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http://www.news.janjan.jp/area/0804/0804104621/1.php
なぜ憲法違反なのか−「自衛隊イラク派兵差止訴訟の会」代表・池住義憲氏に聞く
上野数馬2008/04/12
米軍によるイラク侵攻があった03年から、まる5年となる。この間「イラクと周辺地域への自衛隊派兵差止など」を求めて起こされた訴訟は、全国の11都道府県で12件にも上る。それらのうち、名古屋高裁で控訴審が行われている「自衛隊イラク派兵差止訴訟の会」の判決が4月17日に控えている。同会代表の池住義憲氏に話を聞いた。
2003年にアメリカ軍がイラクへ侵攻し、同年4月9日にサダム・フセイン政権が崩壊してからまる5年となる。この間「イラクと周辺地域への自衛隊派兵差止など」を求めて起こされた訴訟は、全国の11都道府県で12件にも上る。愛知でも市民グループが「自衛隊イラク派兵差止訴訟」を起こしてはや4年が経った。
04年2月23日に全国で2番目に提訴した「自衛隊イラク派兵差止訴訟の会:池住義憲代表(原告総数3268名)」は06年4月14日に名古屋地裁で敗訴の判決を受けた。その後1114名の原告団で名古屋高裁に控訴した。控訴審では口頭弁論を7回実施し、証人尋問を行うなど実質審理に踏み込んだ。今年1月31日に控訴審が結審し、2月末に同差止訴訟弁護団が最終準備書面を提出したのを受け、4月17日に判決が言い渡される。
「一審では違憲判断にも踏み込まず、敗訴したが、7次訴訟判決で憲法9条に違反する国の行為によって生活の平穏が害された場合という緩やかな要件を示し、広く憲法9条違反の訴えが民事裁判の土俵に載ることを認めた点を評価したい。 また憲法9条1項、2項の解釈にも触れうる重大な判決が予想される」と記者にメール通信を寄せた、提訴以来一貫して憲法9条を守ろうと声を上げ続けた池住義憲・同会代表にインタビューを試みた。
「自衛隊イラク派兵差止訴訟の会」代表・池住義憲氏(筆者撮影)
記者: イラクは勿論、最近ではアフガニスタンやパキスタンなど近隣諸国でも自爆テロなどが相次ぎ、その犠牲者の数には驚くものの、またかという程度で庶民には過去の話のようですが、まず基礎知識としてイラク戦争とその後の政治状況を簡単に教えてください。
池住氏: アメリカ・イギリスはフセイン政権が大量破壊兵器を保有しているなどとして03年3月20日に武力攻撃を開始し、同年5月1日に主要な戦闘の終了を宣言しました。以来、米国復興人道支援室(ORHA)、続いて連合軍暫定当局(CPA)が統治を引き継ぎ、04年6月に「イラク暫定政府」に主権が移譲されました。このとき発足した多国籍軍に自衛隊も参加することになったのです。
そして同年8月に暫定政府を監督する「諮問評議会」評議員を選出し、05年1月に「イラク暫定国民議会」議員選挙を実施し4月に移行政府が発足しました。8月にイラク国民議会で新憲法草案を採択し10月に憲法草案の国民投票を実施して、翌06年5月にイラク正式政府が発足しました。
建前上イラクは主権を回復し、憲法を制定するなどイラク人の国に戻りつつありますが、米軍主導の多国籍軍が全土で掃討作戦を実施する現状は変わっていません。イラク戦争の根拠とされたフセイン政権下の大量破壊兵器保有が虚偽だったことも確認されました。
記者: おおよその経緯はわかりました。それで自衛隊イラク派兵差止訴訟に至った主な論点をお教え下さい。難しいでしょうがなるべく簡潔にお願いします。
池住氏: まず憲法違反に通じる問題です。日本国憲法には武力によらない平和を徹底して追求する国民の強い願いが結集されて生まれた9条という項目があります。平和主義、戦争放棄を基調とする日本国憲法に基づき、政府も自衛隊の海外派兵、集団的自衛権の行使は憲法に反すると述べています。アメリカによるイラク侵略は明らかに「戦争」で、わが国は、イラクの戦場で戦うアメリカ軍に兵員を輸送し兵器・燃料等を補給し、アメリカと一体になって戦争を遂行している自衛隊を送りこんでいるのです。
記者: もともと「自衛隊は軍隊ではない」と政府も国会も司法もぜんぶ、わけのわからない理屈を認めて、口先だけでごまかしてきたツケがでてきたようにみえますね。憲法違反かどうかの論議もそうですが。庶民の感覚では自衛隊は完全に軍隊としかみえませんが。
池住氏: イラク特措法が日本国憲法の平和主義、憲法9条、憲法41条等に違反した法令だというのが次の大きな論点です。自衛隊のイラク派兵が「平和のうちに生存する権利を有することを確認」し「戦争放棄」を謳う憲法に明らかに違反し、そのことにより控訴人らがそれぞれ著しい精神的苦痛を受けているとして本訴訟を提起したのです。
イラク特措法は日本国憲法の「国際紛争解決手段のための軍事的な方策にはいささかでも関与しない」という平和主義に違反し、憲法9条1項、2項にも違反します。そもそも自衛隊は憲法が保持を禁止する「戦力」に該当し違憲であり、どこで何をするかを問題にする以前に、自衛隊の存在自体が憲法に反しているのです。
記者: とすると憲法論議に踏み込まざるをえなくなり、自衛隊に係る裁判はどこでも実質審理を避けたり、判断を回避したりして、いつもうやむやにされてきたんでしたね。
池住氏: そうですね。それとイラク派兵行為の違憲性もあります。国は「自然権として持つ自衛権を行使するための必要最小限度の実力は憲法が禁止する戦力にあたらない」と解釈しています。しかし自衛以外の目的でイラクに派遣される自衛隊が武器を携行し、イラク全域を軍事占領した米英の統一指揮下に入ること自体が武力行使の一環とみなされるため、憲法9条1項の禁止する「国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇又は武力の行使」に該当し、憲法違反です。
また日本政府が特定地域を非戦闘地域と認定しても、国際法上はすべて占領地域であり、相手を捕らえても自衛隊員が捕らえられても、捕虜としての人道問題が起きます。憲法で「中立義務を保持する」としている以上、他国の戦争に対する中立義務に違反し、他国との交戦関係を生じうる行為となり、交戦権を否認した憲法9条2項からも認められません。
記者: 聞けば聞くほど、政府は屁理屈を並べて、むりやり派兵したように思えますね。
池住氏: イラク特措法は制定当初から違憲の法令です。国会の同意・承認を問題とせず、首相と閣議だけで決定され進められています。手続き的にも重大な憲法上の疑義があります。イラクへの自衛隊派遣を機に、憲法に違反する法制度を広範に認めることになってしまいました。あとイラク全土で約9万人という膨大な数の犠牲者の問題があります…。
記者: そう、彼らが最大の被害者であり当事者で、その代弁者という面もありますね。
池住氏: 今回の高裁には、イラクの惨状を明確に認識していただき「違憲立法審査権」の意義を真摯に受けとめ、わが国が憲法を踏みにじって戦争をする国にならないよう、良心にのっとった勇気ある判断をされることを望みつつ、判決を待っているところです。
記者: 17日午後1時半からでしたね。どうも忙しいところありがとうございました。
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関連リンク:
・自衛隊イラク派兵差止訴訟の会