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http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/consti/news/200706/CK2007062202026160.html
【試される憲法】
経済評論家内橋克人さん 軍需経済化9条が歯止め
2007年6月22日
「米国の真意を知らず、追随ばかり唱える改憲論者が勢いを増している」と話す内橋さん=神奈川県内で
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私は二度にわたる神戸大空襲で、降り注ぐ火塊の下を逃げ惑い、身近な人を多く失いました。戦争を知る者が少数派になった今、「戦争を知らない軍国少年」らが政治を牛耳り、改憲を唱えています。
改憲論者は世界市場化を進める米国の真意を見抜けず、そもそも経済に明るくない。絶えず軍拡に頼ろうとしてきた日本経済の過去の構造も知らないようです。日本経済は戦前から供給過剰・需要不足の構造をひきずり、国民の購買力が追いつかない。国内の消費力は弱いまま。絶えざる需給ギャップ経済です。
昭和恐慌は軍事費を大幅に増やし、見せかけの好況と失業者の徴兵によって切り抜けた。しかし、肥大化した軍部や量産した兵器はどうなったか。待っていたのが十五年戦争でした。戦後は需給ギャップを外需と公共事業で埋めてきたが、政財界は深刻な不況のたびに軍需産業に頼り、「第三の市場」によって需給の安定化を図ろうとする誘惑にかられてきました。
米軍の発注で潤った朝鮮戦争での特需が終わったころ、次に第二次石油危機と円高ショックが同時に来た一九七〇年代後半、そしてバブル崩壊後の九〇年代不況下−の三回です。しかし、憲法九条が歯止めとなって、彼らは日本経済の軍需経済化をおおっぴらには進めることができなかった。
中国やアジア諸国も九条を信頼しているからこそ、日本企業の工場進出を受け入れた。改憲論者は九条の果たした役割の大きさを全く理解していない。
「(憲法改正への)国民投票をやってみればいい」という一部の護憲派の意見も、「文民統制だから大丈夫」という改憲派の考えも甘すぎる。安倍晋三政権は米国主導の現実が変わればまた変わる、まさに稚拙な「刹那(せつな)主義」です。
「憲法押しつけ論」を説く改憲論者は、今の改憲論こそ米国の「押しつけ」であることを、どうして見抜けないのか。米国にはびこる民間の「戦争代行屋」の一つとして、同様の役割を日本に要求している。米国の軍事戦略の一環に組み込まれて何が「自立国家」ですか。
日本人の中に一人として、他の「身代わり」なくして今を生きている人などいません。戦争の悲惨な記憶を、単なる記録におとしめてしまうことのないよう、腹をくくるべきときです。
うちはし・かつと 1932年兵庫生まれ。新聞記者を経て経済評論家に。著書に「匠(たくみ)の時代」「浪費なき成長」「経済学は誰のためにあるのか」「共生の大地」など多数。74歳。