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(回答先: 最低投票率は違憲ではない 投稿者 天木ファン 日時 2007 年 5 月 11 日 23:17:54)
http://homepage.mac.com/volksabstimmung/id106/id265.html
『朝日新聞』私の視点 2007年5月10日
弁護士 岩月浩二
◆国民投票法案 広報協議会の中立性困難
憲法改正の手続きを定める国民投票法案の審議が急ピッチで進められている。憲法は、その改正を直接、国民の意思にゆだねる直接民主制を採用している。その趣旨を十分生かすにはどのような制度設計が望ましいのか、という点について、現法案は配慮がきわめて不十分だ。
見落とされがちになっているのは、憲法改正案の広報を担当する「国民投票広報協議会」の存在だ。法案によると、広報協議会は、各会派の議席比率によって選任される衆参の議員10人ずつで構成される。憲法改正の発議自体が、各院の3分の2以上の多数をもってなされるので、メンバーは必然的に、憲法改正について賛成の議員が圧倒的多数を占めることになる。
憲法改正案や「参考となるべき事項に関する分かりやすい説明」などを記載した公報の原稿を作るほか、テレビや新聞などのメディアを活用し、広報のための放送をしたり広告を出したりする。広報のあり方は、この協議会にゆだねられるので、国民の意思形成に与える影響は極めて大きい。
問題は、公正な広報が期待できるかどうかだ。「客観的かつ中立でなければならない」と法案には規定されているが、改憲賛成派が圧倒的多数を占める広報協議会に、中立性を求めることは困難だ。
憲法改正手続きを定める憲法96条は、国会の圧倒的多数が改正に賛成であっても、国民投票における過半数の意思を優先するとしている。少なくとも、広報協議会のメンバーは、改正に賛成の議員と反対の議員同数をもって構成するのが、憲法の最低限の要請だ。
さらに突き詰めれば、広報協議会を国会に置くこと自体、適切かどうかという問題になろう。国会は、憲法改正を発議した当事者であり、中立的な立場ではないからだ。憲法学の定説は、憲法96条で定める「国会が発議し、国民に提案し」との文言について、「発議」の他に「提案」という行為があるわけではなく、「発議」自体が国民に対する「提案」を意味する、と解している。憲法改正に関する国会の役割は、「発議」をもって終わるとしているのだ。
これは、憲法改正を民意にゆだねるという憲法の趣旨を忠実に生かそうとする解釈に他ならない。憲法学の定説は、発議機関の国会が国民投票に干渉することを極力さけようとしていると考えることができる。法案のような広報のあり方では、将来的に、国民投票法自体が憲法に違反するとして、改正の無効が争われる可能性すら残している。
確かに、国会以外に広報を担当できる機関があるのかという問題は残る。筆者は、憲法に関する蓄積の豊富な国立国会図書館が広報を担当し、学術的な権威が確立している日本学士院がチェックするなどの方法を構想している。もちろん、これが実効的に機能するかどうかは検討を要する。
わが国では、国政レベルでの直接民主制の蓄積はほとんどない。将来に禍根を残さないためにも、国民投票法を政争の具にするのではなく、抜本的で冷静かつ慎重な検討が不可欠だ。
2007/05/10 22:50