法を、法曹関係者はこう呼ぶ。
しかし、それは時には重箱の隅をつつくような反証を招き、いたずらに審理に時間をかけるというマイナス面もあった。
その精密司法は、裁判員制度のスタートとともに過去のものとなる。裁判員となる一般国民の負担を減らすため、迅速な審理に重点が置かれるからだ。
初公判前には証拠を整理して争点を絞り込む公判前整理手続きが行われ、審理は従来より格段にスリム化される。
■公判前整理手続きの重視…初公判前に「判断前提」が創られてしまう危険性も
今年3月、裁判員裁判をにらんで初公判から判決までを3日間の集中審理で行う試みが、実際の強盗致傷事件を対象に東京地裁で開かれた。
まず、公判前整理手続きで検察側の立証事実を5点に絞り込んだ。
従来なら判決までに10回程度の期日が必要だった事件は3日で終了、判決言い渡しはわずか10分程度で済んだ。想定通りのスピード審理だ。
だが、弁護人は集中審理による負担増を表明、検察側も公判前整理手続きでの争点の絞り込みに調整が必要との認識を示し、一定の課題も残した。
「約9割の事件が5日以内に終了すると見込まれる」
最高裁がパンフレットなどでうたう裁判員裁判の迅速化。法曹関係者の中には、その迅速化の流れを懸念する見方がある。
「裁判員に負担をかけないということを重視するあまり、裁判官が公判前整理手続きで自分たちの視点で争点を絞り込み、公判の設計図を作る危険性が考えられる。そうなると、『有罪か、無罪か』の前提が、初公判前にできてしまうことになる」
そう指摘するのは、甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)だ。
日本弁護士連合会(日弁連)裁判員制度実施本部委員を務める岡慎一弁護士も「裁判所は短い時間で公判を終えると強調しているが、納得するまで話し合う必要のある評議もある。裁判員の負担軽減を重視しすぎて、裁判官が評議をリードして裁判所の判断に従わせる恐れもある」と指摘する。
■ジレンマ…「スピードと精密性は両立しない」
公判がスピード化することで、丁寧な証拠調べができなくなるのではないか−との懸念もある。
元最高検検事で白鴎大法科大学院の土本武司院長(刑事法)は「迅速化しようとすると、ある程度精密性は犠牲になる。迅速性と精密性はどうしても衝突する傾向がある」と、双方の両立を課題として挙げる。
これに対し、ある検察幹部は「精密に捜査を行って慎重に起訴し、精密に審理して判決ということは裁判員裁判になっても変わらない」と強調する。
迅速化と精密性。双方の要請を両立できるのか。冒頭の裁判官はこう見る。
「公判前整理手続きで何が必要かをきちんと議論することで可能だ。検察官、弁護士の当事者の力量が問われることになるだろう」
=(3)へ続く